13th 憲法修正第13条

 

アメリカ合衆国憲法修正案13条とは

1865年に制定された黒人奴隷解放の法律である。

奴隷的拘束の禁止」を定めているが、抜け道がある。

「except as a punishment for crime.(犯罪への処罰を除く)」の一文だ。

 

現在、アメリカで巻き起こっているBlack Lives Matter(黒人の命は大切)運動の根本であろう。

 

切迫感あふれるドキュメンタリーは、オバマ大統領(当時)の言葉から始まる。

「統計上アメリカの人口は世界の5%だが、受刑者は世界の25%を占める」

実に、受刑者数230万人。

世界一収監率の高い国は、中国でも中東でもない。

アメリカである。

 

それは、いったい何故なのか。

どうして黒人は警官に殺されるのか

奴隷解放運動を経て、黒人奴隷は鎖から解き放たれたはずだった。

白人と等しく自由を手に入れたはずである。

我々も、そう習ってきた。

自分がいかに無知蒙昧であったかと、愕然とする。

 

アメリカの人種差別が心情ではなく、システムとして確立されているのだと知って、多くの日本人は驚くのではないか。

 

各界の知識人や大学教授、人権運動家、歴史学者、元受刑者、政治家、企業側など。

インタビューに、各種のニュース記録映像を繋ぎ合わせて描き出される現実は、目を背けたくなるインパクトだ。

 

どうして黒人の犯罪者が多いのか。

どうして黒人の若者は簡単に殺されてしまうのか。

どうして白人の警官は黒人を殺すのか。

 

それは、この第13条を悪用しているから。

 

黒人の人権運動が起こる度に、心底の理解が出来ずにいた方も多いかと思う。

私事ながら、当方はまさにそうだった。

まさか、今なお、社会が奴隷制を持続させていたのだとは。

震撼である。

生命を脅かされるような恐ろしさ。

心の底から震える恐怖だ。

 

しかもこれは歴史ではなく、現在である。

アメリカという、眩しく輝く華やかな国(イメージ)で続く忌避すべき人種差別の実態である。

もしも、自分がアメリカに暮らす黒人男性であったなら。

人生に絶望するほかない。

スタッフについて

エバ・デュバーネイ監督

アフリカ系アメリカ人女性として初めて、サンダンス映画祭最優秀監督賞を受賞。

終盤に向けて力強さを増していくから、圧倒される。事実を重ね核心を暴くミステリーのよう。幕切れの勢いは後を引く。

Netflix

配給会社は定額制動画サービス、Netflix(ネットフリックス)である。
近年、優秀映画を多数、製作。定額収入により独自の製作費を持ち、これまでの映画スタジオ方式とは違う形で映画作りをしている。おかげで、政治的な影響を受けない作品が多く作られており、今作はまさに筆頭だろう。

ジェイソン・モラン音楽

挟み込まれるラップや音楽が、印象的。

リサ・ニシムラ製作総指揮

アメリカ生まれの日系人プロデューサーで、Netflixドキュメンタリー・コメディ制作部門ヴァイス・プレジデント。肩書が凄い。ご両親は日本人。何やら嬉しい。
『イカロス』で2018年アカデミー賞長編ドキュメンタリー賞を受賞。
 
と、製作と監督で女性が活躍。これまた嬉しい。

この狡猾さが世界に広まれ

インタビューに応える人々は、冷静である。
事実を語り、その影響を憂い、静かに訴えかけてくる。
狼狽えているのは搾取側に見えた。
そんな編集の巧みさや印象付けも、とても上手く作用している。
 
冒頭で、D・W・グリフィス監督の無声映画『國民の創生』が紹介される。
黒人のイメージを決定づけたと言われ、影響力は計り知れない。
映画は、毒にも薬にもなるということだ。
 
一方の今作は、2016年に公開された。
そののち、アメリカは変わっただろうか。
第89回アカデミー賞長編ドキュメンタリー賞にノミネートされたが、受賞は逃している。
現在、本編はNetflixで観られるのはもちろん、YouTubeでも無料公開中である。
未見の方はゼヒ。
 
アメリカで起こっている事象にこれほど合致しているとは、驚くばかり。
ドキュメンタリーは観客が公平さを保つことも重要だが、それでも酷い。
今作の影響力が、もっと広がるといい。

ネタバレ

ここからはネタバレします!
知りたくない!という方は予告編・本編まで飛ばしてくださいませ。
 
 
 
ネタバレあります
 
 
 
ネタバレです
 

「アメリカで、一生涯のうちで投獄される可能性は、
白人男性の場合、17人に1人。
黒人男性の場合、3人に1人

全米人口のうち、黒人男性はたった6.5%。
だが、全受刑者の40.2%を占める。
これは1850年の奴隷の数より多い。」(映画内から引用)
 
軽微な犯罪で黒人を検挙して、刑務所に収容。
企業は刑務所に仕事を発注。
黒人受刑者から搾取した労働力で、企業が潤う。
このシステムは、巧妙で卑劣
こんな制度を考案・持続しているアメリカ社会、白人社会の、精神性を疑う。
 

予告編

(右下の字幕・設定から日本語字幕を選べます)

映画本編

100分ありますのでWi-Fi環境下か、ギガフリーでご覧ください。ショッキングな映像を含みます。

(右下の字幕・設定から日本語字幕を選べます)

 

 

 

※当記事は個人の感想でございます。情報に誤りがございましたらご一報いただけますと幸いです。

 

カチンコyoutube(Netflix公式)

 

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『13th 憲法修正第13条』
2016年/アメリカ/100分
監督・脚本・共同製作:エバ・デュバーネイ
製作:ハワード・バリッシュ、スペンサー・アヴァリック
製作総指揮:ベン・コトナー、アダム・デル・デオ、リサ・ニシムラ、ジェイソン・スターマン、アンガス・ウォール
音楽:ジェイソン・ラモン
撮影:ハンス・チャールズ、キラ・ケリー
編集:スペンサー・アヴァリック

 

 

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