
『月に囚われた男』 MOON 2009年・イギリス
もう、こういう映画だなんて知らないから、気楽に観てしまったのだ。
ズルいじゃないか。
胸がキューンとなって、年も年なので心臓が心配になるじゃないか。
こんな孤独があるって、知らないから。
月面に一人で暮らす男がそこにいて、コンピュータだけが話し相手。
もうすぐ地球に帰還だと喜んでいる。
月面の色。
生活棟の真っ白。
閉ざされた空間に、壮大な背景が横たわる。
展開が緻密で、のめり込んでしまう。
果てしない寂寥感に、呑み込まれてしまう。
月面作業員のサム・ロックウェル、とにかく頑張る。
最後まで引き寄せられるのは構成の巧さもさることながら、この人の魅力が大きい。
七転八倒する様に、一気に感情移入してしまう。
平凡な男を演じて、格別。
コンピュータのガーディは、至極単純なロボット的な作りであるのに、温もりがある。人間くさい。
エンドロールで、その声はケヴィン・スペイシーだと知った。
失礼ながら、相変わらずハマれない俳優なのですけれど、観る度にうまくてイヤになる。
ラッセル・クロウのように、いつかハマりそうで怖い。
クリント・マンセルの音楽が最高!
この世界観の色を決定している旋律。
ダンカン・ジョーンズ監督、これが処女作とは驚く。
『ミッション:8ミニッツ』とも通じる、記憶の迷宮。
おそらく、ずっとデヴィッド・ボウイの息子と言われ続けるのだろうけれど、これほど才能豊かな2世も珍しい。
低予算でもアイデアで、ここまで出来るのだという気概も感じる。
そういえば、男の雇い主は近頃、話題の隣国であった。
そのチョイスにも、ちょっと唸ったり。
月であり、居住棟である。
密閉された空間である。
その中で翻弄される男は、水流に遊ばれる石ころのように、削られて流されて転がされて。
目が離せなくなる。
あっという間に映画の囚人。
それはとても、快感です。
WOWOW