【90点】監督:吉田恵輔 (脚本も)



石原さとみ、泣き叫び、イラつく、当たり散らす、絶望する…渾身の熱演です。

主演女優賞、決定か?



沙織里 (石原さとみ) の娘・美羽が突然いなくなった。
懸命な捜索も虚しく3カ月が過ぎ、沙織里は世間の関心が薄れていくことに焦りを感じていた。
夫の豊 (青木崇高) とは事件に対する温度差からケンカが絶えず、唯一取材を続けてくれる地元テレビ局の記者・砂田 (中村倫也) を頼る日々となる。
そんな中、沙織里が娘の失踪時にアイドルのライブに行っていたことが知られ、ネット上で育児放棄だと誹謗中傷の標的になってしまう。
世間の好奇の目にさらされ続けたことで沙織里の言動は次第に過剰になり、いつしかメディアが求める「悲劇の母」を演じるようになる。
一方、砂田は視聴率獲得を狙う局上層部の意向により、沙織里や彼女の弟・圭吾 (森優作) に対する世間の関心を煽るような取材を命じられる。



6歳の一人娘の失踪、ヘビーな映画です。
夫婦間の軋轢・ケンカが、いきなりのトップスピードで入ってくる。
目をそむけたくなる感情の揺れが、次々と映像化されます。
世間一般、SNS、テレビ局、警察、ご近所さん…悪意と善意が交差します。



娘の失踪時に好きなアイドルのライブに行っていたことが知られ、ネット上で育児放棄だと誹謗中傷を受ける。
本当に困ったもんです。誹謗中傷のSNSとは別に、さりげなくテレビ取材のミスも関与しているのが上手い。



テレビ局はリアルですか?
視聴率のために、取材を誘導して作成する。(これ最悪だよね。)
今時、特ダネの表彰とかあんなに派手にするのかな?(静岡のローカル局だから?)



石原さとみ、母親の沙織里。
ボサボサの髪にカサカサの唇、ほぼノーメイク?
だけど誰よりも美しい。(どうしても美しさは隠せない。)
心が壊れていくというか、追い詰められていく演技がよかった。
なぜテレビ局のそこまで頼っちゃうのか?少し疑問です。



青木崇高、夫の豊。
限りなく優しく、常識人のかがみです。(私には無理…)
最後まで妻を守ります、裏なく嫌味なく見せるのが、演技の底力。
助演男優賞にノミネートします。



中村倫也、地元テレビ局の記者・砂田。
正義の記者なのですが、会社方針には従ってしまう弱気が納得しました。
上司に対して、声を出さないで口パクで文句を言うシーンが良かった。



森優作、弟の圭吾。
6歳少女と最後まで一緒にいて、疑われる。
見ていられないほどの悲惨な役回りを、立派に演じ切りました。
失礼な言い方になりますが、顔がドンピシャでひきこもり系です。m(__)m



柳憂怜、失踪事件の担当刑事・村岡。
淡々といい味出しています。
「たけし軍団」の柳ユーレイ時代から、ファンでした。


(以下ネタバレ)



いたずら電話、類似誘拐、テレビ局も扱わなくなり、夫婦の関係はどんどん悪くなります。
映画観ていて、この話どう着地させるのか?不安になってきます。



夫は、誹謗中傷に対して裁判を起こします。
妻は、小学校・生徒の横断歩道の誘導員の仕事を始めます。
弟も、姉との距離を縮め、立ち直ります。




映画では、最後まで娘は見つかりませんが、少しですが前向きな気持ちに変わり、救われます。(と思いたい。)



石原さとみと青木崇高の役者力、すさまじいです。