【85点】監督:白石和彌

苦悩する、失望する、怒る、草彅剛の表情の変化が凄い。
白石監督、初時代劇だそうで、得意の殺戮を抑えて大正解。



古典落語『柳田格之進』をベースにした時代劇映画。この落語、知りませんでした。

身に覚えのない罪をきせられたうえに妻も失い、故郷の彦根藩を追われた浪人の柳田格之進 (草彅剛) は、娘のお絹 (清原果耶) とふたり、江戸の貧乏長屋で暮らしていた。
実直な格之進は、かねて嗜む囲碁にもその人柄が表れ、嘘偽りない勝負を心がけている。

そんなある日、旧知の藩士からかつての冤罪事件の真相を知らされた格之進とお絹は、復讐を決意する。




冤罪による浪人・柳田格之進。父と娘の二人暮らし。
前半の格之進と萬屋源兵衛の囲碁を通じての交流、自然との調和映像が美しい。
あと、中半での夜の吉原・門構えのショット、息を飲むほどの色合いが美しい

屋敷や町のセット、大道具・小道具、丁寧にお金がかかっている感じがします。
(テレビの時代劇より、ワンランク上のグレード感があり、お得な気分です。)


囲碁のシーンが随所に出てきます。
全く囲碁がわからない私ですが、不思議と飽きない。



草彅剛、浪人の柳田格之進。
前半の身ぎれいなちょんまげ姿から、後半の髭ずら、顔が (容姿が) 別人です。
活舌が良く、セリフが聞き取りやすいです。情感もバッチリ。
立ち回りも素早く、見事です。
主演男優賞にノミネートします。


清原果耶、柳田の一人娘・お絹。
清らかさ、武士の娘としての気高さ、文句なしの美しさです。



國村隼、萬屋の亭主・萬屋源兵衛。
囲碁好きで、柳田に惚れこむ姿が、ある意味いじらしい。(BLかよ。)
出番が多く、助演というより準主役かな。



中川大志、萬屋の手代・弥吉。
誠実一筋、予想通りお絹に惚れます。二枚目すぎない?(ひがみです。)



斎藤工、彦根藩を追われた浪人・柴田兵庫。
柳田を冤罪に追い込んだワルで、囲碁の腕前も、剣の腕前もある、ラスボス。(というかワルはこいつだけ。)
本当にワルい奴の言動と行動でしたが、最後の最後でワルにも言い分がある…微妙。



奥野瑛太、彦根藩で柳田の旧知の藩士・梶木左門。
冤罪事件の真相を柳田に伝え、行動をともにする盟友。イイ奴です。



小泉今日子、吉原の女郎屋の主人・お庚。
KYON2さすがの貫禄、永遠のアイドルですが、立派に女主人を演じていました。



市村正親、囲碁会を仕切るやくざの親分・長兵衛。
ちょっと出番少なくて、もったいないです。立ち回りもなかったし…



冤罪事件の真相を知らされ、復讐を決意する柳田・父娘。
自殺した柳田の妻は、柴田兵庫に凌辱されていたのです。
そこに50両の紛失事件があり、柳田に疑惑がかかります。


(以下ネタバレ)


宿敵・柴田を追い求めて、復讐の旅に出る柳田。
ここからの、柳田格之進=草彅剛の顔つきが変わります。(というか、歪んで変形します。)

50両を女郎屋のお庚に借り、大晦日過ぎたらお絹が店に出る約束になります。
このタイムリミットの復讐ロードは、上手く出来ています。



そして、柳田格之進vs柴田兵庫の最終決戦、まずは囲碁の勝負。
勝負あったか?ここで刀の勝負に変化します。
立ち回りも見応えあります。血は出るし、人は死ぬし、白石監督の本領発揮です。

ここで、柴田の言い分、柳田の正義のために犠牲になった者(家族) の存在に言及します。
この理屈は現代社会に通じる部分が大きく、ドキリとしました。

柳田は柴田の首を斬り落とします。

50両の紛失事件の疑惑も晴れます。
碁盤切りの意味ってこれだったのね。(書きません、映画館で観てください。)


弥吉とお絹も祝言のとき、柳田はこっそりと抜け出し旅に出ます。
(映画では言いませんが、正義のために犠牲になった者(家族) の救済だよね。)

見応え十分な時代劇です。

PS
テレビCMで、柳田の「忘れてはおらぬな」のセリフが使われていますが、使い方が反則です。
CMを見ると、宿敵・柴田に対して言ってるように思いますが、映画では弥吉に言ってるのです。
姑息な宣伝手法です。止めてください。