【80点】1972年。監督:加藤泰

「人生劇場 青春篇 愛欲篇 残侠篇」のタイトルで公開。松竹、167分。
任侠映画というより、任侠文学映画です。
40年ほど前、名画座で鑑賞し、今回DVDで再見しました。



1936年~1983年まで、13回映画化されています。(す、すごい…)
吉良常 (きらつね) と飛車角 (ひしゃかく)、このネーミングに鳥肌が立ちます。

原作:尾崎士郎、自伝的大河小説。未読。
1933年~1959年までに、「青春篇」「愛慾篇」「残侠篇」「風雲篇」「離愁篇」「夢幻篇」「望郷篇」「蕩子篇」が発表されました。



【オールスター・キャストです!】
竹脇無我、文学を志す青年・青成瓢吉。
田宮二郎、吉良常。(任侠やくざ)
高橋英樹、飛車角。(任侠やくざ)
渡哲也、宮川。(任侠やくざ)
香山美子、瓢吉の昔の女・お袖。
倍賞美津子、飛車角の女・おとよ。
森繁久彌、瓢吉の父・辰巳屋の当主・瓢太郎。
津島恵子、瓢吉の母・おみね。
任田順好、瓢吉の文学仲間であり女・照代。



大正五年。服役していた吉良常 (田宮二郎) が十年ぶりに、三州横須賀に帰って来る。
しかし、吉良常が主人と慕う辰巳屋の当主・瓢太郎 (森繁久彌) は、その夜、ピストル自殺をとげた。
…田宮二郎、「白い巨塔」(1966年) の財前五郎役とは、真逆の義理と人情を重んじる吉良常、好きです。

「立派な男となるまで墓を建つるに不及」という遺書を、一人息子の瓢吉 (竹脇無我) に残す。
東京で文士をめざしていた瓢吉は、同棲中のお袖 (香山美子) を残し、急ぎ帰郷する。
葬式の日、吉良常は、仇討ちを狙う組の身内に連れ出されるが、瓢吉が駆け付け、事なきを得る。
…竹脇無我、当時28歳、他の主要な役者さんとほとんど同世代なのに、大学生に見えるのが不思議。(*_*)

大正八年。東京・深川の小金一家は、新興やくざ・丈徳の目に余る増長に殴り込みをかける。
子分・宮川 (渡哲也) 、客人・飛車角 (高橋英樹) などの活躍により、大勝利となる。
…高橋英樹、やっぱりスターです。(昨今はバラエティ多いので、新鮮ですね。)

飛車角が女郎屋の愛人おとよ (倍賞美津子) が、飛車角の兄弟分の裏切りにより女郎屋に連れ戻された。
怒った飛車角は、兄弟分を刺殺し、巡査に追われる身となったが、偶然、瓢吉の家に飛び込む。
そこで吉良常と意気投合した飛車角は、自首する事にした。
…倍賞美津子、濡れ場シーンがエロい。オッパイは見せないが、大興奮です。m(__)m

瓢吉は、懸賞小説に当選する。作家・照代と関係がつづいていたが、かつて別れ、今は女給となっているお袖と再会する。
…任田順好、大抜擢なんでしょう。あきらかに不美人ですが、ガツンと印象に残ります。

…任侠だけでなく、文学の葛藤も盛り込むのが、一味違うのです。


大正十一年。宮川は女郎屋に通い、飛車角の愛人・おとよと愛し合っていた。
…倍賞美津子、濡れ場シーンがさらにエロい。高橋英樹と渡哲也を相手に、大車輪の活躍です。

丈徳一家の生き残り・でか虎が小金一家に殴り込み、小金を惨殺してしうが、宮川はおとよとのいざこざで、その場にいなかった。
…渡哲也、苦悩しかありません。

昭和二年。飛車角が出所する。迎えは吉良常ひとりだった。吉良常の家で待っていた宮川は、おとよのことを飛車角に詫びた。
その日、三人は、でか虎一家に殴り込み、見事親分の仇を討つ。
しかし、宮川がは殺される。宮川を抱き上げた飛車角はいつまでも泣きじゃくるのだった。
…この殴り込みシーンは見応え十分。「斬る」ではなく「叩き斬る」です。
田宮二郎、高橋英樹、渡哲也の揃い踏み、夢のような立ち回りです。

…この映画でも、加藤泰監督の得意技「ローアングル手法」にこだわります。
けっこう好きです。たまに見ずらいけど…


瓢吉は、吉良常危篤の報を受け駆けつけると、飛車角、おとよ、お袖の姿も見えたのである。
…高橋英樹、男道です。ある意味、この映画って飛車角とおとよの純愛物語なんですよね。
…香山美子、前半と別人の佇まいです。

おとよは土地の芸者をしており、お袖は辰己屋あとの料亭吉良屋の女将におさまっていたのである。
かかわりの深い人たらに看とられ、吉良常は浪花節をうなりつつ息絶えた。
…ラスト長いス。田宮二郎、死にそうでなかなか死なない…(T_T)


主題歌:「人生劇場」美空ひばりの歌が、心にしみます。
♪やると思えば どこまでやるさ
 それが男の 魂じゃないか
 義理がすたれば この世は闇だ
 なまじとめるな 夜の雨♪