のみとり侍

 

ホスト今昔物語

なるほど、まさしく喜劇。

基本、下ネタである。

 

殿の怒りを買った侍が猫の蚤(のみ)とりを命じられ、江戸屋敷を追われるのだ。

この「猫の蚤とり」というのは文字通り、蚤を取る、猫の蚤を駆除する職業。

が、それは表向き。

実態は、女性に春を売る裏稼業。

売春夫である。今で言う、出張ホスト。

 

春を売る男が出会う、女性たちの裏事情。

長屋の暮らしの光景。

江戸庶民の生活風俗が見られて、どこまでが実態なのかと興味が高まる。

お江戸ホストは自ら客引きに出向くから、衣装も派手。

女着物もモダンで、素敵。

美男の裸体、美女の裸体で目の保養。

 

江戸時代の藩士=現代のサラリーマン事情も描かれる。

庶民の暮らしのギリギリさも描かれ、江戸時代は遠くにあらずだ。

ラストも少々、意外性で驚く。

コメディ描写は大仰で、分かりやすい。

劇場内、妙齢の女性が大ウケ。

下ネタって最強かもしれないなあと、妙に感慨深い。

 

濡れ場も会話も生々しい男女の営みから炙り出される、江戸期のゲーセワ(下世話な)ニュースとでもいおうか。

痛快コメディかと思えばしんみりもあり、落語のよう。

ただし、コメディとはいえ、ファミリーで観てしまうと居たたまれないので、ご用心。

 

 

のみ取りという仕事

ところで、江戸期に出張ホスト的な仕事があったのか。

あった。実在した職業である。

 

昨年、亡くなった原作者の小松重男は撮影所出身で、時代考証に優れた作家。

蚤とりは、元々は本当に猫の蚤を取っていたのだという。

駆除方法が知れ渡ると本業は廃れてしまい。

猫を飼う裕福な女性=お妾さんの多い地域で春を売るようになった。

と知ってから観ると、なおのこと、興味深い。

 

改めて、江戸期までの日本は性事情がフリーダムだと羨望…あ、違った、驚嘆だ。

西洋文化が入り込んできて厳粛になったけれど、日本はLGBTも古来より認知され、そもそも性の先進国。

男子たるもの、男色は嗜(たしな)むものであった。

織田信長の例を引くまでもなく、多くの殿さまは男子を好んだ。

 

現代でも、住宅街や駅前の一本隣道が風俗街という場所は多い。

西洋社会から見たら、今なうフリーダム日本!だろう。

ある意味、全てを許す仏様の心持ちに近い。

と、話が大いに逸れたところで、キャストスタッフのご紹介です。

 

 

江戸を股にかけるキャストの面々

阿部寛は、放擲(ほうてき)される侍役。

日頃、セクシーさからは遠い清潔感があるからか、見てはいけない濡れ場を見ているような気持ちに。

 

豊川悦司はセクシー大明神だけれど、年を重ねたリアル裸体である。

肌の質感も手に取るようで気恥ずかしく、見てはいけないものを見ている気持ちに。

 

斎藤工の登場に裸体担当かと手に汗を握ったが、違った。惜しい。(セクハラ御免

 

寺島しのぶは好きな女優なのだけれど、相変わらず美肌で濡れ場がよい。

 

前田敦子の色めくシーンで、ドキドキする。あ…あっちゃん…!

 

風間杜夫大竹しのぶコンビは、いつも通りの歯切れの良さ。

 

松重豊が最高。 出番に反して、印象深さが山の如し。

「猫の蚤取りになって無様に暮らせ~い!」はちょっと長いが、流行語にしたい。

いつ使うかは、各人にお任せだ。

髷(まげ)のカツラをかぶると、逆に若返って見える。ちなみに、裸体は無し。

 

鶴橋康夫監督は日本テレビ(読売テレビ)で長らく、大人向けドラマを作られていた。

確認したところ、私事ながら、鶴橋康夫作品は初体験。

想像以上の大人度である。

濡れ場もねっとり。キレイキレイには描かない作風。

40年越しの念願の映画化とのことで、豪華キャストに豪華装いと支度は万端。

『後妻業の女』も面白いと聞いた。気になってまいりました。

 

 

 

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『のみとり侍』
2018年・日本
監督・脚本:鶴橋康夫
原作:小松重男
衣装デザイン:小川久美子
衣装:松田和夫
出演キャスト:阿部寛、寺島しのぶ、豊川悦司、斉藤工、風間杜夫、大竹しのぶ、前田敦子、松重豊、笑福亭鶴光、ジミー大西、オール阪神、桂文枝

 

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