日曜は最近は息子が家庭サービスだと、娘たちを連れて買い物と外食だから、わたしは邪魔をしないように、一人フリーになる。一週間に一日ぐらい、自由時間があればいい。それは助かる。孫の相手にも休業日は必要だ。

 それで、どこに行こうかと、いまどきは湘南あちこちの桜だ梅だとは、名所は行き尽くしたので、同じところには行きたくない。どこかないかと、ネットで調べる。そうしたら、藤沢の南に二つの公園がある。奥田公園と新林公園というのがあり、梅が咲いていると写真も出ていた。近場ならいいだろう。ついでに何か安い食品があれば買い物散歩もいいと、さっそく出かける。出がけに、朝飯時で、孫が腹減ったというので小さなおにぎり二個を作ったが、食べないで残しやがった。頭にきて、それもラップにくるんで昼飯にしようと、りんご酢ドリンクも作り、昨日作った栗蒸し羊羹とおやつまで持って出てくる。公園でピクニック気分もいい。

 

 藤沢は何度も歩いているが、そこは行ったことがない。平塚から電車で三つ目だから、すぐなのだが、買い物に行くぐらいか。本も持ってゆく。タブレットPCもと、どこかに行くときのスタイルはいつも同じだ。

 まずは藤沢駅近くのマックに寄る。日曜で混んでいるが、そこで短編小説を仕上げる。青森の同人誌に出す小説を忘れていた。締め切りが2月末だと編集の友人からメールが来ていた。いつもは年末であったのに、ずれたから忘れた。一日でプロットを考えて、二日で書いた。その推敲をマックでしている。

 

 その裏に法華クラブのホテルがある。マックでも7年前に二人で朝飯を食べたし、そこのホテルに海外旅行の前泊で滞在し、江の島で泳いだり、鎌倉散策して、長い旅行に羽田から飛んだ。あの夏を思い出した。

 奥田公園は小さい。桜が一本だけ満開で、それよりない。がっかりとして、境川を渡ると、すぐが新林公園になっている。草原は梅林になっていて、そこにシートを敷いて、何組もの家族が昼を食べている。日曜で薄曇りだが、そのほうが、梅が映える。

 園内には江戸時代後期の屋敷の門が移築されて保存されている。その後ろには古民家。それも江戸後期のものとある。中には入れるが。無人で大丈夫なのか。茅葺屋根に、土間にはへっついと石臼、囲炉裏の自在鉤がやたらと大きい。その裏の木のベンチとテーブルで昼飯とする。たまにハイカーが通るくらいでわたし一人。いいなあ、ようやく自由を感じて、森林の匂いにひたる。

 そこから小山に登るのだが、一周して1時間というから、たいしたことはない。里山体験をしているようなものだ。トレイルランの青年が、犬を散歩に連れて、山道を走っている。すごい、ご苦労様と挨拶。三叉路があり、どっちの道を進んだらいいのかと、まるでゲームのような山道。向こうから夫婦が降りてくる。迷っていると、「どちらの道も一緒になりますよ」と教えてくれる。そうか、合流するのかと、右の道を歩いてみる。アップダウンもきついが、背筋を伸ばして体幹をまっすぐにして歩けば、どんな山道もきつくは感じられない。太極拳で習う姿勢だ。

 林の間からマンションが見えるから幻滅するが、それがなかったら、奥深い山のようだ。猪落としの穴があり、それが解説されていた。イノシシも出るのか。降りたところが北公園とある。一周ではなく、半周した。元に戻るよりは別の道と、住宅街に出ていた。そこが片瀬山という。片瀬海岸とあるから、鎌倉は隣だ。片瀬は高台でそこに住宅が張り付いている。坂道を降りたところにスーパー発見。二つあって、地元の小さなスーパーでは豚肉が安いと買う。あちこち7店もスーパーがあるので、お買い得だけ買って歩く。買い物散歩は犬も歩けば棒にあたる。それと写真を撮って歩き、吟行のようにも詩も考えて、思いついた風景からの言葉をスマホにメモる。

 川を渡ればそこは南鵠沼。かつては鵠沼というと別荘地で、文化人たちが住んでいた。いまはがらりと変わって、昔の面影はない。そのまま川沿いに左に歩けば江の島も近い。江ノ電の駅もある。それは前にも歩いたので、藤沢駅の方へと歩く。大正時代の旧近藤邸が保存されているが、誰だろうと、ネットで調べたら、帝国ホテルを設計したライトに師事した建築設計家という。その建物が貴重なので、取り壊さずに保存されているのだとか。

 その前にあった図書館は閉館していた。せっかく図書館で一休みと思ったのだが、足はそろそろ歩き疲れてふらふらする。

 それでもまたヨーカドーやドンキー、業務スーパーとどこにでもあるが、何か食品で特価がないかと覗いて買いあさる。

 そうして、夕方に平塚に戻ってきた。自転車ばかりでもいけない。たまには歩かないと。自然と親しむ。歩いたことのない街でも山でも、そこで何かと出会う。旅行ができないので、せめて、近場で見聞を広めよう。