壊滅のあとに何を築くか
――歴史的敗北からの実践的再生論
特定社会保険労務士・作家 北出茂
左派・リベラルが壊滅的打撃を受けた現実を直視しなければならない。感情的総括でも、他責の弁明でもなく、何が機能不全を招いたのかを一つずつ分解し、再構築の工程表を描くことである。私自身、言論や学習会の企画、候補者支援に一定のコミットをしてきた。その反省を含めて言えば、敗北は偶然ではない。制度・組織・文化の三層が同時に弱体化した結果である。
1 議席減少は「制度疲労」の表れである
衆院選の結果、社会民主党は議席を失い、日本共産党は議席を減らし、れいわ新選組も後退した。中道では立憲民主党出身者の退潮が目立つ。ここで重要なのは、個々の候補の力量以前に、候補者発掘・育成・資金配分・広報戦略という「制度設計」が時代に適合していたかという点である。
社労士の現場で言えば、評価制度が機能しない企業は、優秀な人材から離れていく。政党も同様で、透明な公募、第三者評価、データに基づく選挙戦略が不可欠である。内部での異論を「敵」とみなす文化が残るなら、支持は拡張しない。悪質な行為――恣意的な人事、説明責任の回避、内部批判への圧力――は、理念の如何を問わず許されない。
2 国会外の基盤再建――統一地方選を起点に
国会の議席が細れば、政策形成への影響力は低下する。だからこそ、来年の統一地方選で市民ネットワークを広げることが急務である。自治体は生活政策の主戦場である。子育て支援、介護、地域交通、防災、雇用創出――いずれも国政の理念を具体化する現場である。
必要なのは三つの基盤である。
第一に、政策の共通プラットフォーム(エビデンス付き政策集、財源試算、KPI設定)。
第二に、候補者育成のアカデミー(法制度、広報、ファンドレイジング、コンプライアンス研修)。
第三に、デジタル連携基盤(ボランティア管理、寄付の透明化、情報公開)。
「どれだけ人がいるか」ではない。制度を作れば人は集まる。理念と手続が両立していると示せば、信頼は回復する。
3 仮に強い保守政権が続くなら
仮に強い保守色の政権が続き、参院選まで大規模解散がないとすれば、立法は加速する可能性がある。ここで重要なのは、単なる反対運動に終始しないことである。対案を同時提示し、条文レベルで修正案を示し、影響評価(RIA)を公開する。国論を二分するテーマほど、冷静なデータと法技術が効く。
私は社労士として、法改正の条文と通達を読み込む習慣がある。政治運動も同様で、法案の逐条解説、比較法、財政影響を整理したブリーフィングを即時発信すべきである。批判は事実に基づいてこそ広がる。
4 言論とNPOの「集団化・組織化」
出版や学習会、NPOの活動は点在している。これを面にする。具体的には、
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共通テーマの年次フォーラム開催
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研究者・実務家・議員経験者の横断ネットワーク
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若手の登壇機会を制度化
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会計・ガバナンスの外部監査導入
である。小さなサークルの延長ではなく、透明性の高い公益的プラットフォームへとバージョンアップする。志ある人々との連携は、理念の一致だけでなく、ルールの共有によって深化する。
5 再生の原則
再生の原則は明快である。
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個人の尊厳を内部で守ること。
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異論を歓迎する制度を明文化すること。
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データと法技術で語ること。
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地方から積み上げること。
理念は羅針盤である。しかし船を動かすのは制度と人材である。私は悲観しない。制度は設計し直せるからである。
参照情報
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社会民主党党大会資料
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日本共産党綱領・規約
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れいわ新選組政策集
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立憲民主党代表選規則・政策資料
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総務省「地方自治制度」資料
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ロベルト・ミヘルス『政党社会学(寡頭制の鉄則)』
歴史的敗北は終章ではない。刷新の起点である。悪質な行為を許さず、説明責任を徹底し、制度を磨き上げる。
勇気とは、絶望を語ることではない。設計図を示し、歩み出すことである。