【70点】監督:ヴィム・ヴェンダース

役所広司、第76回カンヌ国際映画祭で最優秀男優賞。
おめでとうございます。素晴らしい演技、日本人として誇りに思います。

この作品、邦画?洋画?……邦画とします。


平山 (役所広司) はトイレ清掃員をしながら、過ごす日々に満足している。
毎日の暮らしに同じ日はなく、昔から聞き続けた音楽に耳を傾け、休日に買う古本に読み耽ることに喜びを感じていた。
小さなフィルムカメラで木を撮ることが好きな彼はある日、思いがけない再会をきっかけに、過去に目を向けていく。



トイレ清掃員の仕事、淡々とした日常の生活が、繰り返し描かれます。

朝起きる、歯を磨く、缶コーヒー (たぶんBOSS?) を飲む、車 (軽) を運転する、
トイレを掃除する・掃除する・掃除する、
飲み屋で晩酌、古本を読む、そして眠る。



ヴェンダースの映す東京 (浅草界隈の東東京の下町か?) は、限りなく美しい。
何であんなに、すたれた東京が、美しいのだろう?外国人監督だから?
違います、日本の映画監督たちの技術が劣っているからです。



でも、公衆トイレがキレイすぎます。ホンモノなのはわかりますが、どのトイレも最新有名店なのです。
巻き散らかされた糞尿とゲロ、マナー無視の生ゴミ、悪意しかない落書き…よく見られる光景が、映画では一切登場しません。
日本人として褒められているようなのですが、「私たちは、本当はダメな人間なのですよ。m(__)m」と謝りたい気分がしました。



役所広司、主人公の平山。
表情がイイ、トイレ掃除の手ぎわがイイ、無口なのがイイ。物欲の薄い普通の一般人に、溶け込んでいました。これが出来るのが、役所広司の強みです。
過去の説明がないのも良かったです。普通ならば不満に思いますが、この映画では必要ありません。



柄本時生、トイレ清掃員の同僚・タカシ。
典型的な現代日本のダメな若者、ステレオタイプすぎます。
今の若者、もっともっと悩んでいますし、こんなに馬鹿じゃないです。
演じていて、つらかったと思います。残念。


アオイヤマダ、タカシが熱を上げる・アヤ。
中身が薄くて、わかりません。東京の若い女性は、こう見えるのかな?



中野有紗、平山の姪・ニコ。
初々しい。化粧っ気のない十代、これからを期待します。



麻生祐未、平山の妹・ケイコ。
好きな女優さんです。声が、顔が、たたずまいが好きです。



石川さゆり、いきつけのスナックのママ。
こんなママのいるスナックなら、マジ毎日通いますよ。劇中、歌まで唄っていただき、ありがとうございました。


東京の一般の銭湯、シャンプーとボディソープが備え付けているのですね。
私、埼玉人で銭湯にはよく行きますが、埼玉ではありません。いいな〜。



ジェットコースター・ムービー、大ドンデン返し、ノンストップ・スペクタクル……こういう作品に慣れてしまったため、物足りなさを感じてしまいます。若干の眠気も感じました。
どちらも映画です。
人間の機微、おだやかな時間の流れ、久々に体験する映画です。


毎日を生きる、働きながら生活をする、淡々と生きる。
ラストの平山の、ぎこちない泣き笑い、心に染みます。