【85点】1984年。監督:伊丹十三 (脚本も。)

面白いッ!
日本アカデミー賞最優秀作品賞、
キネマ旬報ベストテン1位、
この年の映画賞を総ナメにした、伊丹十三・監督デビュー作品。


再見しましたが、全く色あせていません。むしろ、斬新です。
「お葬式」今も昔も変わらぬ、不動の日本の文化です。


それより、
再見して驚いたのは「愛人役・高瀬春奈」の、圧倒的な破壊力
これは、ヤバい、凄い、恐ろしい…モンスターですね。
素晴らしい!



ある日、俳優の井上侘助 (山崎努) と妻で女優の雨宮千鶴子 (宮本信子) は夫婦共演のCM撮影を行っていたが、そこに突然連絡が入る。
千鶴子の父・真吉 (奥村公延) が亡くなったのだ。
親族代表として葬式を出さなくてはならなくなった侘助は、マネージャー里見 (財津一郎) の助けを借りつつも途方に暮れる。
千鶴子の母・きく江 (菅井きん) や千鶴子の妹・綾子(友里千賀子) 夫婦、そして真吉の兄・正吉 (大滝秀治) とともに、遺体を伊豆の別荘に運び、お通夜の準備に取り掛かる。
お通夜当日の朝を迎える侘助達、そこには喪服を着た侘助の愛人・良子 (高瀬春奈) がいた。


●出演者が多いので、ベストテン形式で寸評します。


1位:高瀬春奈、侘助の愛人・良子。
ダントツの存在感です、エロい!
だって文芸作品なのにお尻丸見えですよ。(伊丹監督のスケベさですね。) 


目つきがエロっぽくてヤバイし、山崎努タジタジです。(キス、舌入れてますよ。)
仮に、自分の親の葬式に、こんなエロ愛人が乗り込んで来たら、たぶん心臓発作で急死しちゃいますね。クラクラします。



2位:江戸家猫八、葬儀業者の海老原。
とにかく笑っちゃいます。
眼鏡を重ねて、カチャカチャっとするシーン、何年たっても必殺で笑えます。



3位:山崎努、俳優の井上侘助、主人公。
まともな一般人の表情と、愛人の出現でオドオドを隠す表情、普通の中年男性をクセなく演じています。さすが上手いッ!



4位:財津一郎、マネージャー里見。
病院代の会計はたった3万5千円足らずだったことから思わず笑ってしまうシーンと、足がしびれて正座から立ち上がれないシーン、コメディアンの本領発揮です。
現在89歳、10年以上表舞台には出演していませんが、「タケモトピアノ」CMは楽しく拝見しています。



5位:大滝秀治、真吉の兄・正吉。
上手いですね、悪人ではなく、あくまでもクセのある嫌われ老人を演じています。



6位:宮本信子、侘助の妻で女優の雨宮千鶴子。
夫の浮気を知っていながら (しかも近くの森で侘助と良子はセックスしている。)、飄々とブランコに乗るシーン、能面の怖さです。



7位:菅井きん、千鶴子の母・きく江。喪主。
本来この人が主役なのに、役柄が真面目な良い人だったので、周囲の役者のキャラクターに喰われてしまいました。

8位:奥村公延、千鶴子の父・真吉。
冒頭で死んじゃいましたが、老妻相手に「若い愛人を作る」とか言いながら食事するシーン、昭和のわがまま老人です。



9位:尾藤イサオ、千鶴子のいとこ・茂。
真吉の兄・正吉の悪口を延々と言いますが、根がいい人なんでしょう、嫌味が感じられません。
千鶴子が「島倉千代子」を歌い、一緒に踊る姿は、まさしく昭和のお葬式。

10位:岸部一徳、茂の弟・明。
セリフは「またシゲがよぉ、クククッ」と笑うのみ、まだ役者としては売り出し中の頃ですが、しっかりと爪痕を残しています (良い意味で)。

そのほか、懐かしの芸達者な役者さんたちが、わんさかと出演しています。嬉しい。
津川雅彦 (近所の精神科教授・木村先生)、横山道代 (木村先生の妻)、友里千賀子 (千鶴子の妹)、笠智衆 (住職)、佐野浅夫 (親族)、津村隆 (侘助の付き人)、加藤善博 (葬儀業者)、小林薫 (火葬場職員)、田中春男 (ゲートボール仲間)、藤原釜足 (ゲートボール仲間)……



人間の比率を変えたCM撮影シーンや、
パーソナルVTR (8ミリ?) 撮影内容をモノクロで見せたり、
伊丹監督のこだわりが感じられます。

あと、料理 (食べ物) とお酒 (飲み物) が、実に美味しそうなのです。(これは次回作の「タンポポ」に引き継がれます。)
日本人って、本当に酒を飲む民族なんですね。



葬儀の後の精進落としの挨拶、当初侘助が行う予定でしたが、きく江が自分がやると言ってチェンジします。
ここの挨拶、見せ場のはずですが、ありきたりの普通の内容で、少し腰砕け気味に感じました。
ただ、この映画は伊丹監督が妻・宮本信子の父親の葬式で喪主となった実体験をもとにしていますので、リアリズムとしては正解なのかな。

とにかく、ユニークにして斬新、
笑っちゃうリアリズム、傑作です