【85点】監督:三宅唱

恋愛関係や友情関係にならない男女間の関係。思いやり…人に優しく…病気が人間を成長させる…真面目な良い映画です。



原作:瀬尾まいこ、小説。未読。

月に1度、PMS(月経前症候群)で苛立ちを抑えられなくなる藤沢美紗 (上白石萌音)は、ある日、同僚の山添孝俊 (松村北斗) を怒ってしまう。
やる気が無いように見える山添は、パニック障害を抱え、生きがいと気力を失っていた。
互いに友情も恋も感じてないけれど、おせっかい者同士の二人は、自分の病気は治せなくても、相手を助けることはできるのではないかと思うようになる。


・PMS(月経前症候群):生理が始まる3日~10日前から心身にさまざまな症状が生じること。生理が始まると改善または消失する。
・パニック障害:不安障害の一種で、突然前触れもなく動悸、呼吸困難、めまいなどの発作を繰り返し、外出などの社会生活が制限される。


「自分の病気は治せなくても、相手を助けることはできるのではないか」
恋愛感情を完全排除し、押しつけがましくなく、あまり暗くならずに映画として成立させる。成功です。
これがTVドラマならば、絶対に恋愛感情が芽生えるような脚本になるはずです。m(__)m



冒頭の美沙のモノローグ、病気のこと、自分自身のこと、簡潔で的確な導入です。
一気に引き込まれました。



上白石萌音、PMSを抱える藤沢美紗 (会社の先輩)。
とにかく、上手い!
イライラを爆発させるシーン (山添に対してと、親友の女性に対して。)、見事な演技力です。こういう女性でも、こんなになっちゃうんだ。映画とはいえドキドキしちゃいました。
最初は先輩と後輩、逆じゃね?と思いましたが、立派に先輩でした。
山添の部屋で、残ったスナック菓子を筒(の袋)ごと、流し込んで食べるシーン。確かに恋愛関係の男女間ではやりませんね。



松村北斗、パニック障害を抱える山添孝俊 (会社の後輩)。
人と関わりたくない、人に弱みを見せたくない、よく表現しています。
前半、美沙に対して、ボソボソと反論するセリフの言い回しは絶妙です。
後半、体調不良の美沙の自宅に向かうくだり、ゆっくりと男前になっていく感じがよかった。



芋生悠、山添の恋人・大島千尋。
なんか、いつのまにか大人になりましたね。立派な会社人姿、似合っています。
中半、ロンドン転勤で姿を消しますが、美沙とは異なる、男女間での病気との立ち向かい方・もめ事が見たかった。
都合よく消えた (消した) 感じがしたので、残念です。推しの女優さんなので、もっともっと売れてほしい。



光石研、美沙と山添が務める栗田金属の社長・栗田。
典型的な中小企業の経営者、こんなに社員思いの人いる?


渋川清彦、山添が前に勤めていた職場の上司・辻本。
大企業の中間管理職?こんなに面倒見の良い人いる?

少しひっかかるのは、栗田社長との関係が親族の自死に関連するサークルでの関係であること。
みんな心にマイナス要素を抱えている (この表現が適確かはわかりませんが…)、だから優しい?に見えてしまうのは、私の心が病んでいるのか?
でも、栗田金属の社員が、皆様普通の人で、良い人なのは、映画の流れとして助かりました。



(以下ネタバレ)



特に大きな問題が発生するわけではなく、淡々とエピソードが続きます。
移動式プラネタリウムの共同作業が美沙と山添の距離を縮めますが、恋愛までは発展しません。
「押し倒しちゃえよ!」と馬鹿な私は、少しもどかしくなりました。m(__)m



美沙は母親の介護のために転職し、山添は栗田金属に残ります。
二人とも、前より症状が良くなっている感じがしました。

ラストシーンの栗田金属の社屋前の昼休み風景。
ほのぼの心地よい。