かわいそう・・・
新年一発目は景気よく特撮映画で、と思い、観たわけなのですが。
©東宝
戦争はまだ終わっていない
かわいそうじゃないか。
誰って、みんながみんな、可哀想である。
長年、海底で煮え湯ならぬ潮水を飲んで、耐え忍んできたムウ帝国人。
彼らが地上を目指して大暴れ。
一方、戦後20年、ジャングルに隠れて潜水艦を作り続けてきた神宮寺大佐と日本兵。
ムウを倒すには、大佐の作った潜水艦が必要だ。
貸してください、と、気安くお願いに向かう日本人。
どうですか。
すでに、かわいそう。
ムウ帝国人は魚ばかりを食べているのでDHAを過剰摂取しているらしく、驚異の科学力である。
ただ、下々のムウ人は、ほぼ裸。
かわいそう。
大佐軍団も、密林とは思えぬ物資調達力と技術力。
しかも、彼らは真っ白な軍服を着ているのである。
ジャングルで、クリーニング店も無いのに、である。
同じように軍人が姿を隠していた『地獄の黙示録』はあんな有り様だったのに、日本軍の気概といったら。
もう、かわいそう。
そう、今作は、いまだ戦争脳で突き進むムウ帝国人と旧日本軍大佐に対して、戦後の平和主義日本人を腑抜けに描くことで時代の変化を浮き彫りにしているのである。
キャスト&スタッフ
腑抜けの代表は、高島忠夫が担当している。さすがの毛量。
小泉博がまたしてもカッコよいのだが、セリフ量がフェードアウト。
特撮には欠かせない美人担当として、藤山陽子。まさにマドンナ。ジャングルにもオシャレ爆発なワンピースを持参してくれるので、心が踊る。
藤木悠があらためて新井浩文に激似なのだが、もう、2人の新作は観られないので切ない。
よく観るけど、誰だったか・・・と思ったら、少将役は加山雄三パパの上原謙であった。
神宮寺大佐役の田崎潤が見事な軍人。
本多猪四郎監督は特撮エンターテイメントに戦争エキスを大注入。骨組みがしっかりしているので、ムウに日本軍に、しかも、かか、怪獣!?マ・・・マンダ!?となっても納得してしまうから、凄い。
円谷英二特技監督の手腕が惚れ惚れであり、沈下する街には度肝を抜かれた。名シーン!
伊福部昭の音楽は、問答無用の盛り上がり。特撮界、伊福部昭を流しておけばOKの感は、確かにある。
悲哀が波のように押し寄せる
思うにスタッフの力量が素晴らしいのだが、エキストラの量も相当である。
彼らの誘導だけでも大仕事だっただろう。
1963年に作られた今作。
ということは、人々の戦争の記憶もまだ新しかったはず。
パニック描写など、実にリアルなのはそのためかもしれない。
『海底軍艦』というタイトルからして、戦争の面影が猛烈である。
なんと勇ましく、哀しいのか。
軍艦・轟天号(ごうてんごう)の配色は戦艦大和を思わせ。
軍艦・轟天号の機能は新奇に富む。
不謹慎ながら、ワクワクと胸が躍る海戦である。
そんな中でも、ムウ帝国の皇帝に心を奪われた。
演じる小林哲子は凛々しく、少ない出番で全てを持っていく。
大海に暮らしながら井の中の蛙だった皇帝の戸惑いは、忘れがたい。
初見時、今は亡き秋田シネマパレでフィルム鑑賞の機会を得たのですが。
海岸のワチャワチャシーンでさっそく寝落ちした自分を、マンダの生贄にしたいのであります。
特撮映画って、本当に良い。
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こちらからも観られます↓
1963年/94分/日本
監督:本多猪四郎、特技監督:円谷英二、脚色:関沢新一、製作:田中友幸、美術:北猛夫、音楽:伊福部昭、出演キャスト:高島忠夫、藤山陽子、小泉博、上原謙、藤木悠、佐原健二、田崎潤、平田昭彦、小林哲子、藤田進
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