【80点】2010年。監督:石井裕也 (脚本も)

満島ひかりの、圧倒的なパワーで成立している映画です。


前半のダメ人間から、スイッチが入って超前向き人間に変わる様が面白い。
美人ではあるのですが、それを感じさせないパワーです。(褒めています。)


OLの木村佐和子 (満島ひかり) は上京して5年目で、仕事もさほど熱心ではなく、恋人の健一 (遠藤雅) はバツイチで子持ちの上司という、妥協だらけの人生を送っていた。
そんな彼女にある日父が入院したという知らせが入り、田舎に戻って家業のしじみ工場を急きょ継ぐように言われる。
佐和子は乗り気ではなかったのだが、田舎暮らしがしたい健一の意向もあり、結局連れ子と3人で行くことになる。



「上京してから5年目」
「上京してから5つ目の仕事」
「上京してから5人目の彼氏」
冒頭での佐和子のいくつかのエピソードに3つのテロップがかかり、
彼女のダメOLぶりがわかります。(逆らわない、自己主張しない、やる気ない。)
どのシーンもクスクス笑えます。(OL仲間の女性、顔だけで笑えます。)


「あたしなんか、中の下ぐらいの女ですから」
…名セリフですね。

石井監督の脚本力と演出力のセンスがキラリです。
(あ、この作品が縁で、石井監督と満島ひかりは結婚したんですよね。結果、離婚したけど…m(__)m)




しじみ工場の作業員のおばさん軍団の顔つきと下着姿、これってホラー映画ですよ。

「茨城県茨城町個沼」がロケ地とありますが、北関東の田舎町ってかなりヤバいですよね。m(__)m



満島ひかり、主人公の木村佐和子。公開時25歳、貫禄さえ感じます。
セリフの言い回しが、状況に応じていろいろな引き出し持っています。
あきらめの早口や、やけ気味の自暴自棄、得意の?絶叫…素晴らしいです。


遠藤雅、恋人の新井。
これだけ印象に残らないのは、素?演技?演出?



志賀廣太郎、肝臓悪くて死ぬ寸前の父親。
カツラが笑える。
2020年に71歳で没。味のある役者でした。


岩松了、役所に勤める叔父。
この人のあたふたする演技、大好きなのです。
私にとって、笑いのツボ的な役者です。

 
(以下ネタバレ)

 


恋人に逃げられて (同級生に寝取られ駆け落ちされて)、やる気のスイッチが入ります。

ここからのエンジン全開、極めつきは「社歌」を作って、工場の社員と全員で熱唱するシーン。攻撃的でパンクな社歌。満島ひかりの眼がイッちゃってます。


♪ 上がる上がるよ消費税 金持ちの友だち一人もいない
来るなら来てみろ大不況 そのときゃ政府を倒すまで 倒せ倒せ政府
しじみのパック詰め しじみのパック詰め 川の底からこんにちは
一度や二度の失敗と 影干しくらいはへのかっぱ
ダメな男を捨てられない 仕事は基本つまらない
中の下の生活 しょせんみんな中の下 楽しいな 楽しいな
しじみのパック詰め しじみのパック詰め 川の底からこんにちは ♪

…大拍手!
この歌のインパクトで、ラベル変えただけのしじみのパック詰めが爆発的に大売れするシーン、納得できました。



ラスト、父親の葬儀の後、恋人が帰ってきて謝ります。
ひと通り泣き叫んだあと、
「しょうがないから、明日も頑張るね」
ハッピーエンド?でエンドマーク。

強引な力技での締めくくりですが、
これってけっこう真理で、正しいのです。