【80点】1982年。監督:伊藤俊也



「子供もてあましてんのや!扱いに困っとるんや!」
ショーケン=萩原健一の、叫び声!
追い詰められた誘拐犯人の悲痛な叫び声に、リアリティーの極致を見ました。



原作:1980年1月に宝塚市で起きた誘拐事件を取材したドキュメント。

小学一年生の三田村英之が、下校途中に誘拐される。
県警本部の発表で、犯人が三千万円の身代金を要求していることが分かるが、各新聞社に「報道協定」の要請が出る。
犯人=古屋数男 (萩原健一) は実家へ寄る。そこへ妻・芳江 (小柳ルミ子) から電話がかかってきた。芳江は喫茶店をだましとられた数男を助けようと造花工場で働いていた。
気が弱いくせに見栄っばりな数男は娘の香織を私立学園に通わせていた。その香織と英之は同じクラスで仲良しだったのだ。
実家を出た数男は再び英之を殺そうとするが、袋の中から「オシッコ!」と訴える英之に殺意はしぼんでいく。



警察、新聞記者、被害者、誘拐犯を、各々の立場から均等に描いているのだが、
圧倒的に誘拐犯 (=ショーケン) の圧力に喰われいます。



新聞記者の仕事を見せつける映画なのに、三流大学のスポ根・運動部のようです。
頭脳を使った神経戦、又は戦略的な人海戦術が、1ミリもありません。

警察は、何か捜査をしているの?
捜査力で犯人を追い詰める過程が、1ミリもありません。
無能集団に見えました。
ドキュメンタリーなんですけど、これって事実ですか?



萩原健一、誘拐犯人。
2か月で10kg減量したとのこと。(減量が偉いとは言いませんが、鬼気迫る感ありました。)
弱気で優柔不断で、騙されやすい小心者…ショーケン、見事に演じています。
後半の公衆電話ボックスのくだり、
「子供もてあましてんのや!扱いに困っとるんや!」
鳥肌が立ちました。震えました。
やはり、とんでもなく凄い役者です。



小柳ルミ子、誘拐犯人の妻。
とにかくエロい、ヤバい、鼻血が出そうになるくらい色っぽい。
高利貸に会いに行く前に、着替えをし、下着姿になり、自分の胸に手を入れるシーン。
あまりのエロさに降参です。別の意味で、震えました。m(__)m



岡本富士太と秋吉久美子、誘拐された子供の両親。
映画の前半ではオーバーアクト気味に見えましたが、中半以降ぐいぐいと引き込まれていきます。
二人とも、誘拐された親の気持ちを全身全霊で表現しています。



ヘリコプターのパイロット役で、菅原文太、登場。
東映映画なので、大物チョイ出演なのですが、意味なしです。



新聞記者側のラスボスで、丹波哲郎、登場。
新聞記者に全然見えませんが、大作映画につきものの「丹波節」は堪能できます。


高利貸し役の中尾彬、いやー悪い奴ですね。
ワルの名人芸です、素晴らしい。

あと…奥様の池波志乃さんも出演していて、…犯人・ショーケンと車内エッチ (カー・セックス) のシーンがあり、確かこの頃は中尾彬とは結婚していたはずで……



犯人の妻・芳江と娘の香織が、ひっそりと夜逃げするところを新人記者はカメラに収めるが、
香織の「うち…お父ちゃん好きや!」言葉を聞き、写真を撮ったことを打ち明けなかった。
あまりにも見え見えな新聞記者の良心。これは事実ですか?


誘拐犯>被害者>新聞記者>警察の順に焦点があたるのですが、ごった煮感が満載の映画です。
一気に見せるはよいのですが、新聞記者と警察の取材&捜査の技術力 (本当はいろいろあるはず。) が見たかった。

しかしながら、ショーケンは凄い!