君よ憤怒の河を渉れ

 

ネタバレあります!

あらすじ

ある日いきなり、殺人犯の汚名を着せられる検事。否認するも、不利な状況が次々と。味方はゼロ。ナゼ。少なくとも検事なのに。人望とは。

 

逃げるしかない。だって、殺していないのだから。

 

彼は果たして、汚名を拭うことはできるのか。切羽詰まった男の逃亡劇が、あり得ない壮大スケールで描かれるハードボイルド・サスペンス。

ザ・破天荒

ヒッチコック作品を思わせるが、それを超える急展開。

素人の逃亡とはワケが違う。

何しろ、検事なので。

犯罪者と向き合ってきたから、手口は知り尽くしている。

 

まるで、やり手スパイのような知恵と能力。

ミッションがインポッシブルする体力。

レヴェナント』よりも先に、熊と格闘。

怒涛の活躍である。

むしろ、検事だった時よりも能力が開花しているのではないか。

 

「(セスナ)操縦したことは?」と訊かれて「ありません」と答え、少し練習。

それだけでセスナ機を操ってしまうのだから、唸る。

もう、スーパーマン。

追い詰められて伸びるタイプ。

逃げる男・高倉健

何しろ、検事役は高倉健である。

健さんが逃げるのである。

健さん、絶対、無実じゃん。

あれほどヤクザや殺人犯の役を演じてきた俳優なのに、この信頼感は何なんだ。

 

健さんだから、逃亡先でもモテる。

モテモテである。

そのモテで、逃亡が上手くいく。それだけではなく、女とも上手くいく。

お手上げだ。

世の男性、完敗。

追う男・原田芳雄

検事を追う刑事役は、原田芳雄だ。

もうどうしたらこんなに、というほどのカッコよさ。

しかし、警察官にしておくには、目立ちすぎる。

 

松田優作は原田芳雄を好きすぎて隣に引っ越した、というエピソードも納得。松田優作の数パーセントは、原田芳雄で出来ていたのかもしれない。

 

検事を追うのだが、あっさり縛り上げられるので、せつない。

有能設定なのだが、公務員だから上司の意向には逆らえないので、せつない。

 

それでも男気を見せるので、ぃやもう、本当にカッコいい。

キャスト、スタッフについて

佐藤純彌監督・脚本

ミスター破天荒。東大出身者の頭脳は計り知れないという見本。当方、『新幹線大爆破』『野生の証明』しか観ていないのですが、こんなに飛ばしまくる日本人監督を他に知らない。

西村寿行原作

ミスター・ハードボイルド。作者の意向を全無視してタイトルの「憤怒(ふんぬ)」を「ふんど」と読ませる暴挙をたぶん、許したと思われる。

中野良子

色気の源泉は声ではないかと推察。今作もナゾの有能さを発揮する役。合う。

大滝秀治

どちらのせいかは不明ながら、娘役の中野良子と並ぶと漂う愛人感。

田中邦衛

セリフ無し。なのに、あの存在感はどうだ。

永田雅一プロデューサー

社長として大映を倒産させてしまったが、今作で映画界に復帰した。

製作費は2億円

タイトルの馬鹿カッコよさに惹かれて観ると、えっ!と腰を抜かすパターンだろう。
緻密なストーリーや伏線、といったものはポイー。
実に、シンプルである。
男が焦る。汗をかく。睨む。睨み合う。
 
2億円の製作費も惜しみなく使う。
うち、1500万円は高倉健のギャラである。
厚労省調査で大卒初任給が94,300円だった時代だ。大金だ。(数学音痴の限界
 
クライマックスでは、新宿駅前を馬の一群が駆け抜けるから引っくり返る。
CG? は?である。
馬も本物、新宿駅もホンモノ。
しかも、ゲリラ撮影だったというのは本当ですか?(震え
アスファルトで滑る馬、かわいそうなのだが、そのインパクトといったら!
凄すぎて屁が出てしまった。
 
勢いは国を超え、中国では大ブームになった。文化大革命下での境遇と検事の困難をダブらせた人々が多かったという。
今なお人気作であり、2017年にジョン・ウー監督+福山雅治主演でリメイクされた。

疑われて手に入れる信頼

終盤、検事は過酷な潜入ミッションに突入。
前年に公開された『カッコーの巣の上で』を彷彿とさせる、健さんの薬漬け演技に息を呑む。
 
逃亡の過程がド派手であり、急展開が押し寄せるのでうっかりしてしまうのだが。
今作の魅力は、俳優陣の芝居だ。
そして、人情でもある。
冤罪をこうむって初めて出会った人々。そこに生まれる信頼。
 
緊迫シーンで流れるホンワカ音楽にオロオロするのも一興。
ラストシーンは痛快だ。
なんだか、良いものを観た、という満足感。
 
 

カチンコムービープラス

 

※当記事は個人の感想でございます。情報に誤りがございましたらご一報いただけますと幸いです。

 

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『君よ憤怒の河を渉れ』
1979年/日本/151分
監督・脚本:佐藤純彌
脚本:田坂啓
原作:西村寿行
製作:永田雅一
出演キャスト:高倉健、原田芳雄、池部良、大滝秀治、中野良子、倍賞美津子、内藤武敏、岡田英次、西村晃、田中邦衛、伊佐山ひろ子、大和田伸也、下川辰平、阿藤快

 

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