【80点】2011年。監督:園子温 (脚本も)
 
原作:古谷実、漫画 (全4巻)。未読。
 


園子温監督作品の中で、あえて避けていました。
理由は、東北大震災の廃墟映像を使用していたからです。
いい悪いの問題ではなく、見るのが怖かった&嫌悪感からです。
で、コロナの影響もあり、意を決して鑑賞しました。
 
パワーのある映画、面白い!
しかし、重苦しく、凄く疲れます。
二度は観ません。
 


冒頭、エンディング、そのほか随所に、東北大震災の津波で廃墟と化した町の映像が流れます。
圧倒的な映像です。言葉が悪いですが、ホンモノの迫力です。
園子温監督は、この映像を使用して何が表現したかったのでしょうか?
(絶望?それとも希望への思い?)
 


住田佑一 (染谷将太)、15歳、彼の願いは「普通」の大人になること。
夢を持たず、ただ誰にも迷惑をかけずに生きたいと考え、実家の貸ボート屋に集う、震災で家を失くした大人たちと平凡な日常を送っていた。
茶沢景子 (二階堂ふみ)、15歳。夢は愛する人と守り守られ生きること。
大人びた雰囲気を持つ住田に恋い焦がれる彼女は、猛アタックをかける。
借金を作り、蒸発していた住田の父 (光石研)が現れる。金の無心をしながら、住田を激しく殴りつける父親。
母親 (渡辺真起子) も中年男と駆け落ちし、住田は中学3年生にして天涯孤独の身となる。住田を必死で励ます茶沢。
「普通」の人生を全うすることを諦めた住田は、父親を殺害する。
その日からの人生を「オマケ人生」と名付け、目的を世の中の害悪となる悪党を見つけ出し、自らの手で始末する決意をする。
 
登場人物全員の心が病んでいます。
しかしながら、演じている役者さんたちは嬉しそうに暴発しています。(皆さん少しやりすぎですね。(^_^))
 


染谷将太、一生に一回、こんな役を演じたら心が壊れてしまいます。
終始瞳が虚ろで、心が読めない狂気性。
本人の演技力と、監督の演出力に脱帽です。
 


二階堂ふみ、あり得ない女子なのだが、なぜかあり得る女子に見えます。
圧倒的な前向きパワー、殴られ蹴られ川に落とされながら、頑張り抜きました。
きっと園子温監督に、いじめられたんだろーな。
 


光石研、とんでもないクズ父親です。(役者としては好演)
「俺は本当にお前がいらねーんだよ。死にたかったら死ね」
「お前が昔溺れた時、死んだらよかった」
 


渡辺哲、震災で家を失くした貸ボート屋に集う大人。
最後の最後まで、住田を守ろうとする孤高の男。その美しさ、やるせないです。
 


でんでん、サラ金の社長=ヤクザの親分。
「冷たい熱帯魚」(2010年。監督:園子温) の、凶悪犯を彷彿させる「でんでん口調」。
もしかして、一番まともな人かも?
 


そのほか、出演者がやたら豪華です。(園子温ワールドの同窓会か?)
渡辺真起子、吹越満、神楽坂恵、黒沢あすか、村上淳、窪塚洋介、吉高百合子、西島隆弘、鈴木杏、モト冬樹、堀部圭亮、新井浩文、木野花…
 


住田が父親を殺してからの、放浪?徘徊?…危険すぎてハラハラします。
特にバスの車内における無差別殺傷シーン、きつすぎます。
観ている側が、目を覆いたくなるシーンです。
 
どうしようもなく陰惨な映画です。出口が見えないので、とにかく疲れます。(*_*)
 


ラスト、拳銃を手にした住田、自殺か?
(原作では、拳銃自殺で終わります。この部分だけ、映画鑑賞後に漫画を見ました。)
映画は、自殺ではなく、真逆の自首を選びます。
住田佑一 (染谷将太) と、茶沢景子 (二階堂ふみ)、お互い「頑張れ!」を叫び続けながら、走り続けます。
このシーンに、震災の津波あとの廃墟映像がかぶって流れてエンディング。
 
ここで出口が見えるのです。光が見えるのです。
賛否両論はあると思いますが、私は「賛」です。
園子温監督の、圧倒的なパワーに参りました。m(__)m