こんにちわ。北見尚之です。

日本の公共交通機関で、タッチ決済として長年親しみのあるSuicaに代表されるICカードが決済ですが、
クレジットカードのタッチ決済が着実に浸透を始めているようです。

これをけん引しているのは三井住友カードで、三井住友カードが描く未来像は、交通系決済の枠を超え、
都市や地域全体のデジタル化、そして人々の移動そのものを変革する構想を考えています。

日本の公共交通機関における決済といえば、長らくSuicaをはじめとする交通系ICカードが主流ですが。
新たな挑戦者としてクレジットカードのタッチ決済が現れました。

2024年6月時点で、対面決済に占めるタッチ決済の割合が40%にまで達し、
2022年の13%から毎年倍増ペースで普及が進んできました。
しかし40%は通過点でしかなく、世界全体ではタッチ決済の利用比率は80%に達しています。
英国では20%を超えたあたりから急速に普及が進み、この1~2年で日本も世界水準に追い付く可能性があります。

三井住友カードが、2020年7月にスタートした交通系タッチ決済サービス「stera transit」の導入事業者数も急速に拡大し、
2023年の120社から、2024年には180社、さらに2025年には230社にまで増加する見込みです。

中でも注目すべきは、大都市圏での展開で2024年は首都圏、関西圏での都市部整備が進み、
首都圏では複数の交通事業者にまたがる乗り継ぎにも対応できるようになり、
2025年には首都圏全体で一気に広がる見通しです。

クレジットカードへの交通系タッチ決済の導入は、当初は増加するインバウンド需要への対応が主な目的でした。
海外からの観光客にとって、日本独自の交通系ICカードを新たに購入することなく、
普段使い慣れたクレジットカードで乗車できる利便性は大きな魅力になります。

ところが昨今、公共交通事業者はインバウンド対応以外のメリットに目を向け始め、
最近では地域の交通課題解決の手段としてタッチ決済を導入する例が増えているようです。
また、後払いの特徴とクラウドシステムを活用した柔軟な料金設定が可能な点も魅力になります。

福岡市や熊本市で導入されている一日乗り放題に加え、特定のカードやサービス利用者向けの割引、
オフピーク時の割引など、従来のICカードシステムでは難しかった多様な料金設定も可能になります。

加えて、交通乗車と消費サービスの連携も重要な戦略となり、単に移動手段としての公共交通機関から、
地域の経済活動や生活サービスの中核へとその役割を拡大させる可能性もあります。

データ活用の面でも、新たな展開が予定されデータダッシュボードを提供し、
どんな人がどこで乗ったか、そうした情報を事業者に分析できる環境を提供も可能性となります。
これにより、交通事業者は利用者がどこから来て、どんな年代で、何に支出しているかといった行動パターンを詳細に把握し、
サービス改善や新規事業の立案に活用できるようにもなります。

このように、交通系タッチ決済の採用理由は、インバウンド対応という当初の目的から大きく広がり、
日本の公共交通が抱えるさまざまな課題に対する有力な解決策として認識されるようになりました。

クレジットカードのタッチ決済によって、長らく日本の公共交通の顔であったSuicaの牙城が揺らぐという単なる決済手段の交代劇ではなく、
三井住友カードの新たなシステムは、柔軟な料金設定やデータ活用、プラットフォームの構築など、
公共交通の経営革新や地域活性化のツールとなる可能性を秘めています。

しかし、高齢者や子どもなど非カード保有者への対応、複数事業者連携による乗り継ぎへの対応、
既存ICカードとの共存など、まだまだ多くの課題もありますが日本の公共交通が大きな転換点を迎えているのかもしれません。

北見尚之