仕事を辞めてからは、また去年のように暇になる。暇つぶしが一番忙しい仕事であるとマーフィだったか法則で言っていた? 確かに、与えられている時間では、それをこなすに忙しいが、ぽっかりと空いた時間は埋めるのに考えないといけない。自堕落になったらお終いだ。老後は自己管理とは言うが、怠惰な生活は健康も害する。一昨日は明け方5時まで眠れず、睡眠導入剤も効かないで、悶々としていたが、それでいつしか寝たのだが、起きたら10時だった。そんな寝たきりの生活はよくない。一日、どこにも出ないで、部屋で本を読むでもなく、寝不足解消のために、昼寝をしようとするが眠れないで、テレビで再放送の番組を見ていたりする。余計なことをまたする。そうだ、オレンジの皮でマーマレードを作ろうと、起きて台所で8個で150円で買ったオレンジが後4個あるので、皮を剥いて刻み、ことことと煮る。ちょうどジャムが切れたところだ。これからは、年金だけなら、いままでと同じく金は湯水のようには使えない。食費は月に1万円としよう。いままではその三倍は使っていた。おやつも手作りだ。スーパーには三日に一度買い物に行って、千円より使わない。

で、次はと、あんこが少し残っている。小麦と片栗粉もあるから、それで蒸し羊羹をまた作ろう。それで止めておけばいいものを、そうだ、先日八百屋で買ったカットしたさつまいもが五本で百円を思い出す。カットしているのは、腐ったところを取り除いているから、早く食べないといけない。それは蒸かしてから、潰して、シナモンと蜂蜜とバターなど入れてごねごね。卵がないから、焼かないで、そのままいただく。スイートポテトみたいで美味しい。残ったさつまいもが後で腐った。それを取り除いてごま油とゴマ、黒糖で大学ポテトを作る。と、急に黒パンが食べたくなる。ネットで健康についての動画を見ていたら、黒パンがいいのだそうだ。その作り方を今度はクックパッドで見たら、いっぱい出てきた。さっそく、出かけよう。

図書館には二日おきに行くのだが、本はららぽーとで読む。部屋ではなかなか捗らない。ららぽーとでは買い物もある。ヨーカドーでライ麦の全粒粉を探したが、ない。他の物産の食品店で見てもない。輸入食品専門のカルディに行ったらあった。残り一袋で、400gで300円少し。それとドライイーストも切れたので、買う。黒パンは先日見たラーゲリの映画に出てきたが、親父もシベリア抑留されて毎日食べていた。われわれが東欧を旅したときは、黒パンばかりスーパーで買ってホテルで食べていた。気に入っていた。日本のパン屋では高く売っている。ネットでも売っているが、1斤で600円くらいもする。それなら自分で作ろうと材料を買った。酢も入れるらしい。砂糖は黒糖を使おう。それと摺り黒ゴマも入れるとあった。そのまま焼いても黒くはならない。真っ黒なパンはどうしてああいう色になるのか。

 

 と、これからは、東京にもおいそれと出られなくなる。定期券が切れたら交通費がかかる。それでいまのうちだと、月末に図書館は休みだから、本を持って、トツカーナに行く。イタリアはトスカーナ地方だが、横浜の戸塚駅のショッピングタウンがトツカーナで、前にこのブログでも紹介した。部屋では読書が進まないので、通勤がなくなると、電車が一番読めるからいまのうちなのだ。三上という読書に相応しい場所があるが、わたしの場合は三座で、電車の座席、便座ではなく、ファーストフード店の座席、ショッピングモールのソファなのだ。

 戸塚は面白い地形で、川と谷と起伏のある入り組んだところに街が発展する。複雑で平坦ではないから、何か面白い。その斜面にショッピングセンターが階段状にあったり、坂道に商店街があったりする。川の土手を歩けば、何か懐かしい雰囲気がある。ふるさとの堤川を思い出した。土手を歩いて高校から帰ったように歩いてみる。

 戸塚駅から歩いてゆけるところに図書館があった。そこで新聞なんか読んでくるが、混んでいる。横丁を歩いたら、商店街を発見する。前に何度も来ているが、そこは通らなかった。激安スーパーでは安いよ安いよのスピーカーから流れる声に誘われて、トマト5個で120円を買う。久しぶりのトマトさんとの対面だ。一日千円だぞと自分に言い聞かせる。安いからと調子づいて買うな。りんごのサンフジの大きなのが78円。別の駅の八百屋も覗く。あちこち覗いては少しずつ買う。主婦たちも狂ったように買い求めていた。明日からまた値上げするのだ。月末はそんな風景は戦争状態だ。

 マックに入る。お金は使わないでポイントでコーヒーを飲む。百円コーヒーも120円になり、みんな値上げした。平日の午後だが、若い人たちで混んでいる。学校はないのか。まだ春休みではないだろう。

 そこで読んだのが、松本清張の『一九五二年日航機「撃墜」事件』。久々の清張さんだが、やはりわくわくさせる。もくせい号の伊豆大島三原山墜落が、朝鮮戦争後の訓練で米軍が誤射したというのか。それと犠牲者で唯一の女性のミステリアスな宝石デザイナーの搭乗と絡み、戦後の暗黒にペンというメスを入れる。吉田知子『お供え』も短編集だが、いつもながら、奇妙な味付けでぞっとさせる。日本的な怨念がある。吉行淳之介『悩ましき土地』この短編集もまた怖いものがある。『未知の人』という全然知らない二人から手紙をもらう。いまならメールだろうが、ありうる話で、ストーカー的狂気が走る。

 場所を移動して、トツカーナの上のガーデンにあるベンチで本の続き。やはり本はいい。仕事という滅私奉公で大事な老後の少ない時間を費やすことはない。好きに生きるに越したことはない。金はいるが、旅行を減らしたらいいことだ。遊ぶ金欲しさに働く。それもいいが、あるものでそれなりに楽しめばいい。考え方をまた元に戻すことにした。

 さてと、明日は何をしようか。時間はいくらでもある。