時代背景が作ってしまう定説への疑問を綿密な調査であばく。小谷野敦「間宮林蔵<隠密説>の虚実」は、間宮林蔵のいわゆるスパイ活動の、世間の評価のありようを、時代背景を残された文書を綿密に読み解き、解説した本である。 比較文化の研究というものの一端が垣間見え、更に大作に臨もうとするなら、その労たるやいかほどのものになるのであろう。誠実な研究に基づいた故の説得力を感じさせ、爽やかな一冊ではかなろうか。