$世界映画博-Dr.パルナサスの鏡

2009年・イギリス・カナダ 


ヒース・レジャーが死んでしまった。

主演男優が死んでしまった。
撮影途中である。
まだ、たくさんシーンが残っている。
製作を諦めるのか、続けるのか。
続けたいのだ、どうしよう。

たとえば、ブルース・リーの『死亡遊戯』ではボディ・ダブル(吹き替え)を使った。
ブルース・リーの息子ブランドン・リーの『クロウ 飛翔伝説』では、CGが使われた。
両作とも、撮影途中で亡くなった主演本人が演じているという体である。


今作の取った方法は、まったく逆だ。

幻想の物語。
現実と空想を行ったり来たり。
だから、あちらの世界は他の俳優が演じてしまっても、いいではないかという苦肉の策。
しかし、このアイデアが、この映画の意味を膨らませた。

ヒース・レジャーの穴を埋めようと集結した、3人の親友。
この俳優たちが、映画の色を鮮やかに、奥行き深くしてくれている。

ヒース・レジャーが全編を勤めていたら、どういう作品になったか。
そういう夢物語は置いておいて、3人の彩りが加わったこの作品が、ストーリーにおいても製作背景においても、冒険譚になっているのだ。

面白いのか、つまらないのか、わからない。
危なっかしくて、ハラハラとする。
なのに観終わった後、あれ?これ、好きだと思う。

だからちょっと、愛情が増したかもしれない。


映像はゴシックで、キラキラで、誰かの夢に迷い込んだよう。
ストーリーはドタバタで、悪魔との契約で、めちゃくちゃで、恋とか人生で、映画丸ごと1本が、大道芸のキャラバンのよう。

美術は唸るほど美麗。
衣装も素晴らしい。殊に布たっぷりのドレスには、ヨダレが出る。

俳優は大仰で、それでいて繊細な演技。
ダリの描いた世界のような、マグリットの生んだ天地のような、童話のような悪夢のような、そのグラフィックの美しさ。

まさに、テリー・ギリアムなワールド!


そのテリー・ギリアム監督は、『未来世紀ブラジル』『12モンキーズ』を世に送り出してくれた感謝から、超絶に贔屓しているので、完全に応援してしまう勢い。
以前観たドキュメンタリーでも、監督は金の工面に頭を痛めていた。
今回も大いに、悩んだことだろう。
甲斐はあった、と思う。思いませんか?


ヒースの親友の3人。
ジョニー・デップはヒースを意識しながらも、いつもながらのジョニー流。
登場の背中で、もうジョニーだとわかる。
色気のあるヘルプぶり。

ジュード・ロウは、ヒースを飛び越えて、ジョニー・デップに寄っていた。
しかし案外、器用で驚く。

コリン・ファレル!今作で一番の驚き!
この人、上手いのかもしれない。
ヒース・レジャーの色味をきちんと引き継いでいる。
細かい役作りで、それでいて大胆。
ただ惜しむらくは、眉毛だ。


クリストファー・プラマーは良すぎて、泣ける。
トム・ウェイツはずっと、マルコヴィッチもアクが抜けて痩せたなあと思って見ていた。すみません。

新スパイダーマンのアンドリュー・ガーフィールド、芝居ができるという意味で、若手では飛び抜けている印象。
といっても、そんなに若手を知らない。すみません。


そして、ヒース・レジャー。
惜しんでも惜しみきれない。
あのセンシティブな芝居を、もっと観たかった。
華奢だからこそ、死期が早かったのかとも思う。

今作で、ヒースはほとんど、現実の世界にだけ生きていた。
幻想の世界も、もっと見せてあげたかった。
今の、そして、これからの映画界にこの人がいないということが、とてつもない損失に思える。

鏡の向こうに、あの世というものがあるのなら、暖かい場所にヒースが居てくれますように。
可愛らしくて愛が躍るエンドロールを見つめながら、そんなことを願ったり。

ガラにも無くて、すみません。



『Dr.パルナサスの鏡』 THE IMAGINARIUM OF DOCTOR PARNASSUS

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