政治資金規正法の改正案が今日の参議院本会議で自民・公明両党の賛成多数で可決・成立しました。欠陥法案と指摘されながら与党が最後は数の力で押し切った形です。自公にとっては一件落着です。あとは国民の批判の風化を待つということでしょうか。ボールはいわば国民に投げ返されたのです。

 

 この法案をめぐる自民党と日本維新の会の「攻防」を見ていると「猿芝居」という言葉が浮かんできます。でも仮にも国民が選んだ国会議員のやり取りなので「永田町芝居」と名付けることにします。

 

 主役格の自民党は政治資金パーティーの裏金問題をきっかけに、過去の不明朗な政治資金の流れが一部明るみに出て国民の批判にさらされ、このままでは権力の座から落ちかねない事態に陥りました。

 

 そこで「反省の姿勢」(これは猿でもできると言われます)を示して、国民の批判をかわそうとしたようです。

 

 ところがそのままでは国民が納得しないことがその後の各種選挙で鮮明になり、政治資金規正法の改正に取り組まざるを得なくなりました。しかし政治資金の流れを透明化し、企業献金や政治資金パーティーを規制することは、自民党にとっては受け入れがたいことだったのです。「政治には金がかかる」というのが言い分です。「金の切れ目が票の切れ目」のようです。

 

 その結果出来上がったのが、抜け穴がいくつも開いているうえ「検討使」と揶揄される岸田首相らしく「検討」だらけの先送り法案でした。しかも検討したからと言って中身が実現する保証は少しもないという代物です。

 

 政権与党の自公だけで成立させては批判が強まると首相は考えたのでしょう。維新に働きかけて首相と維新の馬場代表のトップ会談という「見せ場」をつくり、維新は賛成へと舵を切りました。「下駄の雪」と言われる公明党にとっては維新の参入で賛成せざるを得なくなったようです。両党とも首相にうまくしてやられた感じです。

 

 何が維新を賛成させたのか。いろいろ見方はあるでしょう。私は一つには窮地に陥っている自民党に恩を売って、場合によっては連立内閣入りしようと考えたのではないかと思います。権力側に入れるのは魅力だし、もともと考え方があまり違わない両党ですから違和感はありません。不人気の大阪万博で赤字が出た場合に国の助けを受けやすくもなります。「健全野党」を気取ってアピールしたかったのかもしれません。

 

 ところが維新のこの動きには国民の多くから反発が出ました。維新は国民の考えを甘く見たというか、読み違えたようです。

 

 そこで維新は「旧交通費」の見直しで首相が合意に反したとして、参院では法案に反対に転じました。旧交通費の見直しを今国会中に行うとの合意だったのに、その約束を自民党が反故にしたというのが維新側の主張です。「時期は明示していなかった」「今国会での実現は難しいとの見通しを示していた」というのが自民党の言い分です。維新は国民の考え方とともに自民党を甘く見たのかもしれません。政治資金の問題でもわかるように国民を平気でだます自民党です。維新は功を焦って見誤ったともいえます。

 

 文書で確認したことではないので結局水掛け論になってしまいますが、維新は首相の問責決議案を出すと息巻いています。けれども法案の中身は変わっていないのです。

 

 それに旧交通費問題は今回の政治資金規正法問題の「本筋」ではありません。もちろん現行でいいということではありませんが、もともと自民党はこの手の約束事には「検討」だけで実現させないという「前科」があります。国民民主党はガソリン税のトリガー条項凍結解除について首相が「与党と国民民主党の3党の政策責任者で議論、検討を進めたい」と前向きの発言をしたことを受けて予算案に2回賛成しました。けれど、結局検討で終わり、利用されただけでした。

 

 維新は参院に提出する見通しの岸田首相に対する問責決議案の審議に他の野党が協力しなかった場合、「抵抗するのであれば、抵抗するだけの対応をさせてもらう。恥かくようにさせていただきます」(遠藤敬国対委員長)と息巻いています。今更の間で、これなどはやくざのセリフぽっくって芝居じみています。 他の野党というのはどの党を念頭に置いているのか分かりませんし「野党が抵抗する」の意味も分かりません。自分のことを棚に上げて当たり散らしているとしか思えません。

 

 立憲民主党は内閣不信任決議案を提出する方針です。法案に衆議院で賛成した維新は、内閣不信任案にどんな態度をとるのでしょう。このお芝居の幕引きに注目です。賛成しても反対しても無様です。