浅田の家に集まり、真子たち母子の自主避難にかかわった人たちとみんなで観ていた番組の放送が終わった。

 

「浅田さん、素晴らしかった。」

「素晴らしかった。」

 

「仕事の流儀、本当にいい内容だったね~」

 

「今回は僕、あまり前面に出てないでしょ?

 

あくまでも、主役は真子さんの家族と蛤浜の家族。」

 

「そこもよかった。本当に感動したよ~。」

 

「結局ね、福島の復興と、石巻の復興が実現すれば、原発事故でさえ、人間の絆でなかったことにできるってことをみんなに知って欲しいんだよ。僕の活動はお手伝いに過ぎないけど、僕は人間の力を信じてるんだ。」

 

「そうそう、人間の強さを再認識できた。絆があれば、愛があれば、人間は何度でもやり直せるんだ。」

 

「僕の活動に賛同してくれる仲間がいて、みんなで一緒に東北の復興に貢献できるって、なんて幸せなんだろうって思うよ。これが、僕の活動を続ける力の源ナンダ。」

 

 

「ね、以前言っていたように、今度真子さんも僕たちと一緒に菜種を福島で栽培してそれを九州で加工して商品化するって事業に参加してもらおうと思っているから。

真子さんも、助けられる側から、助ける側になって、生きがいを見つけて欲しい。

これ(原発事故)を機会にね、今までとは全く違うことにチャレンジしてほしい。」

 

「・・・・・・・・・・・・・」

 

「そうだよ、真子さん、生まれ変わったつもりでね!」

 

「・・・・・・・・・・・・・・」

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

真子は心の中で・・こいつら原発事故がどういうものか全くわかってない・・・・放射能汚染というものが全く分かってない・・・・・・・・・・・・・福島復興させようとしてんの?

 

・・・絆で?

 

・・・放射能が確実に降り注いでいる場所で菜種栽培?

 

・・・加工地を九州にすることで、消費者はどこが産地わからなくなるじゃないか・・・・

 

・・・こいつら・・バカなのか?

 

・・・九州大学とか、有名大学出身のジジババなのに・・・

 

全員アホだ・・・・

 

そんで、やっぱり、皆さま他人事じゃんよ・・・

 

 

「あの・・浅田さん・・」

 

 

言わずにいようと思っていたのに・・

 

ずっと我慢していた言葉がつい出てしまった。

 

「福島の放射能汚染は絆で何とかなるんですか?私は無理だと思います。その理由は、土壌汚染が放射線量の低いいわき市でさえ文部科学省のHP上に公開されている測定値は、1平方メートルあたり10万ベクレルのセシウム汚染があるんですよ~。それにセシウム以外の放射性物質についての測定値はまだ公開されていないのですから・・・復興は放射能汚染したままの復興になるというのが現実だと思うんです。」

 

一瞬で、場が凍り付いた。