年末なので濃い映画。

沢尻エリカさんが挑戦されると聞いて、今こそ観たい。

キャストがアカデミー賞を総なめにした傑作人間模様。

 

欲望という名の電車

 

  転がり込んだビビアン・リーが大問題児

 

あらすじは、厄介者の姉問題だ。

実家の大農場が破産し、無一文になった姉ブランチが妹夫婦の家に転がり込む。

エキセントリックな姉である。

昔は大層な美女であっただろう風貌。

金に困っているのに、お嬢様育ちが抜けない無邪気さ。

ブランチは妹夫婦に迷惑を撒き散らし、やがて義弟スタンリーに事情を疑われることになる。

 

ブランチの怖さが圧倒的。

そう、怖い人なのだ。

並大抵のホラー映画では太刀打ちできない恐ろしさ。

言動や行動が危なっかしい。

かなり不安定。

それでも妹は甲斐甲斐しく世話をするから余計に、浮世離れしていくさまも怖い。

 

狭い家とはいえ、そこはアメリカなのでまあまあ広い。

ただ、こういう姉が家にいたら、どんなに広大な家屋でもいたたまれないだろう。

 

苛立つ義弟スタンリーに同情していたのだが、徐々に、ブランチの気の毒さが際立っていく。

しかも演じているのは、ビビアン・リーなのだ。

これがスカーレット・オハラと同一女優…?と、『風と共に去りぬ』を思わず確認してしまうほど。圧巻。

 

 

  キャスト&スタッフ

 

テネシー・ウィリアムズの舞台劇を映画化するにあたって、出演者はそのままというキャスティングがステキ。『熱いトタン屋根の猫』同様、熱気が猛烈。怒鳴り合い、物を投げ合う。激しさは格闘技のリングに近いだろうか。

 

欲望という名の電車

 

ビビアン・リーヴィヴィアン・リー)は『風と共に去りぬ』から12年後。公開当時38歳。ババアに見える技量と演出。ロンドンの舞台でもブランチを演じており、アカデミー主演女優賞に選ばれた。過酷で倒れそうになっていたというが、鬼気迫る壮絶な演技だ。

 

スタンリー役はマーロン・ブランド。セクシーさに呆然。セリフもまだ聞き取りやすい! この方だけアカデミー賞を獲れなかったが、熱い演技。

 

欲望という名の電車

 

ブランチに惹かれる純情男ミッチカール・マルデンが良い。大人の恋の悲哀がせつない。アカデミー助演男優賞。

 

妹役のキム・ハンターもアカデミー助演女優賞を獲得。健気な妹。姉妹とはこうでありたい。

 

エリア・カザン監督作品を初体験。舞台劇の映画化でいちばん観たいのは、役者のアップかと思う。カメラの距離の加減に焦らされたりもして、ライトの陰影も見事に美しい。ラストの空気感には放心してしまった。

 

 

  ブランチという役者垂涎のキャラクター

 

ブランチは大胆で、か弱い。

くたびれたドレスが物語るものに、ただ見入ってしまう。

出会ってしまったら、逃げられない。

危険だと分かっていても、どうにもならない魅力がある。

終始、ブランチの迫力が炸裂。

圧倒的なキャラクターだ。

 

こういう役は女優であれば、挑戦し甲斐しかないだろう。

日本でも舞台では杉村春子、浅丘ルリ子、大竹しのぶ、ほか錚々たる面々が演じてきただけでなく、LGBT運動に先駆けて篠井英介も。

話題の沢尻エリカ(37)は、ビビアン・リーの年齢に近い。

一発逆転の大チャンスだろう。

 

ストーリーはエグいのだ。

映画化にあたって同性愛は割愛されたというが、時代の先端を行くスキャンダラスな話題が詰まっている。

当時のみならず、いま観てもハッとする諸問題だ。

実は72年前の映画である。

え……(言葉を失いました)

 

タイトルにもシビれていたら、本当に「欲望」という名の通り(Desire Street)があったというのだから、アメリカのセンスにヨダレ。

ちなみに下着扱いだったTシャツが外出着として市民権を得たのは、このマーロン・ブランドの着こなしの影響だそう。

外出着といえばTシャツの当方、感謝しきれない。

 

芸術と呼ぶには、あまりにも人間の業に満ちた家族物語。

女という性の哀しみ。

この衝撃は永遠に続きそうです。

 

 

 

 

 

 

※テネシー・ウィリアムズ作品の感想はコチラにも↓

 

 
1951年製作/125分/アメリカ
原題:A Streetcar Named Desire
配給:ワーナー・ブラザース映画
監督:エリア・カザン/製作:チャールズ・K・フェルドマン/原作:テネシー・ウィリアムズ/脚本:テネシー・ウィリアムズ、オスカー・ソウル/撮影:ハリー・ストラドリング/編集:デビッド・ワイスバート/音楽:アレックス・ノース/出演:ビビアン・リー、マーロン・ブランド、キム・ハンター、カール・マルデン、ルディ・ボンド、ニック・デニス、ペグ・ヒリアス、ライト・キング、リチャード・ギャリック

※お読みいただきましてありがとうございます。情報に誤りがありましたらご一報いただけたら幸いです。

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