ガンダム外伝 戦場の羽 01-2 | Makomakoのブログ

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― 戦闘ポッド《ボール》出撃! マコト軍曹の初陣 ―

 

宇宙世紀0079年1月 ジオン公国軍により実行された《ブリティッシュ作戦》は連邦軍司令部が存在するジャブローにマコトが住んでいたスペースコロニーを落下させる事で連邦軍の指揮系統を壊滅させるものだったが連邦軍の必死の抵抗により落下させたコロニーの軌道がそれ、オーストラリアのシドニーに落下してしまった。ジャブローこそ無事であったもののシドニーとその近郊は消滅し、コロニー落下時の衝撃により自然災害が各地で勃発し人口も数十憶失い、地球の自然環境にもかなりのダメージを被った。

それによりマコト・キサラギはコロニーにある自宅のアパート、そして職場の仲間たち、シドニーに新婚旅行に行っていた従妹夫婦、多くの物を失ってしまった。そしてマコト達の乗っていたシャトルは行き先のスペースコロニーが消滅し、他のスペースコロニーも戦場になったままであり、地球に引き返すことになった。しかし地上の宇宙港もまた瓦礫の撤去や修理に追われ、滑走路を修理し、着陸できるようになるまで時間がかかっていた。

その間、マコト達シャトルの乗客や乗組員は宇宙ステーション内のホテルにて一室を与えられて生活する。ステーション内では空港内にあるような立派なホテルが一つ、それと飲食店や娯楽施設、ホームセンター、スポーツセンターがあり、普通に生活が出来た。ここの職員たちもいつも利用しているようである。朝晩の食事はホテル内で配られ、宿泊と食事は最低限、保証されていた。乗客たちは朝起きて体をほぐし、施設間の道路でウォーキングやジョギングをしたり、部屋で寝たりテレビなどを観たり、スポーツセンターで汗を流したりといった生活で体の調子を整えながらシャトルが発進できる日々を待つ。生活自体は何不自由なくできていて恵まれていたが行き先が消滅し、今までの生活、仲間たちを一瞬にして奪われてしまった。乗客の中にはそのショックで体調不良になる方も出てくる。マコト自身はそんな不安や怒り、悲しみが入り交じった感情を携帯端末でナデシコの歌声を聴いたり、トレーニングで汗を流したりして紛らわせることで落ち着かせていた。 

ある日、スポーツセンターで汗を流し、ロビーのベンチで休憩を取っている時の事だった。近くに座っている、幼稚園に通っているような女の子とその母親の会話が耳に入る。一緒にシャトルに乗っていた親子連れだ。スポーツセンターで運動でもして体をほぐしていたのだろう。

「おかあさん、まだおうちに帰らないの?パパに会いたい。」

娘のそんな声に娘を抱き泣き崩れる母親。おそらくマコトと同様、帰省から帰る所で父親は一人、行き先のサイド2で待っていたのだろう。ならば俺の会社同様・・・そう考えるとこちらまで泣けてきた。汗を拭くのと一緒に涙も拭き取る。それでも止まらない。しばらくして涙が収まったところでウエストポーチをまさぐるマコト。母親が泣き止むのを待ってから、どうぞ、と一言言ってハンカチを差し出す。そして飛行機の調子が悪いみたい。しばらく会えないかもしれないけど、待っていようね、と娘の方に声をかける。

「ありがとうございます。お優しいのですね。」

と母親からお礼を言われた。別に優しいとまでは思ってなかったが、共に過ごす仲間が泣いているのだ。放ってもおけない。だが今、できるのはハンカチを渡す、話す、このくらいだ。

「お互い様ですから。どこかで無事でいるといいですね。」

そう返事をするマコト。その言葉は自分にも言い聞かせたくて、言った。脱出でもして生きてくれていれば、と思うが、あの夢を考えるとそれも叶わないだろうな、という気もする。職場で助けてもらった借りも返す機会がなくなってしまったな。ジオンのせいだ。この親子に父親を返してやってくれよ!俺の従妹を返せ!職場を返せ!失った自然を元に戻しやがれ!と憎しみを募らせていった。

その日からマコトはその二人と話をし、一緒に食事をするようになった。

普段は別々に生活していて食事の時間が合わない時もあったが、会うと娘の方から声をかけてきて一緒に席に座りご飯を食べるようになっていた。

そんな中、ルウム戦役と呼ばれる戦いがあった。連邦とジオンがサイド5のスペースコロニー付近の宇宙空間で大規模な艦隊戦を行っていた。マコトたちが寝泊まりしている連邦軍基地からも基地の守備隊に5隻ほど残して他は全艦発進、マゼラン級戦艦、サラミス級巡洋艦が多数参戦し皆、手を振って見送った。

しかし、帰還する艦はなかった。艦隊の規模こそ大きかった連邦軍であったがジオン軍が誇る新兵器モビルスーツ《ザク》の前に敗北する。

モビルスーツ《ザク》はジオン軍により開発された人型ロボット兵器で戦闘機のように人間が操縦して操作する。身長17.5mと大きさも大型の戦闘機くらい。その眼はモノアイと呼ばれ、桜色に点灯する。武器は赤熱する手斧《ヒートホーク》にマシンガンなど。戦闘機よりも小回りが利く上、戦闘機より頑丈な耐久力を持つ。更に腕を動かし360°攻撃できるため宇宙に於いては既存のどの兵器よりも有用だった。接近を許してしまったが最後、連邦軍の戦艦や航空機は為す術なく撃沈されてしまった。

連邦軍は敗北し、数多くの兵士を失っていた。そして、マコト達シャトルの乗客に連邦軍から個人面談で、お願いをされる。内容は軍への入隊をしないか?というものだった。戦争で失った兵士の補充目的であることは明白だ。連邦軍は兵士になれそうな体格の人間にのみ声をかけていたが乗客は全員が断っていた。元々、兵士になれそうな人が少なかったし、数少ない大人の男達もとても戦争はできないと断っていた。

 

ただ一人、マコト・キサラギを除いては。

 

アイツらをぶっ殺し、自然をぶっ壊したジオンを許さねえ。ケジメ付けさせる!仕事仲間たちやかわいい従妹夫婦も殺しやがって!あの母子を悲しませやがって!もし、コロニー落としをまたやって、それが日本に落ちたら、両親も、ケイもナデシコの二人も・・・させん。死んでも護る!結婚もできず、大事な家族を守っていく義務もない俺には、ここで盾となるのが似合っているのだろう。そう考え、マコトは志願した。そしてそんな彼に任されたのがRB―79《ボール初期型》のパイロットだった。

マコトも会社で使っていた宇宙作業用ポッド《SP―W003》に武装や装甲等を追加し戦闘用に改装したもので、MSや戦闘機を操縦できない者にも扱えた。ザクと接近戦になれば勝ち目は薄いが遠距離砲撃での不意打ちであれば充分勝算はある。マコトは会社での操縦経験があったことからいきなりボールのパイロットに抜擢され、軍曹の階級が与えられた。民間人あがりがいきなりパイロットは異例の事らしい。

次の日、乗ってきたシャトルはマコト以外の乗客と乗員を乗せて地球に降りていく。マコトは同じ隊のサップ曹長とその発進を見送りに行き、あの母子を握手で見送った。

「キサラギさん、ご無事で。」「お兄ちゃん、また一緒に遊ぼうね。絶対だよ。」

うれしい言葉もかけていただいた。親子から一緒に地球に帰りませんか?と勧められもしたし、「あの娘らと帰ってもいいんだぜ?父親のいないあの子のエスコート役だっているだろう?」と仲間のサップ曹長から言われもしたが、

それでもここで守って戦うことを、選んだ。ここで立ち去るのは自分から逃げるような気がした。

そして連邦軍の軍服を纏いRB―79《ボール初期型》の操縦訓練を行う。いつジオン公国軍が攻めて来るかもわからない状況下だったので、入隊の式やら歓迎会も簡単に済まされ、すぐに訓練だった。戦うための一兵士としての体力をつける筋力トレーニングに母艦内での暮らし、それにボールの操縦訓練。趣味をやっている暇はほぼ、ない。ボールも基本操作は会社のと同じだが、火器管制や編隊を組む、母艦からの発進、着艦など初めての経験で不慣れなことも多い。一通り動かせるようになるまで数日を要した。相当、筋がいいとは言われたものの、まだザクとやり合うには足りない。もっと手足のように使えねば!マコトは習熟することに集中する。

休憩時間には一緒に訓練する仲間たちとも談笑するが、頭の中は訓練の事で殆どいっぱいだった。ただ、仲間との連携も大事なのはマコトにもわかるので仲良くしていた方がいいからと、仲間との話にも付き合う。巡洋艦勤務のミリーちゃんが可愛いとか以前の女がどうのこうのとかそういう、マコトにとってはあまり興味がないような話にも適当に合わせておいた。マコトは、ユイちゃんの可愛さには勝てんよ、と頭では思うものの、色っぽいよね、などと話を合わす。訓練が終わりへとへとになって眠る毎日。趣味に回せる自分の自由時間は睡眠前のちょっとした時間のみ。その間にナデシコ・チャンネルというナデシコの二人がパーソナリティを務める配信番組にメール一通送るのがやっとだった。

それから数週間が過ぎ、やっとなじんできたころ、この基地に対して侵攻してくるジオン軍の艦隊を偵察機が発見した。規模はムサイ級巡洋艦九隻。勿論、ザクが搭載されているに違いない。迎撃に残存する艦隊と艦載機全てが出撃した。いよいよ初陣、緊張する。

空母から発進した戦闘機の部隊とサラミス級巡洋艦から発進したボールの部隊とで挟撃するこの作戦は、狙われた方が囮で運よく敵艦にロックオンできたらありったけのミサイルをぶっ放す、という作戦だった。

敵の新兵器・・・モビルスーツ《ザク》の恐るべき性能を考えれば、こんな作業ポッドに武装と装甲付け足しただけの兵器、ボールでまともに戦えるわけがない。ならば敵の母艦をミサイルで叩き、終わらせる。そんな作戦だよな。待機中のブリーフィングルームでマコトが作戦の内容について考えていると艦内放送が入る。

「艦長のテムズ少佐から訓示があります。」とアナウンスされ、各員が耳を傾ける。

「この艦の艦長、テムズだ。ジオンが衛星軌道にまで侵攻してくる事態となり、ここが最終防衛ラインとなった。この作戦の成否に明日の連邦軍、そして地球の未来がかかっているだろう。ひいては君等の大事な人を守ることにも繋がるだろう。我々の基地に残されている残存艦は巡洋艦4隻と空母一隻、それに対し敵の戦力は巡洋艦9隻、相手はほぼ倍の戦力だ。苦しい戦いを強いられるが無事、任務を全うされんことを祈る。我らに、ルウムで散っていった英霊達の加護があらんことを」

艦長からのありがたい訓示が流れる。続いて「ボール搭乗員は速やかにコックピットへお願いします。」と若い女性の声のアナウンスが続く。

正直、勝てる見込みの低い戦いではある。自分もここで終わりになるかもしれない。だが、あんなスペースコロニーなんてものをゴロゴロ落とされちゃたまったものじゃない。さすがにジオンも懲りてやらないかもしれないが今でさえ地球環境の多くがぶっ壊されて人も生き物も大勢死んだ。多くの生態系に悪影響が出ただろうし、地球の生き物に恨みでもあるのか?しかも、俺の・・・とマコトがジオンに憤りを感じ、考え込んでいると肩を叩かれた。

「マコト軍曹、搭乗タイムだ、ぼっとしているなよ、青二才。」 

マコトは上官であるライダス少尉に声を掛けられる。

 

ライダス少尉・・・この基地のエース。基地の防衛とボール部隊育成の任務を受けていたためにルウム戦役に参加していなかったが、この基地のトップエースだった大隊長直々に鍛え上げられたエースパイロットだ。ここのボール部隊全ての指揮を執る中隊長でもある。ルウム戦役で大隊長が戦死されてからは少尉殿がこの基地で一番のパイロットだと仲間の先輩達から教えていただいた。実際、模擬戦の時には部下全員のボールを相手に立ち回り、エースの実力を教えられた。その時には「お前ら、一発くらい当てて見せろよ。」と挑発的にいわれたりもした。マコトは意地になり、十一対一の状況ではあったがなんとか一発だけ当てて見せた。

 

・・・はい、隊長、考え過ぎる癖は気を付けます。マコトはそう返事しようとしたがライダス隊長は既に搭乗口に向かって先に歩いていたので、その後を慌てて追う。各パイロットはそんな二人のやり取りをチラッと見たり、肩を叩いたりして通り過ぎ、ボールに乗り込む。

「マコト、グッドラック!」「隊長、グッドラック!」

搭乗口前にて少尉が親指を立ててサムズアップを送ってくださったのでマコトも返す。

搭乗口を抜け、すぐにコックピットに座り計器類のチェックを始める。元々、何年も使っていた作業用ポッドをベースに作られた機体であるし、訓練でしっかり扱いも学んでいたから手慣れたものだ。今回は対艦用のミサイルで爆装しているからその辺のチェックも手早く済ませる。いよいよ初陣か、と考えると緊張してきた。ほぐすために深呼吸をして息を整える。

そんなとき、隣の機体の方、同じ小隊のサップ曹長から通信が入った。

「そろそろだな、怖くないか?」声で分かるが言っている本人の方が、あからさまに怯えていた。今日までしか生きられないかも?と考えれば無理もない。きっと戦争が起こるなんて思わずに金稼ぎで入ったんだろうな。マコトはそう考え、話に付き合う。

「ま、悪名高いザク様の守る艦隊に対艦攻撃仕掛けようってんだ。怖いっちゃ、怖いです。だからと言って放ってもおけない。生き残れる可能性もゼロではないし。ジオンの馬鹿野郎どもはコロニー落としで受ける被害の深刻さをわかっちゃいない。俺の従妹もシドニーに新婚旅行行っている時にやられましたよ。それに自分は落とされたコロニーに住んでいましたからね。会社の仲間も殺しやがって、絶対に許さない。刺し違えてでも落とし前つけさせてやります。」

「そいつはお悔やみ申し上げるがちょっと暑苦しいぜ。戦場で考え過ぎると死ぬぞ。熱くなりすぎて手元狂わないようにな。キープクールだ。」

「ちょっと興奮しすぎですか?ありがとうございます。」

マコトがサップと話していると隊長から一言、言われた。戦いに備えて冷静になれ、ということだろう。確かにあまり興奮しても力み過ぎていい結果にはならないかもしれない。そう考えていたら、別の通信が入る。オペレーターの女の子だ。

「気持ち、わかるよ。でも今はしっかり作戦決めて帰ろう!みんな、無事に帰ったら良いことしてあげる。」

モニターに表示された顔が唇に小指をなぞらせてウインクをかけてきた。こういう気遣いはちょっと嬉しいね。この人もコロニー落としで大事な誰かでも失ったのかもしれない。マコトがそう考えていると通信を見聞いた兵士たちから歓声が沸いた。

こいつは頑張らなきゃな、ミリーちゃんの唇はいただくぜ、等々様々な通信が入る。

あの女性が噂のミリーか。みんな、好きなんだな。差し詰め艦のアイドルって所か。

「さて、そろそろ作戦開始よ!十時の方向に敵艦隊発見!各機発進、準備できてる?」

ミリーと呼ばれる女性オペレーターのその言葉とともに皆、戦士の顔になる。

「3・2・1・射出!」

勢いよくボールがサラミス級巡洋艦から放たれる!とほぼ同時に胃の中のもの逆流して吐きそうな気分になる。くっ!酔いとGに耐えつつ姿勢制御を試みる。巡洋艦に金具で止めてあるだけのお粗末な係留から放たれたGは格別だ。

そうこうしているうちに体制を整えたボール各機は編隊を組み、一路、敵ムサイ艦隊を目指す。ジオン公国軍のムサイ艦隊自ら撒いたのか、それとも以前の戦闘で撒かれたものかは分からないがレーダー通信電波を阻害するミノフスキー粒子が濃いのが功を奏した。気付かれちゃいない。デブリや隕石の間をすり抜けながら密かにムサイ艦隊に狙いを定めた。

みれば近くの宙域で爆発の光が見える。別動隊のサラミス2隻と空母対ムサイ艦隊との戦闘が開始されている。別動隊よりもジオンのムサイ艦隊の方がはるかに多い。正面からまともに戦って勝てる相手ではない。何分、別動隊が持ちこたえられるか?といった状況だった。友軍の被害が増えないよう、手早く敵艦を仕留めたいところだ。もうそろそろ、ロックオンして敵の艦隊を攻撃できる筈・・・通常ならばとっくにロックオン=攻撃できる距離にあるがレーダーを阻害するミノフスキー粒子の中にいて未だ、撃てない。あと少しだ、もう少しで粒子の海から出られる!そう考えていると、先頭を行くライダス少尉から通信が入る。

「粒子濃度低下。ロックオンできるぞ。各機、まんべんなく、ぶっ叩けぇぇ!」

先頭の、あの位置でやっとか!ボール各機はライダス機に続いて次々とミノフスキー粒子の海をぬける。ピッ、ピッ、ピッ、ポーーーー、ロックオンのシグナルが各機に鳴り響き、ボールの腕に取り付けられた対艦ミサイルを次々と発射した。ムサイ艦隊にミサイルの雨が降り注ぐ!ムサイのブリッジは急に現れたミサイルに騒然となった!

「ミサイル接近!」「回避!対空監視、どこを見ていた!」ムサイの艦内に怒声が響く!

対艦ミサイルなので大型で破壊力抜群のミサイルがボール一機当たり十二発。それが十二機分だから144発のミサイルが飛んで行ったことになる。そのほとんどがムサイや護衛のザクに直撃し、護衛のザクは一機残して撃破され、ムサイの内七隻が艦橋をはじめ各部に直撃、轟沈した。発艦が間に合わなかったザクも艦とともに沈む。比較的被弾が少なく済んだ残りのムサイ二隻も砲塔や胴体に被弾してかなりのダメージを負っていた。満身創痍というに相応しい状態で、いつ沈んでもおかしくない。ムサイを防衛していたザクのうち唯一行動可能なザクも右腕を失っていて、ヒートホークと呼ばれるザクが扱う手斧以外の武装はなくなっている。

「ヒャッホー!」「よし、やったぜ!」「はは、ざまぁない!」「ごちそうさま」

誰が声にしたかそんな声がボールの通信を介し、マコトの耳に聞こえた。

「やりましたね!でもまだ油断は禁物みたいですよ。」

マコトは声の主達にそう答えた。しかし内心、マコトも勝利を確信していた。ジオンの部隊に対し、ざまあないぜ、コロニーなんか落として恨みを買うからこうなるんだよ!同胞ともいえるサイド2に住む人たちを大量虐殺し、更に地球に住む者たちも大勢ぶっ殺した悪逆な鬼畜の輩よ、ここが年貢の納め時だ!と昔見た時代劇のセリフを真似てつぶやいてみる。しかし、まだ終わっていない。見れば片腕を失った手負いのザクが一機、爆発を背景に、手斧をかざして迫ってきていた。まだ敵の抵抗がある。戦いは終わってはいないのだ。

「一人でも多く、道連れにしてやる。部下の仇だ!ダリル、参る!ジークジオン!」

ザクは叫んで己を奮い立たせ、ボールの180mm砲の砲弾の弾幕をかわしながら突撃する。そして手近なボールに肉薄し、飛び蹴りを見舞う。蹴られたボールは勢い余って味方のボールに衝突、二機のボールは周りのデブリに衝突して爆散、あっという間にボール二機を仕留めてしまった。ベテランのザクの動きに多くのボール乗り達が戦慄を覚える。

「そんなに俺の仲間を殺したいか!!まだ、殺すなら、こちらも!」

叫ぶマコト軍曹、そしてライダス少尉のボールから放たれた砲弾が蹴り終えて体制を立て直しつつあったザクの頭とコックピットを撃ち抜く!緑の巨人は火だるまと化した。

「ダリア・・・」ザクのパイロットはそう叫び散っていく。

「はあ、はあ、やったぜ!」撃墜を確認し、緊張が解けたマコトは荒い息を整えた。

そして残りのムサイに対しテムズ少佐らのサラミス級巡洋艦2隻が突撃する!

「ライダス、でかした!トドメは任せろ!」

サラミス級の一斉射撃が残るムサイを撃沈、ムサイは宇宙の塵と化した。

「よし、勝った!残存を確認、降伏を呼びかける」

艦長はそう言い、投降を呼びかけるためミリーに通信回線を開かせる。如何にザクと言えども母艦なしではその後の空気や推進剤が続くまい。生き残るには投降して捕虜になるしかないぜ。そう考えて戦闘機と交戦中のザクに呼びかける艦長。

「ジオンに告ぐ、貴公らの母艦は沈んだ。降伏せよ。酸素欠乏したいのか?繰り返す、ムサイは全滅した。武器を捨て、降伏せよ。おとなしく投降すれば悪いようにはしない。南極条約に従った待遇を約束する。それとも、わしらを殺して一緒に銀河漂流してみたいか?」

降伏の呼びかけにザクのパイロットは素直に従うようだ。ザクは武装解除して鹵獲され空母に収納した。ボールを積んでいたテムズ少佐らのサラミス級2隻がボールを着艦させるためにライダス達に合流する。

「みんな、お疲れ様。戦闘終了です。帰還してください。」

「了解した。任務完了。これより帰還する。」

ミリーからの通信にライダス少尉がそう答える。各機が所定の着艦位置に移動し着艦フックをかけ、サラミス級巡洋艦に収容された。

「ふふ、皆さんお疲れ様。お約束通りサービスさせていただきますね。」

そのミリーの言葉に歓声を上げる野郎共。おいおい、マジか・・・そんな軽々しく言っていいのか?まさか本当に全員サービスぅ?ホントにいいのか?・・・とマコトは一人、呟く。

「勝ち戦は気持ちがいいものだ。勝利の美酒といこう。ミリーちゃん、旨い酒を頼む。」

ライダス少尉が着艦を終えたボールの中でそう言った。もしかして、単に飲み会パーティー?新米の俺が知らなかっただけ?逆に何考えていたとか言われるかな?と思うマコトだった。