息子は子煩悩だ。わたしはそうでもなかった。あまり世話はやかなかったが、いまの同居の息子を見ていたら、教育パパで子煩悩、それで娘たちからうるさいとまで言われている。娘息子のことで悩みも多い。一人、しつけ教育のことで悩んでいるから、おまえは細かいところまでいちいち言うから嫌われる、放っておいたらいいのだと、わたしは放任主義であったから、そう言うと、「親父はそうだった、ネグレクトまで行かないが、勉強しろとは言わなかった」と、息子は子供のときを思い出して言う。正反対の性格で、どうして親子でこうも違うのか。

 わたしはもう子育てはとっくに卒業したが、五人の子を成人して結婚まで面倒はみてきた。連れ子もいれて五人を育てると、そんな子煩悩ではいられない。仕事も家事も忙しく、それどころではない。それで自然と本人任せで、子供らは親が口うるさくないので楽であったろう。

 いま、息子は娘の進学まで口をはさみ、自分ができなかったことを娘に託すように、こっちに引っ越してきてからも、塾を選んで、あちこちに体験入学までさせて、娘よりも熱心だった。青森にいたときも塾には通わせていたようだが、子供よりも親が塾の選考に頭を悩ませているのを見たら、わたしのときとはえらく違う。わたしは子供たちが塾に行きたいと言えば、どうぞと言うぐらいで、金だけは出した。友達が行っているからと、そこに一人で通わせた。いま、娘は夜に自転車で塾通いをしているが、雨のときや面談のときは、車で送り迎えしている。中二なので、まだ今年一年はある。春から三年生で高校受験が本格的になる。その志望校も、娘よりパパが熱心なのだ。まるで自分が受験するかのようだ。わたしなんか、三者面談にもそれぞれ行ったが、担任の先生に、お父さんはどこを希望していますかと聴かれて、そんなのは、息子自身が決めることで、わたしは関知しないと話した。志望校選定の書類にも親の希望を書く欄があり、そんなことまでいちいち書かせるのかと、現代は過保護なんだなと思うのだ。

 

 私立は授業料が高いから、できればパパとしては県立にしてもらいたい。それも神奈川で一、二のところらしい。学力はあるので、親としてはますます期待して後押しするのだ。わたしが親であったときは、娘息子たち五人はそんなに学力がなく、真ん中から下で、息子によっては入れるところがあるのかと心配したくらい、ビリけつであった。そんなに受験競争関係なく、下であれば、逆に親は発奮するどころか、どこか入れるところがあったら、頼みたいと思うだけだった。それで、高校の先生をしているのがわたしの同級生や仲間にいっぱいいて、私立高校にもいたので、どうなのかと聴いたりしていた。東京なんかは私立は頭のいい、親が裕福な家の子より入れないが、地方では逆で、県立高校の滑り止めに私立を選ぶほど、私立のほうが下なのだ。それで、なんとか入れないかと友達の先生に聴いたら、誰でも入れるけど、勉強する気がなかったら、入れても無駄だと言われた。勉強嫌いの子供なら、ただ、高校卒業の資格だけで、遊びに入るようなものだと言われた。落ちこぼれであったので、そうかもしれないと、親としてもうすっかりと諦めている。それはそれで楽であった。家庭教師をつけて、塾に通わせても、勉強嫌いなら仕方がない。それでもなんとか卒業させていただき、というのも、長男なのだが、出席日数が足りなくて、担任にわたしが呼ばれて、なんとかしますと、先生は、なんとほかの先生の教官室にしのびこんで、出席簿を改ざんするという離れ業までしてくれた。それで下駄を履かせてお情けで卒業させていただいた。親としても恥ずかしい。それで東京の専門学校にも入れたが、二日より行っていないと、学校から連絡があり、一年の前期で退学となる。そういう息子でも、ちゃんと社会に出てからは会社を起こして、社長になった。それだから、わたしは親がどうのと尻をたたくこともなく、子供は子供なりに、なんとかなってゆくものと思っている。

 それがいまの息子が親になると、そうではなく、いまどきの親なのかなと思う。いらぬ気苦労ばかりしている。

 

 わたしは孫煩悩もしないといけないのかと、最近は親より孫の面倒をみているから、孫の心配もする。それでも孫までじじは責任はないから、遊んでやり、クイズのように算数を教え、英語も遊びの中で教えたり、嘘歌を教え、でたらめの昔話を聞かせ、絵本を読んでやるということはする。しつけもそうだが、四歳児は頭がいい。ちょっと面白い。それを観察していると、将来が楽しみだなと、我が家唯一の男の子の孫で、ペットのように可愛がっている。

 「おれは伝説の赤ちゃんなんだぞ、いまに家族を幸せにし、大金持ちにさせるからな」と、なにかのアニメの影響か、そんなことを言ったりする。「そうか、それはそれは楽しみにしているぞ」と、四歳児の頭を撫でる。

 

 保育園に夕方、ママチャリで迎えに行って、大声で二人で歌をうたって帰ってくる。じじで迎えにくるのは少ない。ほとんどが母親でたまに父親も迎えにくるが、みんな疲れている。子育ても大変だろうなと、挨拶し、たまには若いお母さんたちと会話もしている。保育園の先生ともいろんな話。遊んで傷つけたと先生たちが謝るが、いいですよ、男の子はやんちゃなほうがとやんわりと言ってやる。先生たちも気を遣って大変だ。みんなが神経質で過保護では疲れてしまうだろうに。

 それもこれも後何年もない。四年したら、娘たちは大学に行って、四歳児も小学生で、手がかからなくなる。それまでの子育ての辛抱だ。頑張れ、パパ。