【80点】2014年4月。黒澤和子、文春新書


「黒澤明」ファンとしては、たまらない一冊です。
あの黒澤明先生が、好きな (認める) 映画は何なのか?



黒澤明のピリリと効いた寸評と、娘・黒澤和子のほのぼの回想が、バランス良く、楽しく読めます。

真摯に映画を楽しみ、素直な巨匠の感想です。
上から目線が全くの皆無で、実に謙虚な感想なのです。

*は、私が観た作品です。

その中から、お気に入りの黒澤明寸評を、ピックアップしました。

では、

1.1919年〜1950年の映画 (28本)
散り行く花/カリガリ博士/ドクトル・マブゼ/黄金狂時代/アッシャー家の末裔/アンダルシアの犬/モロッコ/会議は踊る/三文オペラ/未完成交響楽/影なき男/隣の八重ちゃん/丹下左膳餘話 百萬兩の壺/赤西蠣太/大いなる幻影/ステラ・ダラス/綴方教室/土/ニノチカ/イワン雷帝/荒野の決闘/素晴らしき哉、人生!/三つ数えろ/自転車泥棒/青い山脈/


*第三の男「複雑なストーリーをきちっと映画にしている。キャメラは本当に素晴らしくてね。実にキャメラワークの勉強になったし、上等な作品だよ。


晩春/オルフェ/

2.1951年〜1970年の映画 (34本)
カルメン故郷に帰る/欲望という名の電車/嘆きのテレーズ/西鶴一代女/イタリア旅行/*ゴジラ


*道「フェリーニの美術はステキだよね。ああいう独特な才能の人はもういないね。何か映像の中にものすごい存在感があって強烈な衝撃があるんだ。何度も会ったんだけどテレ屋で全然映画の話、してくれないの。」


浮雲/大地のうた/足ながおじさん/誇り高き男/


*幕末太陽傳「テンポもいいし、ズバズバッとしていてね。落語の「居残り佐平次」などをアレンジして作っているけど、とても良く出来ている。この人は喜劇が得意だったからね、そういう人はやっぱり腕が違うよね。」


若き獅子たち/いとこ同志/大人は判ってくれない/*勝手にしやがれ*ベン・ハー/おとうと/かくも長い不在/素晴らしい風船旅行/*太陽がいっぱい/地下鉄のザジ/去年マリエンバートで/何がジェーンに起こったか?/*アラビアのロレンス*地下室のメロディー


*鳥「ヒッチコックの映画は、このミステリーは少し辻褄が合わないっていうような所もあるんだけれど、おもしろければ良いというのも映画の一つだと思うしね。あの沢山の鳥怖いよ、本当にどうやって撮ったんだろう」


赤い砂漠/バージニア・ウルフなんてこわくない/*俺たちに明日はない*夜の大捜査線/遥かなる戦場/*真夜中のカーボーイ


*M★A★S★H「ガチャガチャしてるんだけど、シナリオはしっかりしているし、ブラックコメディなんだけど良い出来でね。後で聞いたんだけど原作の人、外科医なんだって。だから具体的でおもしろいんだよ。これも一種の反戦映画だよね。」


3.1971年〜1997年の映画 (38本)



*ジョニーは戦場に行った「反戦の映画っていうのは沢山あるけども、戦闘シーンが出てくるととてもムズカしくてね。ついドンドンパチパチやってるとカッコ良く思えてしまうところがあるでしょ。だからこれこそ本当の反戦映画だと思う。」


*フレンチ・コネクション/惑星ソラリス/ミツバチのささやき/


*ジャッカルの日/「一つ一つ暗殺の準備を進めていく主人公を、すごく冷静に見て追っていく手法なんだけど、贅肉が無いっていうのか、簡潔でドキドキしてくるんだよ、そのカンジがね。」


家族の肖像/*ゴッドファーザーPARTⅡ*サンダカン八番娼館 望郷


*カッコーの巣の上で/「もうとっても上手な役者が沢山出ていてね、それぞれの人間がどんなつらい事があって、あんな風におかしくなっているのかっていう所を、実にうまく表現してて感心しちゃうヨ。あの看護婦長もスゴイね!」


旅芸人の記録/*バリー・リンドン/大地の子守歌/*アニー・ホール/機械じかけのピアノのための未完成の戯曲/父 パードレ・パドローネ/


*グロリア「なかなか彼の作品が日本に入って来ないんで、どうしたのかと思っていたんだけど、やっぱりすごい才能だったね。ジーナ・ローランズ、名演技だと思う。」


*遥かなる山の呼び声/トラヴィアータ 1985・椿姫/ファニーとアレクサンデル/*フィッツカラルド*キング・オブ・コメディ


*戦場のメリークリスマス「大島君とは、これからの日本映画を頼むと言ってさ、何度か食事をしたんだ。皆は短気だとか色々言うけど、スジの通ったマジメな人。この作品は、配役もとてもおもしろいし、やっぱり力のある作家だよね。」


*キリング・フィールド/ストレンジャー・ザン・パラダイス/冬冬の夏休み/パリ、テキサス/*刑事ジョン・ブック 目撃者/バウンティフルへの旅/パパは、出張中!/ザ・デッド「ダブリン市民」より/友だちのうちはどこ?/*バグダッド・カフェ/八月の鯨/旅立ちの時/


*となりのトトロ「とても感激してね、ネコバスなんてすごく気に入った。だって思いつかないでしょ。『魔女の宅急便』は泣いちゃてね。映画に来たらうれしいって才能かアニメに皆行っちゃってるから、映画界もがんばらないとね。」


あ・うん/美しき諍い女/


*HANA‐BI「『その男、凶暴につき』を観た時から、才能があると思ったね。この作品もズカズカと踏み込んで行く思いっきりの良い所もあるし、楽しめたよ。出演してる一人一人の存在感がしっかり出ている所が素晴らしいね。」



★洋画80本、邦画20本。



日本映画界に対して、

先達へのリスペクト、

同期へのエール、

後輩への思いやり、

一つ一つのお言葉が素晴らしい。 


*私、32本観ていますが、残りはこれから観ようと思います。(全部は無理ですが……)

やっぱ、黒澤明、好きですね!