【80点】1973年。監督:加藤泰

「花と龍 青雲篇 愛憎篇 怒濤篇」のタイトルで公開。松竹、168分。
前年の「人生劇場」に続く、任侠文学映画の第2弾です。(^_^)
主要なキャストも、前作からの引き続き出演者多数です。
40年ほど前、名画座で鑑賞し、今回DVDで再見しました。



1954年に二部作として東映で最初の映画化、
その後、1962年に日活で、1965年・1966年に東映で、1973年に松竹で映画化されています。


原作:火野葦平、長編小説。未読。
明治中期から太平洋戦争後の北九州を舞台に、著者の父である玉井金五郎と妻のマンの夫婦が、
裏切りやすれ違いを経験しながら家族の歴史を積み重ねていく大河小説。



【オールスター・キャストです!】
渡哲也、玉井金五郎 (若松の沖仲仕・玉井組組長)
香山美子、金五郎の妻・玉井マン。
倍賞美津子、蝶々牡丹のお京 (金五郎の浮気相手)、お葉 (金五郎の娘)。
竹脇無我、金五郎の一人息子・玉井勝則。
太地喜和子、娼婦で勝則の恋人・光子。
田宮二郎、栗田銀五。(マンを慕う任侠やくざ)
石坂浩二、唐獅子の五郎 (マンに窮地を助けられた渡世人)、十郎 (五郎の息子)。
佐藤慶、敵対する友田組の組長・友田喜造。
任田順好、どてらばあさんこと、銀五の盟友・島村ギン。



青雲の志に燃える・玉井金五郎 (渡哲也) は、恋女房のマン (香山美子) と一人息子の勝則を連れて、
若松の港の永田組のもとに身を寄せる。ゴンゾと呼ばれる沖仲仕で必死に働く。
…渡哲也、今度は堂々の主役。香山美子とのいきなりの濡れ場も興奮します。ちゃんとキスしていますね。

ある日、幼い勝則が筏 (いかだ) で流された。救ったのは、流れ者、銀五 (田宮二郎 )だった。
銀五は駆けつけたマンに、死んだお袋のおもかげを見る。
…田宮二郎、全編マンへの届かぬ想いがせつないっス。

翌年、勢力を増した友田組 (佐藤慶) が、永田たち (連合組) の荷役奪回を策し始める。
…佐藤慶、絵に描いたような悪役。こういう役者、最近いませんね。


金五郎は永田組の後釜として「玉井組」の看板をあげるよう懇願されるが、永田の手前もあり辞退する。
その夜、賭場に行った金五郎は、顔見知りの蝶々牡丹のお京 (倍賞美津子) と逢う。
お京は、唐獅子の五郎 (石坂浩二) と二人でイカサマをして稼いでいたのである。
久しぶりに逢った二人、金五郎はお京の自分によせる心情にうたれ、刺青を承諾する。
そして六日間。金五郎の肌には見事な刺青が彫り上げられ、お京と金五郎は結ばれる。
…倍賞美津子、濡れ場シーンがエロい。オッパイは見せないが、入れ墨の肌に大興奮です。m(__)m

帰って来た金五郎の腕に彫られてある刺青を見たマンは、勝則を連れて家を飛び出す。
しかし、小倉駅で、盲腸で困っている唐獅子の五郎 (石坂浩二) の息子・十郎を救ったマンは、夫の許に戻る。
…意外とかかあ天下なのには驚きですが、実話がベースなんですよね。

やがて金五郎は「玉井組」の看板をかかげるが、金五郎は友田組に刺される。
止どめを刺そうとするのを止めたのは、友田組に草鞋をぬいでいた銀五だった。
銀五は血みどろの金五郎をかついで、マンの許に運んできて、金五郎は九死に一生を得るのだった。
…田宮二郎、強くてカッコいいです。
…渡哲也と香山美子の夫婦愛も、共感できます。

★ここまでが、前半です。(*_*)


十数年後、早稲田大学を卒業して、文学の道を志す勝則 (竹脇無我) は父・金五郎と対立し、娼婦・光子 (太地喜和子) への純愛に心を向けていた。
しかし、光子の楼主は友田の息のかかっている男で、光子はマニラに売り飛ばされてしまう。
…竹脇無我、なぜこんなに若い!渡哲也の息子役ですが、竹脇の方が年上。
…太地喜和子、なんだこの色気は?舞台女優中心だったので、この頃は売り出し中なのかな?
オッパイまで見せてくれての熱演、感謝しかありません。

光子を失った勝則は、組合を結成し、逆に自分のやり方で港の仕事を始めようと決心する。

丁度その頃、十数年ぶりに銀五が若松に帰って来る。盟友・島村ギンの元に身を寄せる。
…任田順好、前作に引き続き不美人だが、インパクト大の衝撃です。


港を牛耳る三菱が、炭積機を港に設置する計画を発表する。
金五郎はゴンゾの失業を恐れて設置に反対し、三菱にかけ合うために上京し、お京にうり二つの女スリ・お葉 (倍賞美津子・ニ役)に出逢う。
このお葉こそ、かつての金五郎とお京との一夜の契りでできた娘だったのだ。
…倍賞美津子、この二役、少し無理あるが、倍賞美津子ファンとしては全然OKです。(^_^)

一方、勝則はストライキに突入し、玉井組と友田組との抗争にまで進展してしまう。
金五郎たちは友田組に殴り込みをかけ、血みどろの乱戦が始まる。
やがて、銀五は傷つき死んでいった。敵と味方に別れながらもマンを慕いつづけた銀五だった。
…田宮二郎さま、お疲れ様でした。

一人の男が、玉井組に加勢する。かつてマンに救けられた五郎の息子・十郎 (石坂浩二・二役) だった。
…石坂浩二、、この二役、かなり無理あるが、ここまで来たら全然OKです。

金五郎親子は死闘の末に勝利し、親と子の深い信頼は戻る。
そして、勝則はマニラに光子を捜しに出かけたが、すでに光子は死んでいた。
…めでたし、めでたしです。


…この映画でも、加藤泰監督の得意技「ローアングル手法」にこだわります。
「人生劇場」から連続鑑賞したので、慣れるものですね。たまに見ずらいけど…


主題歌:「花と龍」美空ひばりの歌が、心にしみます。
♪花にからまる 背中の龍に
 訊いてご覧よ 応えは一つ
 男一代 若松港
 晴れの舞台に 名を刻め♪