今朝は中井政嗣さんの著書よりご紹介します。
いまも忘れがたいのは、ある男性社員のケースです。
彼は、どうにも手の施しようがない怠け者でした。
店長や先輩がいくら我慢強く指導しても、改善の兆しさえ表れません。
さじを投げた店長は、「彼をクビにしたい」と言ってきました。
彼の働きぶりを調べると、たしかに相当な問題児です。
私は彼を呼び出して2人きりで話すことにしました。
そして、怒鳴られると思っておびえている彼を「お前は素晴らしいやつや」と褒めました。
「おまえがうらやましい」とも言いました。
彼ほど職場で気ままに振る舞う男を知らなかったからです。
「店長も同僚も、一所懸命に働いているように見えるやろ。でも、みんな自分を偽ってるんやで。人間やから怠けたい。体調が悪い時もある。つらいけど、お客様の前では本音を隠してるだけなんや。お前だって、入社当時は本音を隠して真面目に働いたやんか」
「それが、いつも間にか自分の気持ちに正直に振る舞ってる。おまえはすごい、うらやましいわ。」
そう言って、今後も気ままに暮らしたいなら無人島でも行くように勧めました。
言うまでもなく、世の中は自分を偽って懸命に働く人たちが支え合い、助け合って成り立っているからです。
「それが嫌やったら、おまえも嘘つきになれ。自分の気持ちを偽る人間にならんとあかん。言い方はおかしいけど、それが世の中やんか」
その後、他愛もない話で笑いあって、彼は職場に戻りました。
そして見違えるように働きだしました。
相手の人柄や性格を見極める決め手は、その人に対する興味です。
つまり、相手を好きになることです。
好きになって興味をもてれば、相手のことを本気で考えることができ、おのずと効果的な叱り方になるはずです。
そういう意味で、リーダーに不可欠な能力とは、
「人を好きになる能力」だと、私は思います。
ちなみに、感情的に怒る事自体は、決して悪いことではありません。
怒りは期待の裏返しであって、相手に無関心ではいられないから怒るのです。
その人の成長を願えば願うほど、気のゆるみや不具合さが許せなくなる気持ちは、人間として、自然であり、怒りの根底にある愛情はきっと相手に通じます。
社員を心から好きになって叱れば、その技術的な部分は大した問題ではなくなるでしょう。
「社長の教科書」
中井政嗣さん
日本実業出版社より。
あなたにすべての善きことが雪崩のごとく起きます