大傑作。
素晴らしい映画が登場。
って、すでに昨年、登場していたのですけれど。
これは猛烈に有望なサスペンス。
(C)2019 PROMISING WOMAN, LLC / FOCUS FEATURES, LLC
瞬きできない痛快と悔恨
感嘆が尽きないわけですけれども、いったん落ち着きます。
あらすじは、予測不能。
バーで泥酔する美女キャシーに、下心剥き出しで近寄ってくる男たち。
あっさり男の部屋に連れ込まれるのだが、すぐに形勢は逆転。
このキャシー嬢、実は賢い。
なのに、どうしてそんな危険な夜を過ごしているのか。
謎が紐解かれるたびに、痛みが流れ出してくる。
最高な音楽と、オシャレ炸裂のインテリア。
可愛いが過ぎる衣装と、ガールズのアレコレが散りばめられている。
ユーモアだって、まぶされる。
皮肉たっぷりだ。
そんな舞台装置の中で語られるストーリーの、苦味といったら。
ガールズムービーなのかなあ…などと、ノンキに構えていた序盤の自分が懐かしい。
終盤は瞬きが出来なかった。
ドライアイが重症化。
スタート地点からは予想もできない展開だ。
キャシーの人生は、ある事件から変わってしまった。
それは、誰にでも起こり得る悲劇だった。
女による女の映画、という言い方はあまりしたくないのですけれども。
女性が作った作品だと思うと、この物語を抱きしめたくなる。
キャシーの意味不明な行動の意味が見え始めると、映画は本気を出してきた。
キャストとスタッフ
キャシー役のキャリー・マリガンは製作総指揮も兼ねて、大拍手の演技。『ドライヴ』の可愛さも好きだけれど、本作の覚悟は圧倒的。まさに新境地。声も低く落として、力強い。
小児科医役のボー・バーナムの雰囲気が絶妙。スベリがちなジョークを繰り出すので親近感。実際にコメディアンでもあるそう。
キャシーの両親役クランシー・ブラウンとジェニファー・クーリッジも、バランスが良い。
『キック・アス/ジャスティス・フォーエバー』のマザーファッカー役が最高だったクリストファー・ミンツ=プラッセは、短い出番でもう気持ち悪いから、好き。
劇中で使われるパリス・ヒルトンの歌が好きになってしまった。
監督・脚本・製作総指揮を兼ねたエメラルド・フェネルは女優で、本作が監督デビュー作。やはり、自分で脚本を書ける人は強い! 本作でアカデミー脚本賞を獲得した。女性がアカデミー脚本賞を受賞したのは13年ぶり。えええ…である。
重いテーマを日常に潜り込ませて、素晴らしい。妊娠中に撮影したというド根性。
ハーレイ・クイーンことマーゴット・ロビーが製作に加わっているのも、嬉しい。
前途有望な女性が失くしたもの
タイトルの『プロミシング・ヤング・ウーマン』Promising Young Womanの意味は、「前途有望な若い女性」である。
このタイトルが中盤からグイグイ効いてくる。
一見、イメージ先行に思えたポスターも、観終わってから見ると深みが出た。
ネタバレ厳禁というだけで、どんでん返しが予想されてしまいがちですけれど。
本作はそういうことではない。
ただ、気がつけば沼にハマっているという状態。
魅了されるとは、まさにこういうことかもしれない。
女性が陥りがちの状況が、大きくも小さくも描かれる。
思い当たる方も多いのではないか。
被害に遭われた方もまた、多いだろう。
日本でも同様の事件があった。
それも、何度もだ。
季節行事のようにニュースに登場する気配もある。
今も、表に出ないケースが多くあるだろう。
犯罪が裁かれるとは限らない。
ならば、誰が被害者を守るのか。
本作は一人の女性が守りたかった友情や愛情を描いてはいるけれど、弱い者が受けた痛みを代弁するかのような復讐劇である。
こういう映画に出会うために映画を観ているのだなと思える。
未見の方にはハードルを上げてしまって恐縮ながら、大傑作かと思います。
2020年製作/113分/PG12/アメリカ
原題:Promising Young Woman
監督・脚本・共同製作:エメラルド・フェネル、共同製作:マーゴット・ロビー、共同製作総指揮:キャリー・マリガン、撮影:ベンジャミン・クラカン、美術:マイケル・T・ペリー、衣装:ナンシー・スタイナー、編集:フレデリック・トラバル、音楽:アンソニー・ウィリス、出演:キャリー・マリガン、ボー・バーナム、アリソン・ブリー、クランシー・ブラウン、ジェニファー・クーリッジ、ラバーン・コックス、コニー・ブリットン、アダム・ブロディ、クリストファー・ミンツ=プラッセ、クリス・ローウェル、マックス・グリーンフィールド
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