正月とはいつまでなのか。孫から聴かれた。四歳児の質問は鋭い。1月いっぱいは正月なのか。それとも松の内という7日までか。鏡開きの11日までか。きっと日本人みんなに聞いても判らない。チコちゃんに聴かないと。

 7日から三連休だという。何の祭日なのだ? と、それが成人の日であることも忘れる。成人の日は昔は1月15日でなかったか。いまは日曜にくっつけて連休にするから固定されていない。ややこしい。その7日にどこかへ行こうか病で、息子から近場でいいところと言うので、隣の隣の二宮町の駅裏の吾妻山がもう早咲きの菜の花が満開と新聞に出ていたことを話した。わたしは一昨年の正月に、やはり菜の花を見に、裏山に登った。信じられないのが、青森では菜の花は五月なのだ。下北半島の横浜町の菜の花畠が有名で、一面の菜の花だ。海も見えるが、かつて詩人の山村暮鳥が宣教師で青森にいたときに、きっとその菜の花を見たのか。いちめんのなのはないちめんのなのはなという代表される詩が思い出される。

 まさかと息子も思う。これから二月の厳冬の真冬というのに、春だなんてと。ともかく行ってみようと、日曜日になるが、車ですぐの二宮駅前の駐車場に止めて、四歳児の孫と三人歩いて裏山に登る。来るときに途中の大磯のスーパーで弁当とドリンクとおやつも買った。すごい人でいっぱいだ。ぞろぞろと老若男女が登っている。山と言ってもたかだか140メートルくらいだから、丘のようなもので、石段をずっと歩く。チビも歩いた。上に遊園地があるぞと言うと走った。天気はよくぽかぽかと温かい。防寒着は暑いくらいだ。息子はパーカーを着ていたが、それでよかった。汗もかく。斜面に水仙がいっぱい咲いている。小さな水仙の花もあり、初めて見たが、可愛い。

 上の管理棟のあるところにちょっとした子供の遊び場がある。そこで孫は滑り台とかジャングルジムのような遊具で飽きないで遊んで、上に行って弁当を食べようと言っても、遊びたいと離れない。上はもっと面白いと連れてゆく。少し上がったところが吾妻山の山頂で原っぱになっている。すごい人がいた。みんなシートを敷いたり、ベンチに弁当を広げている。菜の花は確かに眩しいくらいの黄色で光っている。その先に海。大島と伊豆七島の利島が見える。小田原市街と真鶴岬、伊豆の天城山や箱根の山も見えるが、あいにく富士山は雲に隠れている。暑いので防寒着は脱いだ。さっそく弁当を広げていただく。スマホで動画を撮って、LINEで従妹たちにも送る。みんなから、それは今なのかという質問。青森からは、早く春になればいいと返信。ここ吾妻山の菜の花が、朧月夜の歌で二宮駅のホームに流れている。「♪菜の花畠に入日薄れー」と、小学校の唱歌であったが、中島美嘉が前に歌ってヒットした。ネットで見たら本当は歌詞を書いたのが長野県の野沢温泉付近らしいが、どうしてか、その歌を二宮で拝借していた。

 孫は外人の男の子と友達になり、二人で遊んでいた。すぐに仲良しになる性格はいい。六歳くらいの男の子だが、すっかりと英語でお母さんとおじいちゃんと来ていた。転がって遊んで、セーターが枯草まみれ。お茶と戻ってきて、「草原で転がったんだよ」と報告するから、「見たら分かるよ」と言ったら、隣に座っていたグループのおばさんたちが笑う。

 帰りは長い滑り台があり、それをチビとパパが管理棟のあるところまで滑ってくる。犬の散歩と連れてきていたり、二歳くらいの子も歩いているのが可愛らしい。老人たちは杖をついて、途中の椅子に座って休んでいる。遊び疲れて、チビはダッコオンブと座り込むが、無視して下りてゆくと、下まで歩かせた。下りは早い。

 帰りに大磯のマックに寄って、アイスを食べてゆく。孫とパパは吾妻山が気に入って、また行きたいと言う。今度は三月の山桜の時期だな。山菜もあるかもしれない。この日は七草粥の日だった。山にはきっと春の七草はあったのだろうが、どれがどれか判らない。気分はすっかりと初春だった。