実に面白い。
大好きな叔父さんが家にやって来てウキウキの姪っ子だが、この叔父さん、どこかがおかしい。
怪しい叔父さんはモテまくる
もう、ミステリー好きはヒッチコック作品を観ておけば間違いない。
ハズレが無い監督といったらヒッチコック、そしてスピルバーグ、そしてキューブリック。うむ。結構、いる。
本作のあらすじがシャレている。
叔父さんはママの弟で、イケメンで、やたらと羽振りが良い。
口が上手くて、口が悪くて、何かを隠している。
まるで詐欺師のようだけれど、叔父さん大好きな姪っ子はメロメロ。
ところがある日、2人の男が訪ねてきて…
そこから一気に不信感が沸き上がっていくのだから、面白い。
家族とはいえ会わない時間が長いと、相手が何をしているかは分からない。
女性を魅了しがちな叔父さんである。
国民性と片づけるには、姪っ子にベタベタしすぎでもある。
おそらく、良い香りも漂っているはずだ。
そもそも叔父さん、結構、若い。
観ているうちにこちらもメロメロしてくる、いわば女ゴロシ。
スタッフ&キャスト
申し上げるまでもなく、アルフレッド・ヒッチコック監督は天才。スリラーサスペンスのひな型を全部作ってしまったのではないか。緩急の落差といったらたまらない。本作でのカメオ出演は、汽車でポーカーをしている後ろ姿であった。難易度、高っ!
姪っ子役のテレサ・ライトが美しくて利発。ウエストの細さに震える。撮影時は24歳だったようだが、ウキウキと傷心の振り幅がとても良い。
小さな姪っ子役のエドナ・メイ・ウォナコットが子どもの可愛さ、みなぎる。
叔父さん役はジョセフ・コットンである。『ナイアガラ』で気の毒な夫を演じたのも記憶に新しい。あ、個人的に、です。傑作『ガス燈』でもメインキャストだったはずだが、見落としていた模様。
役柄のせいで、やけに色気がある。こういう細身の長身俳優が、ヒッチコック監督はお好きなのだろう。
叔父さんの秘密をあぶり出す
人心掌握術に長けている叔父さんだ。
女のみならず、男も一目置いてしまう佇まい。
実の姉さえも、瞳がポワーンとなる始末。
当の叔父さんは堂々としているようで、終始、気が張っている。
朗らかだった家族に、蛇のように疑いが忍び込む。
何気ない家族の行動が、やましい人間を追い詰める。
ミステリー好きの義兄とその友人の関係も、良い調味料。
さて、叔父さんの苛立ちの理由が見えてからが、また面白い。
あっさり告白する叔父さんの恐ろしさ。
素敵に見えていたものが、恐怖に変わる。
事細かに説明しない脚本だからこそ、観客の中で膨らむ不審が効果的だ。
ラストまでの勢いは、ヒッチコック監督の真骨頂だろう。
しかもこの叔父さん…
気になることがもっと、ある。
と、ここからネタバレしてしまいます。未見の方はページを閉じて下さいませ。
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叔父さんの正体
劇中で、叔父さんは1枚も写真が無いはずだ、というシーンがある。
実際には1枚だけ子供の頃の写真があって、姉の回想セリフが入る流れだ。
叔父さんは子供の頃に自転車で事故に遭ったのだと。
頭蓋骨骨折をして、長期入院をしたと。
退院してから人が変わったようになった、と。
読書好きの大人しい子だったのに、本も読まない、やんちゃな子に変わったのだと。
これは、他の子どもの入れ替わりを示唆しているのでは…と邪推すると楽しい。
はい、ミステリー好きの大好きパターンです。
そもそも最初から、よそ者が入り込んでいた疑惑だ。
当時の時代背景も考えると、貧富の差は大きかっただろう。
姉の実家は、自転車を買ってもらえるような裕福な家庭だ。
そう思って観ると、姪っ子にまで色目を使う態度も納得できてしまう。
決定的なセリフはないので、思わせぶりなだけかもしれない。
頭部のケガによって何かが狂ってしまった、ということかもしれない。
ただ、入れ替わった他人がずっと家族のふりをしていたと考えると、寒気が増す。
そうやって更に嚙み砕ける、まさにスリラーのお手本。
オススメありがとうございました。ご馳走様でした。
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1942年製作/108分/アメリカ
原題:Shadow of a Doubt
監督:アルフレッド・ヒッチコック、原作:ゴードン・マクドネル、音楽:ディミトリ・ティオムキン、出演:テレサ・ライト、ジョセフ・コットン、マクドナルド・ケリー、パトリシア・コリンジ、ヘンリー・トラヴァース、ウォーレス・フォード、ヒューム・クローニン、チャールズ・ベイツ、エドナ・メイ・ウォナコット
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