【65点】監督:関根光才

母性愛なのか?過去の救済なのか?
「認知症患者」「児童虐待」いろいろテーマが多くて、肝心の母と子の関係が薄まるようで、もったいない。


原作:北國浩二、小説「嘘」。未読。


絵本作家の千紗子 (杏) は、長年にわたって絶縁状態となっていた父・孝蔵 (奥田瑛二) が認知症を発症したため、仕方なく故郷へ戻って介護をすることになる。
他人のような父との同居に辟易する日々を過ごしていたある日、彼女は事故で記憶を失った少年 (中須翔真) を助ける。
その少年の身体に虐待の痕跡を見つけた千紗子は少年を守るため、自分が母だと嘘をついて一緒に暮らし始める。
認知症が進む父と3人で、最初はぎこちないながらも次第に心を通わせていく千紗子たちだった。



主人公と少年の出会いが不自然というか、共感できません。
だって、飲酒運転で少年轢いちゃって、それで虐待の傷跡があるからって助けるって、何それ?
少年轢いたのは、女親友だからと言っても、助手席にいたんだからダメですよ。
何で、まず警察に行かないのか?冒頭からモヤモヤします。



、絵本作家の里谷千紗子。
まず、デカい (175cm)。佐津川愛美 (152cm) と並んで立つシーン、その体格差にビックリしました。
父との確執、過去に自分の息子を事故死させた無念とやるせなさ、よく表現出来ています。
色気を完全に封印したのは痛し痒しですが、作品としては正解かな。
しかし、少年を守るために、自分が母親だと嘘をつくの思考がわかりません。(伝わりませんが正しい感想、脚本の問題。)


奥田瑛二、千紗子の父・里谷孝蔵。
認知症の演技 (食べ散らかす、わめく、失禁する…)、上手いのですが、貧困と直結しないので、微妙に普通です。
ラストの裁判のシーン、フェードアウトして登場しないのはなぜ?


中須翔真、少年 (犬養洋一/里谷拓海)。
美少年、今後どうなっていくのか?楽しみです。


佐津川愛美、千紗子の親友・野々村久江。
狡さと弱さ、本当に普通の女性に見えます。(褒めていますし、ファンです。)


酒向芳、医師・亀田義和。
「認知症」に関しての見解、腑に落ちました。最後まで良い人なのには、軽い驚きです。(偏見です。)


安藤政信、少年の継父・犬養安雄。
悪い奴ですが、死ぬ直前の最後のセリフが気になります。悪に徹するべきですよ。
キッズ・リターン」(1996年、監督:北野武) の世代なので、こういう役はあまり見たくありません。

木竜麻生、少年の実母。
男性依存の言動、怯え、罪悪感、居直り、短い出演シーンですが一番、刺さりました。




千紗子がNPOの団体職員に扮装して、少年の継父と実母に調査として会うシーン、不自然です。
千紗子は絵本作家ですよ、いくら少年のためとはいえ、こんなことやりますか?
ただ、ここで顔を見られないと、話が後半につながらないし、原作通りなのかも知れませんが、バレバレですよ。



(以下ネタバレ)





認知症の父親との確執も和らぎ、絵本作家としても売れて顔出しの雑誌に出る。
(この時点で、少年の継父にわかっちゃうんだろうな、ってその通りになる。)

突き止めてきた暴力的な継父に殴られて、千紗子を守るために、少年は継父を刺殺する。
千紗子は、刃物を取り上げ、継父をさらに刺す。
(このシーン、少年に刺された継父が明らかに死んでから、千紗子が刺すのですが、どっちが仕留めたのかあいまいでもよかったかな…)



そして裁判。
千紗子は殺人罪で問われるが、最後の証人として少年が登場する。
少年は、当初から記憶は喪失していなくて本名を名乗る。(これが、かくしごと)
そして継父を殺したのは自分で、母親は千紗子だと発言する。



流れは悪くはないのですが、映画的な意外性がほしかった。

原作では、裁判後のアナザーストーリーがあるようです。