じいさん&ばあさんが、老齢になってから花開く。
伝説を作る。
これは、その軌跡を追ったドキュメンタリー。
1998年のキューバだ。
往年のミュージシャンが結集して、バンドを作る。
彼らはこの時点で、もう高齢だ。
キューバ革命後に、音楽の職を失った彼らである。
演奏の技術や情熱は褪色しない。
しかし、発表の場を失くしていた。
アメリカのギタリスト、ライ・クーダーが彼らを集めて、そうだ、レコードを作ろうと。
ぃや、コンサートも開きたいと。
いっそ、ニューヨークに行きたいかー!
ああ、なんたる夢の跳躍だろう!
ヴィム・ベンダース監督は、個人に寄り添っている。
声高に、カストロ体制を批判も糾弾もしていない。
その品の良さこそ、今作の魅力だろう。
そっと添えるように現実だけを見せて、観客に気づかせる仕掛けだ。
あまりにも愛おしいので、じいさん&ばあさんなどと呼んで恐縮です。
彼らは、キューバで有名だったミュージシャン。
その歌声、演奏力はとんでもない!
至極単純に、猛烈にカッコイイ!
特にピアノマン、ルベーン(下の写真右)がイケメン過ぎて、ジジ専としては惚れるしかない。
映し出されるキューバの街は豪奢である。
それらが経年劣化しており、生きながら朽ち始めているように見える。
そのさまに、彼らが重なる冒頭から始まって。
彼の地の激動を生きた人々が、自らの来し方を語り、笑い、歌い、奏でる。
捨ててきた夢の回収に腰を上げてからの、瞳の輝きに至るまで。
なんと胸が躍ることか。
音楽と人生。
体も踊り出す、鋼のような音で劇場が満ちる。
世間から忘れられた人々が叶えようとしたものと、彼らに手を差し出した人々の思い。
立ち上がって拍手したかった。
喝采は銀幕を伝わって、天国の彼らにも届いていますように。
ブラボー!
(スタジオ盤とライブ盤のレコード・CDが出ています)
私事ながら、この上映の二か月後に幕を閉じた映画館、シネマパレで鑑賞した作品でした。
これにて(爆睡映画を除き)、シネマパレで観た映画記事の更新をすべて終了です。
最後はこの映画と決めていました。
あの銀幕に、ありがとうありがとう。
スクリーン(秋田・週末名画座シネマパレ/Twitter)←すでに最初のリンクは記載無しになっています。このリンクを貼るのも本日が最後です。
BUENA VISTA SOCIAL CLUB
1999年/ドイツ=アメリカ=フランス=キューバ
監督: ヴィム・ヴェンダース
※鑑賞の感想です。情報に誤りがございましたら御一報頂けましたら幸いです。