【60点】2022年11月、乗杉純、草思社。


第6回 (2021年度) 文芸社・草思社W賞金賞受賞作。

part1 映画『乱』ー黒澤明と怪物プロデューサー


『乱』1985年。監督:黒澤明。日仏合作。
製作会社、ヘラルド・エース/グリニッチ・フィルム・プロダクション。製作費、26億円。

・サージ・シルバーマンという外国の独立映画プロデューサー、まさに怪物です。
したたかであり、一度約束したことを反故にしたり、記憶にないと言ったり、自分に都合のいいように契約条件を持っていこうとします。


・黒澤明に対して「黒澤さんは人間を恐れている」と言い放つ、強気の人物。
振り回されイライラする黒澤明、撮影現場の黒澤神話とは違い、なんか可哀そうで読むのがつらい。

・映画の撮影中でも、資金繰りが延々と続いていたとは驚きました。
無事完成して公開されて、本当に良かったです。

・幻 (未完) の脚本「黒き死の仮面」について、チラリと触れています。黒澤ファンとしては、これだけでドキドキします。



part2 映画『七人の侍』ー日米訴訟合戦


『七人の侍』1954年。監督:黒澤明。
制作会社、東宝。製作費、2.1億円。

・この時代の著作権とかザルだったんですね。黒澤明の東宝に対する不信感から来る発言は、しばしば耳にします。
黒澤側の言い分だけでなく、東宝側の言い分も知りたいです。

・黒澤プロ、東宝、MGM映画 (アメリカ) の三つ巴のバトル、読んでいて疲れます。


part3 映画『戦場のメリークリスマス』ー初めての映画製作の仕事


『戦場のメリークリスマス』1983年。監督:大島渚。日英オーストラリア ニュージーランド合作。
製作会社、レコーデッド・ピクチャー・カンパニー/大島渚プロダクション。製作費、15~16億円。

・この章は『乱』の仕事の一年前に遡る、と記述してあるので、時系列的にはいちばん最初なのだが、読み物としては面白くない。
『乱』ほど揉め事がないからです。

・それでも、大島渚、坂本龍一、ビートたけし、デビット・ボウイの名前を見るだけでソワソワします。




読み物としての面白さは、part1『乱』>part2『七人の侍』>part3『戦場のメリークリスマス』の順かな。