眼下の敵

 

戦争映画の代表作

大好き映画をセルフ・リバイバルするシリーズ。

 

当方、戦争映画がとても好きなのですけれど、おそらく、ここが原点。

優れた戦争映画とは、戦争の愚かさを明らかにしてくれるものだ。

今作は、まさしく、そう。

傑作戦争映画の先頭にして、至高である。

 

第二次世界大戦時の大西洋。

アメリカの駆逐艦とドイツの潜水艦Uボートとの、一騎打ち。

GPSなど無い時代だ。

敵艦の位置を探る頼りは、音波ソナーである。聴力である。

そこから導き出される計算と、艦長の判断力。

 

大海原に、二艦だけ。

アメリカ、ドイツ、双方から描かれる心理戦。

海上のアメリカ側には強い日射が降り注ぎ、片や、海中のドイツ側は潜水艦内で息を潜めるという対比。

ソナー音が、ただただ流れる時間の緊迫。

ああ、なんという臨場感ですか!

 

ラストへの展開は、言葉を失う素晴らしさだ。

 

 

キャストスタッフは米独から

アメリカ艦長はロバート・ミッチャム

初見当時は自分が子ども過ぎて分からなかったが、色気が満々じゃないか…!

 

ドイツ艦長クルト・ユルゲンスが、もう! 忘れられない名演!

青い瞳のドイツの名優。

ヒトラーを批判して、ご自身、ハンガリーの強制収容所に収容された過去を持つ。

その背景にも基づいたキャラクターである、胸に迫る。

 

ドイツ側のハイニ士官役、セオドア・バイケルがいい。

この方もまた、ドイツ系ユダヤ人だ。

 

アメリカ側の軍医役ラッセル・コリンズが、ツルッとしてニヤッとしている。

 

ディック・パウエル監督は歌手から出発、俳優・映画監督・製作の道へ。

監督作品は5本だけれど、今作で映画史上に名を残した。

 

原作はイギリス海軍中佐D・A・レイナーだから、描写もリアル。

ウェンデル・メイズ脚色は名セリフが目白押しなので、反戦カレンダーとして日めくりを作りませんか?(提案)

 

 

戦場、そして反戦

ドイツ側も英語を話すハリウッドシステムながら、ドイツ訛りで不自然さがない。

ミニチュアを活用した、特撮映画でもある。

撮影には、アメリカ海軍が全面協力。

その謝辞だけが映し出されるエンドクレジットは、昨今の冗長なエンドロールに慣れた今では、とても新鮮。

 

ひたすらに、戦場である。

ダンケルク』に感銘を受けた方にも、オススメしたい。

原題『THE ENEMY BELOW』は「潜在的な敵」という意味ながら、『眼下の敵』とした邦題も秀逸だ。

 

2人の艦長の背景は短いセリフで語られるから余計に、哀しみが押し寄せる。

回想シーンなど、いらない。

この戦場に、女もいらない。

男だけが登場する映画で、男同士の矜持である。

 

私事ながら、戦争映画好きな父と、ロバート・ミッチャム好きな母の子として、小学生の頃に観せられたのですけれど、ナイスチョイス、親。

衝撃を受けた。震えた。

こんな敬意の払い方があるのかと。

いま観ても、いや、むしろ分別が多少ついた今になってからの方が震えてしまった。

 

戦争には、勝者も敗者もない。

彼らの責任感に、たまらなくシビれる。

究極のカッコよさに裏打ちされた、力強い反戦である。

 

 

 

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『眼下の敵』
THE ENEMY BELOW
1957年・アメリカ
監督・製作:ディック・パウエル
脚色:ウェンデル・メイズ
原作:D・A・レイナー
音楽:リー・ハーライン
出演キャスト:ロバート・ミッチャム、クルト・ユルゲンス、アル・ヘディゾン、セオドア・バイケル、ラッセル・コリンズ、クルト・クリューガー、アラン・ラ・サール、フランク・アルバートン

 

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