少年と青年の恋の物語。
80年代、まだまだ多様性にはほど遠い時代の、夏の出来事である。
(C)Frenesy, La Cinefacture
ユダヤ人の同性愛は高い壁
1983年の北イタリア。
少年エリオの家に、アメリカから学生オリヴァーがやって来る。
考古学教授の父の元に、6週間の滞在だ。
恋は一瞬で生まれて、オリヴァーに惹かれるエリオ。
しかし彼らにとってその恋は、してはいけないものだった。
イタリアの夏の景色が美しい。
緑に囲まれた湖。
畑の中、クネクネと続く砂利道を行く2人の自転車。
庭での食事。
彼らが過ごす家屋はホテル並みの大きさ。
掃除も大変そうだが大丈夫、メイドさんがいる。
町も人ものんびりとしている田舎町。
自由人のオリヴァーに翻弄されるエリオがいじらしい。
とはいえ、エリオは17歳なので。
色んな意味で元気ではある。
それもまた、高校生の夏の光景だ。
時代は多様性のカケラもないうえに、彼らはユダヤ人。
今でこそユダヤ国家のイスラエルも同性愛を合法化したが、当時のユダヤ教ではタブーであった。
日本人が想像する以上に、その壁は高いものだっただろう。
キャスト&スタッフ
エリオ役のティモシー・シャラメは大ブレイクも当然の成り行き! フランス語も巧みでコロンビア大学とニューヨーク大学に通うとは、どんだけ。20歳を超えているようには見えない。本作でアカデミー主演男優賞にノミネート。今も快進撃中だ。
オリヴァー役のアミハマことアーミー・ハマーは35歳くらいに見える。年齢差にザワついたが、24歳設定だった。歩くギリシャ彫刻のよう。
昨年、暴力的なDM(ダイレクトメッセージ)が流出。性的暴行を女性から訴えられ、矯正施設に入所した。主演作も降板となり、散々である。
教授役のマーク・スタールバーグはいつも味があるけれど、今回は特にロビン・ウィリアムズに見える。
アンドレ・アシマン原作小説の映画化。アシマン本人はストレートとのこと。
脚色のジェームズ・アイボリーが作品の肝だろう。『眺めのいい部屋』でオスカーを獲得した達人。ご自身もゲイを公表している。だから生まれる感情の機微だ。本作でアカデミー脚色賞を受賞した。
ルカ・グァダニーノ監督は丁寧に心の距離を描き、無邪気さを存分に引き出した。現在、傑作『スカーフェイス』のリブートを準備中とのこと!
エンドロールに故ビル・パクストンの名前があるので、本作のどこかにもいたのか…!?とドキドキしたが、監督と交流があり、撮影現場を訪れていたのだそう。
スティファン・スティーブンスの挿入曲『Mystery of Love』が耳にも胸にも残る。
ティモシー・シャラメの魅力がまぶしい
本作が素晴らしく輝くのは、ティモシー・シャラメの魅力ゆえだろう。
小顔・クセ毛・細身・色白と、少年愛の最高要素を全て持っている。
こんな悪魔に迫られたら、危ない。
危険人物だ。
大人目線で観ると、年上側の戸惑いが丸わかり。
子育て論としてもユニークだが、そういうことではなく、さらに深いテーマが潜んでいた。
終始、映像は美しい。
綺麗に描かれるのと同時に、セクシュアルな映画でもあるので。
人間だもの、中にはウッ…とくるヤンチャさもある。
基本、シャラメは上半身裸である。
半裸でピアノだ。
サービスなのか分からないが、アミハマもシャツのボタンは止めない。
ほぼ半裸である。
放尿シーンの後に手を洗わない彼らに、きつく指導したい。
男女の恋愛よりも切なさは猛烈。
許されない恋だから。
LGBTが虐げられてきた歴史をも感じさせる。
泣くと分かっているのに好きになる。
夏の恋で、青春で。
ラストシーンは珠玉。
2人の時間を貪るように、はしゃぐ彼らの姿がまぶしい。
2017年製作/132分/PG12/イタリア・フランス・ブラジル・アメリカ合作
原題:Call Me by Your Name
監督・製作:ルカ・グァダニーノ、原作:アンドレ・アシマン、脚色・製作:ジェームズ・アイボリー、撮影:サヨムプー・ムックディープロム、美術:サミュエル・デオール、編集:ウォルター・ファサーノ、音楽監修:ロビン・アーダング、挿入曲:スティファン・スティーブンス、出演:ティモシー・シャラメ、アーミー・ハマー、、マイケル・スタールバーグ、アミラ・カサール、エステール・ガルレ、ビクトワール・デュボワ
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