【90点】2009年6月。木村大作/金澤誠、キネ旬ム社。

面白いッ!

毒舌なのか、自慢話なのか、ホラ話なのか……わからないのが、面白い。


木村大作:1939年~84歳。日本の撮影技師、映画監督。

宣伝文『日本映画を代表する撮影監督・木村大作が、その映画人生のすべてを語る。
東宝撮影所での修業時代から初監督作品「劔岳 点の記」まで、携わった映画史に残る錚々たる作品の創作の秘密、舞台裏を熱く語る。』(インタビュー形式です。)



本章に入る前に、
「本書に登場する主な撮影用語」として、21個の用語説明があります。(偉い!)


全体を通じて、
・撮影の技術話・丸秘話が多く、映画ファンとしては嬉しい。
・自慢話が多く、かなり盛っている。(でも、嫌味なく楽しい。)
・役者や関係者の行動・発言を実名で出し、内容も微妙に危ない。(これまた、盛ってる?)

とにかく、心に刺さるし……笑えます。(苦笑含みますが……) m(__)m



第1章 修行時代
「はじまり」「東宝撮影所」「黒澤明」「岡本喜八、谷口千吉、成瀬巳喜男、市川崑」「斎藤孝雄」「どですかでん」「一本立ちの話」
……『自分自身のアイデアなんて、大したものじゃない。過去の映画で使った手法がいかに凄いか。それは黒澤さんと仕事をして、痛感したね。』



第2章 木村大作、売り出す
「野獣狩り」「日本沈没」「野獣死すべし 復讐のメカニック」「青葉繁れる」「傷だらけの天使」「吶喊」「阿寒に果つ」
……『俺は手持ちでブラさないと思ったら、絶対にブレないよ。』



第3章 大自然との格闘
「八甲田山」「姿三四郎」「ブルークリスマス」「幽霊列車」「聖職の碑」「金田一耕助の冒険」「復活の日」
……『「八甲田山」が公開された当時、批評家から「ただ雪の中を歩いているだけだ」と随分ひどいこと書かれたよ。でもお客さんは入ったよね。それはあの映画の中に、人間と人間、人間と自然、そこで闘った者たちが出した何かを、観客が感じ取ったからだと思うんだ。』



第4章 高倉健、降旗康男とともに
「駅 STATION」「海峡」「小説吉田学校」「居酒屋兆治」「コマーシャル」「魔の刻」「夜叉」
……『倉本 (聰) さん、あなたの脚本と俺のセッティング、どっちがいい?どう見てもこっちのセッティングのほうがいいですよね。』
……『僕がその人の前に行ったら、直立不動の姿勢をとる人が3人いる。一人は黒澤明さん、一人は高倉健さん、そしてあと一人は野上照代さんなんだよ。』



第5章 東映京都時代
「火宅の人」「夜汽車」「別れぬ理由」「花園の迷宮」「華の乱」「極道の妻たち・シリーズ」「あ・うん」「女帝 春日局」「遺産相続」「略奪愛」「寒椿」「天国の大罪」「わが愛の譜 滝廉太郎物語」「日本一短い「母」への手紙」「霧の子午線」「わが心の銀河鉄道 宮沢賢治物語」
……『(松田) 優作さんみたいな俳優がいると、監督とキャメラマン、俳優の三角関係で仕事ができて、お互いが精神の部分に入って行ける感じがするんだ。それは高倉健さん、吉永小百合さんにも感じることだね。』



第6章 風に吹かれて気のむくままに
「誘拐」「時雨の記」「おもちゃ」「鉄道員」「ホタル」「赤い月」「容疑者 室井慎次」「単騎、千里を走る。」「憑神」
……『渡さん、自分が転ぶことがあったら、その上を踏み越えて行ってください。』



第7章 「劒岳 点の記」
……2009年、初監督作品。139分。
明治20年、それまで前人未到といわれた劔岳の測量に、信念と勇気をもって挑戦した男たちの物語。
新田次郎の同名小説を撮影日数延べ200日以上、2年の歳月をかけて映画化した渾身の作品。鑑賞済、傑作です。
『みなさんは映像がきれい過ぎると言う。しかし、楽なところでは美しくは撮れないんです。美しいというのは厳しいんですよ。厳しさの中しか、美しさはないんだ。』
『あなた方は、凄い雪崩を起こすことに集中してくれ。俺たちはそれを撮ることに集中する。お互いの自己責任だ。それで何かあったとしても、我々が責任を取る。だからスイッチを押してくれ。』



第8章 そして、これから
……『丁半博打でいうなら「劒岳 点の記」を作って、一つの目に賭けて張った。その目の出方によって、今後の人生も変わっていくんだろうな。』



PS
その後、監督作品2本。
「春を背負って (2014年、撮影兼務)」
「散り椿 (2018年、撮影兼務)」

★頑張ってください。

そして、吠えてください。