女性を拉致監禁。
人さらいと、攫(さら)われた女。
逃げるチャンスがあるように見えても、逃げられない。
それが監禁というもの。
最近も日本で同様の事件が明るみになったばかり。
猟奇ではない。
なのに薄ら寒く、エロティシズムに満ちている。
男が絶妙に異常者なので凄いな誰だろうと思った阿呆は誰だ。当方です。
これがテレンス・スタンプか!
イケメンで色気があり、知的で異常。
似たようなキャラクターを映画やドラマで多く観てきたけれど、たぶん、これが元ネタ。
サマンサ・エッガーが美しく強く、そして、か弱い。
監禁部屋の美術がゾクゾクするラグジュアリーさ!
監督は相当な腕前とお見受けしていたら、ウィリアム・ワイラーだ・・・と?
『ローマの休日』の6年後に『ベン・ハー』を撮ったワイラー監督じゃないか!
ほとんど2人の攻防であるのに、画面に緩みがなく息詰まる。
両者の素性や背景説明を最小限に留めているにもかかわらず、だ。
狂気は普通の顔をしている。
という見本のような設定であり、小道具の数々。
ああ、なんと濃密な時間だろう。
淡々と描かれるからこその緊迫。
この人、狂ってるなと思わせる説得力。
たとえば当方が犯罪を犯して、この映画を絶賛していたとなれば、ああ、なるほどねとなるのかもしれないけれども、こういう映画が好きだからといって異常ではない。
ただ、そこに落とし穴がある。
テレンス・スタンプの怪演を観ているうちに、うっかり犯人に寄り添ってしまい。
この男を憎めなくなっていた。
いわゆる、ストックホルム症候群だ。
この心理状態こそがおそらく異常であり、被支配であり、とても怖い。
WOWOW
The Collector
1965年・イギリス・アメリカ
監督: ウィリアム・ワイラー
原作: ジョン・ファウルズ
出演: テレンス・スタンプ、サマンサ・エッガー、モーリス・ダリモア、モナ・ウォッシュボーン
※※鑑賞の感想です。情報に誤りがございましたら御一報頂けましたら幸いです。