Kisya's notebook on the my hands.

Kisya's notebook on the my hands.

描いたり書いたり

Amebaでブログを始めよう!
どうもこんばんは、Kisyaです。

知らぬまに私の携帯電話がPHSからスマフォになりました。凄まじい進化ですね。
GALAXY note8とかいう、専用のスタイラスペンが付いたアレ。最新の型はnote9でしたね。

いやね、これが凄いのです。筆圧検知レベルが高い。
普段使ってるペンタブ(2013年ぐらいの型)の4倍であります。初ペンタブ買ってから一回も買い替えてないからこんな差にもなるのだと思いますケド。
筆圧検知レベルが高いほどに力加減を機敏に察知してくれます。初めてその実力を見た時は感動しましたね。

いやはや、絵描きの血が騒ぎます。

それでは、スマートフォン版メディバンペイントにて描いたらくがきを載せて終わりとします。


 おはようございます! Kisyaです。
 しばらく見ないうちに文の書き方が変わったんじゃないかって? そうです! 感嘆符・疑問符の後はスペースを置きますし文頭にもスペースを置きます。

 更新していない間に色々とありまして、気が付けば半分ぐらい物書きになっていました。
 いや、まだまだ絵描きですよ。画力はちょっとサボったぐらいでは落ちません。要するにその程度の画力ということですが。
 逆に長文を書く能力が上がった気がします。もちろん好きなこと限定ですよ。
 それはそうと長文のボーダーってどの辺でしょうか。
 ウェブ上のコメント等々なら100文字オーバーでも長文かと思いますけど、さらっとすぐ読み切れるのは長文ではない気がしますね。というか私はほぼそれで断定してしまいます。
 一般的な長文のボーダーは私の個人的な体感でいくと1500字ぐらいではないかと思っています。読書感想文とかそんなに長くないじゃないですか。まあ枚数を稼ぐための読書感想文
は苦痛ですがね!
 ちなみに、今ここまでで500字もありません。400字詰め原稿用紙一枚ちょっとぐらいです。改行は考慮してません!

 長文のボーダーとして具体的な数を上げて読書感想文を短いと言いながらもこのブログはもっと短いという始末であります。

 ああ、でも、こんな過疎ってるブログを誰が見てるんだとか、そんな気もしています。



 <ここからが前置きである>

 閑静な住宅街とは、時に不便な立地に建ち並ぶ住宅の集まりを指すことがある。
 例えば、周囲にコンビニ等の売店が無いこと。また、駅が無いこと。バス停も無いこと。

 詰まる所、郊外に位置しているということであろう。

 そうでありながら、それでも自転車ならそんなに不便にならない、等と言って、平気でそんなところに通い続ける少女がいたという。

 <ここまでが前置きである>


 <ここからが本題である>

 よく使い込まれた27インチの自転車の車輪を転がして進む少女は、橙の空の下、何の疑問もなく、ある豪邸の門の前で自転車を停めた。
 少女が乗っていた自転車は、ごくありふれたシルバーの車体で、少女の両親が登下校用に買い与えたものである。
 長く乗れるようにと、少し良いものが選ばれたらしく、買ってもらってから既に三年以上経っているが、まだまだ現役だと言わんばかりにしっかりと走っている自
慢の自転車だった。

 そんな自慢の自転車に、注意深くダブルロック、すなわち二つの鍵を掛けてから、少女は屋敷の門を抜けていく。

 三回のノックをする理由などもはや自明の理であり、だからこそ、その理由を確かめる理由など無い。
 細やかな浮き彫りの入った扉を前にして、三回それを叩いては、それに続いて少女は扉の向こうに話し掛けるのだ。

 「ごめんください。私です。開けてください」

 少女はこの木製の扉を前にする度に、この「開けゴマ」のような決まり文句を唱えるのだった。
 すると、今日は男性の声が聞こえてきた。
 扉の裏で待ち構えている人は日替わりなのである。

 「いらっしゃいませ。どうぞお入りください」

 腰が低い態度の男性は、少女に会釈をして扉を開き、招き入れた。
 少女はもちろん、この状況に慣れっこであるので、ありがとうございますと一言言って、スタスタと屋敷の中へと進んでいった。

 <間>

 少女は屋
敷の白い階段を登り、無彩色で構成された廊下を渡り、ついに純白のドアの前にやって来た。
 眩しいぐらいに白いそのドアは、ちょうど少女の目の高さにあたりに、「NEMU」と文字が掘り込まれているだけで、ごく簡素なデザインである。

 ここでも、三回のノックは自明である。コンコンコンと、少女は純白のドアを叩いた。

 「私。彼方だよ。黙ってると死にかけてると勘違いしちゃうからね。強行突破しちゃうからね」

 この間は大変だったなと思いながらドアの向こうに話し掛けようとしていたものだから、少女は警告も重ねて言った。

 『空調はもう直りました。ご心配どうもありがとう』

 気持ちの入っていない合成音声の返事と共に、頭髪からブラウスの裾まで真っ白な物体が、真っ白なドアを押して出てきた。
 昨日は空調が壊れてコンピュータの熱気に殺されそうになっていたのに、今や涼しそうな顔をしているのが、少女はなんとなく気に入らなかった。

 「あっそ。さすが可愛がられ
てるだけのことがあるのね」

 少女は少し嫌味っぽく言った。少女なりの精一杯の嫌味である。

 『可愛がられてるかどうかは知らないが、わたしとしては迅速に対応されてありがたいばかりだ』

 少女の言葉に合成音声が返事を返すまで、2、3秒。
 それでも充分早いとわかってはいるが、少女はやはり普通に話した方が早くないかといつも思っている。
 真っ白な物体、もとい真っ白な人物は、基本的には声を発することはない。
 意思の疎通を行いたい場合は、いつも身近に置いてある12インチのタブレット端末を利用してその画面に示すか、もしくは件の合成音声を扱うアプリケーションを用いるのである。
 ちなみに、入力は指ではなく、一本五千円ほどする充電式スタイラスペンで行われる。
 なお、緊急時はごく限られた人物の前では話すことがあるのだが、少女はその姿もよく知っているために、より一層喋ってくれた方が楽だろうという気持ちが湧くのだった。

 「はァ…


 ため息を吐きながら少女は部屋に入っていった。

<間>

 少女のここでの役割は、家主の子の友人ではない。
 正確に言えば、確かにそれも間違いではないが、引きこもりの真っ白い人物の家庭教師であると、少女はいつも自分の胸に言い聞かせていた。
 大学生が高校生相手に塾講師をするのと同じように、高校生が中学生の家庭教師をやってもいいじゃないの、と。

 しかし、今日の少女は違った。
 無性に、業務を放棄してやりたい気分だった。

 「なんか今日は授業をやりたくない気分!だって今日は……」
 『今日の予定の単元は………確か………』

 少女に答える合成音声はそこで止まり、代わりに真っ白い人物の無表情な口元が微妙に引きつる。
 その様子はまるで笑いを堪えているようでもあった。

 「なによ!アンタわかっててあえてその先を言わないんでしょ?かなたちゃんは全部お見通しですッ!」
 『mg(^Д^)』
 「そ
の顔文字無性に腹が立つわね…!」

 先程の顔文字は部屋の壁に埋め込まれた特大ディスプレイの画面に大きく映し出されていた。
 この部屋の電子機器は全て真っ白い人物の支配下である。

 『ところで本日の単元はなんですか?教えてくださいよ彼方先生』

 もはや真っ白い人物は口の端がつり上がるのを隠しもしていなかった。

 「………」

 少女は黙って俯く。
 五秒ほどの間が空いただろうか。

 「生殖のはたらきの発達ですぅ!!!!やだよ!!無理があるもん!!年が近い家庭教師が教えるには無理があるの!!!!あるからやなの!!!!!!!!」

 少女は目一杯に叫んだ。

 『それなら代わりにカマキリの交尾の動画でも見ましょう』
 「それもいやだ!!だってメスがオス食べちゃうもん!!!!」
 『彼方先生の解説入りで』
 「おおっとオスのカマキリが…ってやるわけないでしょ?!バカじゃないの??」

 『それは実況では…』

 なかなかに反応のよい少女を弄ぶかのように、怒濤の速さでタブレット端末に文字を打ち込んでいく白い人物。
 とはいえ、そこまでの鬼ではないので、そろそろ手を休める様子を見せた。

 『まあ、やりたくないならやらなくていいのでは?』
 「…な、投げても天罰は下らない……よね…?」
 『恐らくは』
 「その恐らくの裏に見える天罰率数パーセントが怖い……」

 <間>

 結局のところ、今日も授業は無くなった。
 そして、なんとなく落ち着かない気分のまま少女は座り込んだ白い人物の前で仁王立ちしていた。

 「……イライラする」

 「漠然とイライラする」

 「なんか言いなさいよ」

 「独り言だと思われるのは結構堪えるから、返事をしなさい」
 『嫌です』
 「よろしい」

 よろしいついでに少女はふわふわの白い髪を散々撫で付けた。
 細くてカーブした髪をわしゃ
わしゃとしてやるのである。

 『本日は何がご所望で』

 大体頭を撫で付けてくる時は何かしら要求があるときだと白い人物は経験から知っていた。
 「この部屋、上等な音響設備あったでしょ」
 『というと』
 「とぼけたってムダだからね。出来るんでしょ?国民的大衆娯楽…」

 いつまでもはぐらかしているとわしゃわしゃする手を止めないのがいつもの少女である。
 もちろん、わしゃわしゃされている者がそれを知らぬ訳ではない。

 『その名も、空っぽのオーケストラ。略して』
 「カラオケ!わかったらマイク出しなさい!!」

 少女がイライラしていると言い始めるといつも決まってこの流れになる。
 白い人物はやれやれといった様子でダイナミック型マイクロフォンを取りに行くのであった。

 『決して喉が枯れた状態で歌い続けることはないように気を付けてください。非常に耳に悪いので』
 「あーテステス!なに!?聞こえなーい!
!」
 『あくまでも聞いていないフリをするのだなあ』

 マイクロフォンを受け取っては真っ先に電源を入れる少女はしばらくはそれを手放しそうにない様子だった。
 元はといえば、周囲の音が入ってこないように、また、高音圧での動画及び音楽を楽しむための設備に、カラオケを加えようと提案したのは少女である。
 少女にとって、遠慮なく歌えることは、とても良い気分転換になったからだ。

 しかし、マイクロフォンを握り締めたら最後、部屋の中は少女一人のステージへと変容していく。
 外への騒音対策は十分になされた防音仕様の部屋だが、部屋の中ではそれは何の意味もなさない。
 少女の、下手ではないが特別上手くもなく、しかし妙に音域の広い歌声が、大音量で部屋の中を駆け巡るのである。

 まもなく相当な音圧で第一曲目が流れ始めた。

 白い人物の目に映ったのは、普通人間が歌うことを考慮されない、極めてハイトーンな、合成音声ソフトが利用された曲の名前だった。


 <ここまでが話の一区切りである>



 世の中には不可解なものが数多ある。
 何故学校へ行かねばならないのか。
 何故行った先々で友人を作らねばならないのか。
  何故外に出て動くことが好ましいとされるのか。
 わたしは、ついに今年、上記の3つを破棄することに成功した。
 
 時に、わたしは人見知りだと言われる。
 確かに、かつてのクラスメイトたちとは、ロクに会話も取ってはいなかった。
 しかし、わたしとしては違うと主張したかった。
 わたしというモノを、腫れ物のように皆が扱うものだから、面倒事を避けるつもりで言動を控えただけなのである。
 意図的に言動を控えることに慣れてくると、果てには何かを言おうと思っても、それがすぐに声帯を通じて音声化されない状態に陥るようになった。
 詳しいことはなんとも言えないが、学校という空間、およびそれに強く関連付けられている人物の前では、それがよく起こったように感じた。
 それにより、仮にそれが必要であっても、まともな意志疎通が非常に困難となってしまい、わたしはより一層、クラスでの居場所を見失っていた。
 ただでさえ、このわたしの見た目と体質によって、周りから妙に気を使われていたのに。
 それに一切応えないわたしを快く思わずに、何処か軽蔑した目を向ける者が何人も現れたものだから、すっかり学校というものが嫌になってしまったのだ。
 気が付けば、平気で仮病を使って休むほどになってしまっていた。
 そんなことをして日々をやり過ごしていると、ある日とうさまがわたしの部屋へやってきて、来なさい、と言って、手を引いてわたしを部屋から連れ出した。
 もう何年も触れることのなかったその手にぼんやりとしていたら、そのままわたしは車に乗せられて、あれほど避けていた学校へと、そのまま送られたのだった。
 なるほど、繋がれたこの手は逃げ出さないための鎖だったのかと後で気が付いたが、もう遅い。
 とうさまに手を引かれるままに、わたしは学校の中へ入っていった。
 そこで何が行われるかは、わたしにも幾分か予想が付いていた。
 ある教室に入ると、そこには担任と学年主任の姿があった。
 わたしは、やっぱりそうだと思ったが、もはや抵抗の意思もなく、勧められるままに椅子に座った。
 そこから、何を話したかはあまり覚えていないが、とうさまは当時のわたしの現状を改めて聞き、そしてわたしは相変わらず声が出なかった。
 わたしはたまに時計をチラチラと見ながら、ただ時間の経過を願っていた。
 ついに話が終わると、わたしは二人の教員に一礼だけして、その場を後にした。
 その時見上げたとうさまの目は、暖かくわたしの目を見つめ返したのだった。
 帰りの車の後部座席で、隣のとうさまはわたしに一言だけ言った。
 「何も心配は要らない」
 わたしの心配といえば、ただ、またあの空間へ行くような日々が続くようになることを不安がっていることだけだった。
 その日の夜は眠れなかった。
 行きたくない。もう行きたくないと
、電灯もない黒い天井をひたすら仰いでいた。
 こんな身の上に生まれたわたしは、もうまともに他人と過ごすことは出来ないのであろうか。
 見た目は他人と違い、髪の真まで真っ白い。また、多くの人より圧倒的に日の光に弱い。
 そんなわたしであっても、当たり前のように接してくれる人はいないのだろうか。
 いや、いた。確かにいた。
 確かあの子の名前は――

 翌朝、いや、昼だった。
 その時の部屋のデジタル時計は『12:24』と示していたはずだった。
 あれから、悩み疲れた意識は、結局沈んでいったのだろう。
 夢も見ないままわたしは目を覚ました。
 窓もなく間接照明で薄暗いこの部屋の壁際を歩き、珍しく自分から部屋を出た。
 足にスリッパを引っ掛けて明るい廊下を目眩と共に歩いた。
 時折目を瞑り、そうでないときは極力薄目でフラフラと歩いた。
 わたしが目指した部屋のドアをノックすると、背の高いとうさまが、待ち構えていたかのように出てきた。
 とうさまは休暇を取っていた。本当は忙しいのに、わたしのために休暇を取ったのだ。
 わたしは自分の目が大変潤んできたことをいとわず、とうさまに話した。
 「もう学校へは行きたくない。あの空間は嫌だ」
 「せめてもっとわたしを気にしない人たちがいい」
 「確かそんな人がいたのをわたしは知っている。あの子は――」
 わたしがそこまで言うと、とうさまは続けて言った。
 「彼方ちゃん、だね?」
 「そう。その子だ」
 2つ学年が違い、もうすぐあの学校を卒業するであろうあの子の名を、わたしはついに思い出した。
 か、な、た。とその三文字を小声で反芻すると、とうさまはまた言った。
 「君は人見知りで、その上何処へ行ってもなかなか彼方ちゃんのような人には巡り会えない――」
 「無理をして学校へ行くことはない。苦しそうなその目はもう見たくない」
 とうさまは優しい。わたしは何度も涙を溢した。
 泣きながらも何度も頷いて、とうさまは垂れたわたしの頭を何度も撫でた。
 ひとしきり声を殺して泣いた後、わたしが落ち着いた頃にとうさまはこう聞いた。
 「彼方ちゃんには、また会いたいと思うのかい」
 わたしは迷いもなく返事をした。
 「会いたい。あの振る舞いが今では恋しいぐらいだ」

 それから1ヶ月以上が過ぎた日の夕方のこと、唐突にわたしの部屋のドアを三回叩く音がした。
 わたしはその時不思議に思った。
 家政婦が夕食に呼びに来た時なんかは、ノックは五回するはずなのに、夕食にしてはまだ早い時間に、三回のノックはおかしかったのだった。
 わたしは警戒して、部屋の真ん中に座り込んだままドアを見詰めた。
 するとどうだろう。
 「ねえ、私だよ。彼方」
 ドアの向こうから、3年も聞いていなかった声が聞こえた。
 わたしはハッとして、ドアを開けた。
 「……久し振り。前より背が伸びたんじゃない?」
 色々な思いが込み上げて、喉がグッと絞め上がるような思いで、途切れ途切れ、わたしは必死に言葉を捻り出した。
 「何故、どうして、君が……」
 すると彼方は、仕方なさそうに笑みを浮かべた。
 「アンタの家庭教師になりました。改めてよろしく」
 わたしは訳がわからなかった。しかし、それと同時に途方もなく嬉しかった。
 わたしは心底、こういう気兼ねない間柄を求めていたのだと痛感したのだった。
 彼方を自分の部屋に入れてから、わたしは何か話そうとした。
 だが、あの声を殺して過ごした日々の後遺症だろうか。上手く声が出なかった。
 床に横座りになった彼方が、不思議そうな顔をしていたのを見て、わたしはどうすればいいのだろうと考えた。
 ふと、壁際に立て掛けてあった黒い板が目に入った。
 これだ。と思い、それに歩み寄って手に取った。
 近くに転がっていたスタイラスペンも同時に手に取った。
 
 黒い板の正体は、タブレット型携帯情報端末機器である。
 手に取るや否や電源を入れると、わたしはとあるアプリケーションを開いた。
 その画面は黒い空間で埋め尽くされていた。もし白かったらこの画面はきっと眩しかったことだろう。
 液晶画面にスタイラスペンのペン先を当てると、白い線で画面に描画された。
 わたしは画面に伝達事項を書いて、そのまま彼方にそれを見せた。
 彼方はそれに顔を近付けて読み上げた。
 「声が上手く出ないのでご承知ください。」
 わたしはその声にうんうんと頷いて、また書いて見せた。
 それを見てまた彼方は読み上げた。
 「こちらこそよろしく。」
 読み上げる彼方の顔は、笑顔だった。
 
 それからというもの、ほとんど毎日の夕方、彼方はやって来ては三回ドアをノックして入ってくるようになり、学校でやるはずだった学習は、家庭教師となった彼方によってわたしに施された。
 よって、わたしは学校に行かなくていいし、行った先で友人を作らなくていいし、外にも出なくてよくなった。
 

いきなりだけど私の話をするわね。
私はまだ16歳なんだけど、そんな私に任された面倒事があるのね。

きっかけは小学三年生ぐらいの時にさかのぼるんだけど、年に何回か下の学年の子達と交流する機会ってあるでしょ?
そういうタイミングだったかな、時期は六月とかそこらだったはずなんだけど、みんな黒髪の中に一人だけ、ぽつんとまっしろい髪の一年生がいたのね。
教室の隅っこでぼんやり突っ立っててね、その時の私ときたら、わあ、外国人?面白そう!なんて近付いていったわけなの。
テレビとかで聞いたのか、意味も分からない適当な英単語を投げ掛けたのを確かに覚えてる。
なんだっけ、ハァイ、ハロー、みたいな。そんなに変なことは言ってなかったはずなんだけど。
すると相手の目を見てみたら、相変わらずぼんやりしてたのね。
私の顔の方を見ているようだけど、でも私の顔を見ていないみたいな。なんかはっきりしない目だった。
それ以上に、人間ってこ
んな目の色してる人がいるんだ~って思うような、紅い目をしていたのね。
後で知ったことだけど、その子いわゆるアルビノってやつみたいだったらしくって、その中でも特に色素が薄いタイプだったみたい。
その時の私はとにかく天真爛漫っていうか、好奇心旺盛だったのかな。まあ、うさぎさんみたいでかわいい!とかちょっと思っちゃったんだけど。
ええと、何を話していたんだっけ……ああそう、あの子の目の話。
いい加減な英語で話し掛けたはいいんだけど、さっきみたいなぼんやりしたまま動いてなかったのね。
私、言い方が悪かったのかなって、いろんな言い方で話し掛けたのよね。
私その時ちょっと怯えた。
やっとその子が口を開いたかと思ったら、想像以上に流暢な日本語が飛び出してきたんだもん。
そうだよ。その子は外国人でもなんでもなく、私と同じだったんだよ。
その時の第一声ときたら、今でも覚えてるんだけど、だまれって、たった三文字の言葉。
英語だと
シャラップっていう感じ?まあビー、クワイエット、な感じはしなかったかな。
今度は私の方がちょっとぼんやりしちゃった。
え?ってポカーンっとしちゃったわけなんだけど、まあそれが初対面な状態なのね。

で、今では、どうしてか、その子の家庭教師を任されている状態なのね。それが、最初に言った面倒事なんだけど。
まあ、かくかくしかじかで、絡まれたり絡んだりで小学生の私たちは仲良くなっていったんだけど、それが悪かったのかな。

それはそう、私が中学校を卒業したぐらいの頃だった気がする。
その、さっきのまっしろい子も、中学校に通ってたんだけど、まあ、色々、障壁ってもんがあったみたい。
まず見た目でものすごく浮いちゃうでしょ?
あと、見た通りまっしろで色素がほとんど無い状態で……とにかく日の光っていうものに弱かったから、登下校は車だったとか。
で、必要以上にまわりから気を使われたりもしたらしいけど、持ち前の人見知りも手伝って、だんだ
んそんな扱いが嫌になってきたんだって。
それで口数が少なくなるわ、学校を休みがちになるわで、これはまずいぞってなったわけね。
それなら、いっそのこと家から出なくてもいいように、適当な家庭教師を雇おう、みたいな話になったらしいの。
そこで白羽の矢が立ったのはなんと私。
あの子は人見知りが激しいから……ああそうだ、そういえばあの子と仲がいい子がいたなってことらしいんだけどね。
最初は、私なんかムリ~って思ったけど、一応中学校は卒業してるし、その…まあ、成績もそこそこ?良かったのは事実だし……、あと、せめて同年代とふれ合う機会が必要だって、そんな話を聞いたり聞き返したりの話し合いの結果、私の両親からも承諾を得て、私が家庭教師になることになったわけ。

その実態はといえば…。
それはね、家庭教師っていうよりかは、教育係。
いや、世話係って言ってもいいぐらい。
生活力皆無のアイツをどうにか生かしてるっていう気分になる。


そんな、面倒事。



<ここからが前置きである>

月日は休むことなく巡る。
いつだって太陽は昇り、いつだって沈むのだ。少なくともこのあたりでは。
それくらい自明なことに、時間は流れ続け、何度も四季を繰り返していた。
そんなわけで、また今年も春が終わりを迎え、暑い季節になっていったのだ。

それなのに、あまりにも不運な出来事に見舞われた人がいた。

<ここまでが前置きである>



<ここからが本題である>

初夏の午後4時頃のことである。
ある少女は、閑静な住宅街の一角に歩みを進める。
そこで控えめに佇む豪邸の洒落た門に、一分たりともたじろぐことはなく、少女は門を手で引いた。

「ごめんください。私です。開けてください」

細やかな浮き彫りが施された木製の扉を、コンコンコンとノックして、少女はハリのある声で言った。
すると、待ち構えていたかのように、扉が少し開き、柔らかな女性の声が聞こえてきた。


ようこそいらっしゃいました。お入りくださいませ」

そう言って、上品な身なりをしたその女性は、少女を屋敷の中に通した。

「ありがとうございます」

一言だけ少女は礼を言い、小さくお辞儀をすると、その女性の案内もなく、しっかりとした足取りで広い廊下を歩いていった。

<間>

さて、少女はしばらく歩いてから、ある純白のドアの前で立ち止まった。
少女がこの屋敷に来た目的は、このドアの向こうにあるからだ。
やはりここでも少女は三回ノックをする。

「来たよ。ねえ、いるんでしょう?」

少女は砕けた口調で、ドアの向こうにいるであろう人物に話し掛けた。

「あれ、おかしいな、反応が無いなんて……」

何十秒から1分程待てど、ドアに動きは無いし、反応も無かったのだ。

「いないの?入るよ」

流石に少女はなんとなく不安になり、ドアノブに手を掛けて部屋に入った。
何故なら、その部屋の主が不在だ
なんてことは、普通あり得ないのだから。

ドアの向こうには、黒い壁に埋め込まれた大きな液晶の光が差す、薄暗い部屋が広がっていた。
そんな黒い部屋に、ただ一つ白い物体が横たわっていた。

「なによ。いるじゃない」

その横たわっている物体に、少女は歩み寄っていった。

「いるならいるって言いなさいよ」

すると、いやに暑い空気が少女の身体を撫でるのを、少女は妙に感じた。
この時期になると、よく整備された空調によって、薄ら寒いぐらいにこの部屋の空気が冷やされているはずなのである。
少女は眉を八の字にしながら、横たわったままの白い物体のそばに腰をおろした。

「ほら、寝てないで何か言ったらどうな——」

そう言いながら、少女はその白い物体、というのも、真っ白な頭髪に白い肌で、シルクのブラウスを着た人物の、腕を掴んで引き寄せた。

「——の」

そうして、白い顔が少女の方へ向いた。
その白い顔
は、いつも以上に青白く、そしてその目は開いたまま、白目を剥いていた。

失神しているのである。

「あッ」

少女も青ざめた。

そして、数秒の叫び声が響いた。
その声を聞き付けた数人の大人たちが集まってくる。
そして、仕方なく、少女と白い人物は、風通しのよい別室に運ばれていったのだった。

<間>

少女たちが連れていかれた部屋は、晴れた日だというのに、いや、だからこそ、カーテンはすべて閉められ、薄暗くされていた。

「せめてあなたは付いておいてあげてください」

そう少女は言われて、ただ二人きり、部屋に残されたのだった。
少女は、早急に用意されて綺麗なベッドに寝かされた白い人物を見下ろした。
彼が気付いたらどう説明してやろうかと、少女はその顔を眺めながら考えた。
いつもあの部屋から出ないような人物であるから、きっと驚くだろうし、もしかしたら取り乱すかもしれないのだ。
まずは落ち
着いてもらうことが先決か。など、まだ自分自身も落ち着いていられないのにも関わらず、少女は頭を悩ませていた。

<間>

そんなこんなで、外では日が落ち、本格的に部屋が暗くなってきた頃、少女は仕方なしに電灯の絞りをひねった。
あまりに明るいと、きっと眩しがってしまう。だから、結局また薄暗い部屋になった。

するとその時、寝返り一つ無かった白い人物の瞼が、ゆっくりと開いたのを、少女は見付けた。

「あっ。気が付いた?」

白い人物は数回瞬くと、ぼんやりと薄目で天井を仰いでいた。
恐らく、状況がわからずポカンとしているのだろうと、少女は思った。

「大変だったのよ。空調が壊れたのにコンピュータはそのまま動き続けて……とにかく部屋が暑くなってて、あなたはその熱にやられたみたいなの」

少女はベッドに歩み寄りながら、先程大人たちから聞いた状況を説明する。
それを聞いているのかいないのか、白い人物は天井を仰いだまま、微動だに
しない。

「……ちょっと、聞いてるの?」

少女が普段知る彼の様子とはどこか違っているようだった。
それも当然。なんせここはあの部屋ではないのだから。

彼の口が少しだけ動いた。
それを見た少女が、何を言ったのかと問いただすと、小さくうわ言のように一言こぼした。

「…無い」
「無いって何が」
「………」

それ以上は答えなかった。
それどころか、彼はゆっくりと身体を起こして、裸足のままベッドから降り立とうとしたのだ。

「ちょっと、ねえ」

そのまま床に足を付けては、彼はよろよろと立ち上がってしまった。

「まだ休んでなきゃダメでしょ?あんまり体力も無いんだから…!」

少女の制止もまったく聞かない。聞こえないといった様子ですらあった。

「待ちなさいよ!」

部屋の引き戸から抜け出そうとするのを、声を張り上げながら少女は止めに掛かる。

しかし、彼
はあまりにも光に弱い。

夜の廊下は、他の大人たちが困らないように、しっかりと明かりで照らされていた。
一気に開かれた戸から溢れんばかりの明かりが、目に飛び込んだら、眩しくて堪らなかったのだろう。
彼は、思わず怯んだ。

「はいストーーーーーップ!!!!」

少女はその両肩に両手でがっしりと掴み掛かり、引き戸から彼を引き剥がしてから、パタンと戸を閉め直した。
ハアと一息吐くと、少女は項垂れた白い人物に向き直る。

「ホント、手が掛かるんだから……一体何がしたいの?言ってごらんなさい」
「…タブレット」
「ん?タブレット……あ」

少女には彼の口から出た単語に覚えがあった。
思い返えせば、いつも肌身離さず彼が持っていた物があったのだ。
それこそが、タブレット。彼曰く、相棒のタブレット端末である。
そんな、大事な相棒が、あの部屋に取り残されたまま、彼と離ればなれになってしまっているのだっ
た。

「…ごめん。忘れてた」

少女は一言詫びて、チロッと舌先で唇を舐めた。
彼の紅い目がじっとりとそんな少女を睨んでいた。

「あはは……」

少女は苦笑を浮かべながら、その紅い目から目を逸らすように引き戸に向き直り、少し戸を開いて顔だけ出す。
そして大きな声でこう言ったのだ。

「あのぉ、白いのが通るので電気落としてくださぁい!」



<ここまでが話の一区切りである>





僕の部屋には、何でもある。
資源は仮想空間のなかに、いくらでもある。
毎日、毎晩、来る日も繰る日も、ずっと仮想世界を組み立てていた。
どうせ外に出たって、日の光にやられてしまうだけだ。
薄暗いところが好きな僕は、ずっと部屋で過ごしていた。

黒い壁には、大きなディスプレイがいくつか、窓の代わりに居座っている。
今現在の仮想空間はこうなっているよ。と逐一知らせるために、常に動き続ける像を映し続けていた。

僕は、理想の世界を、僕の手で創り続けていた。
そこには、僕のことを、白い幽霊だとか、実験用のネズミだとか言う人はいない。

ただ、柔和な笑みの、攻撃してこない"いい人"たちが、たくさんいるだけの、世界だった。

現実に嫌なものをすべて置いて、この部屋の画面の向こうに理想の世界を創り続けると、それを続けていられなくなるような障害が現れる。

それは、眠気だ。

眠気。眠気は
、重く意識にのしかかっていく。
まだ眠りたくないのに、まだ遊んでいたいのに、眠気は、容赦なく、唐突に襲いかかるもの。

眠気さえなければ————。

いつだってそう思っていた。



白い、白い粒が、叩き付けられるようにして額で弾けた。

——雪。雪が降ったのだ。

ぶつかってパチンと音がした。ハッとして前を見る。

——雪だ。白い雪が降った。
その刹那、強い風が吹いた。
その風に乗せられ、私の身体にぶつかって、雪の粒は絶え間なく弾ける。心なしか、粒も大きくなったように見えた。

——嗚呼、白い冬が、来たのだ。

溜め息を吐く。白い湿っぽい吐息は風に消えた。
早く家へ戻ろう。傘を忘れた私は、そうしなければ風邪をひいてしまうのだ。
雪が降りてくる空は白かった。

——誰がなんと言おうと、にび色なんかじゃなく、白なんだ。嗚呼、白の冬は完全でならなければ。
どうもこんばんはKisyaです。
こちらでは一気に冷え込んできました。風邪を引かないように気を付けなければいけませんね。


さて、そういえばハロウィン過ぎましたね。
本当はハロウィンに向けたイラストを描きたかったのですが、結局やらず仕舞いとなってしまいました。今年は特にやる気が出なかった模様です。

そのように、ここ数ヵ月ほどでしょうか。創作が行き詰まっているのです。

創作の手段は色々ありますが、絵はもちろん、文章、音楽……、そのいずれにしても、なんとなくピンと来ないと、漠然とした、思い通りにならない感触だけがあって、創作によって自分を満たすことは叶わないようになってきました。

今のところ、絵はどうにか形にすることは出来ました。

それは何気ない日常のヒトコマのはずだった。


西日が赤く二人の少女の顔を照らす。二人は後ろに緑っぽい影を引き連れて歩いていた。
この間の四月に高校に入学したばかりの、いわゆる女子高生、山野朱音と、その友人の多田夕夏が学校から帰っているのである。

「もー全然数学がわかんなくってさ。理系のひと頭おかしいでしょ絶対」
「それ。人類の9割文系じゃなかったらおかしいよね」
「ねー」

彼女たちは中学の頃も一緒に帰っていたため、二人して同じ高校に上がったのだから、また一緒に帰っていたのであった。
「じゃ、このへんで」
「またねゆーちゃん。バイバイ」
「バイバイあかっちゃん」

二人は丁字路で手を振りあって別れた。夕夏は北に、朱音は南に歩いていく。

さて、夕夏と別れた朱音は、数分まっすぐ歩いた。
しばらく歩くと教会が見えてくる。教会幼稚園だとかで、子どもの声がした。
この教会を見て右手
に曲がれば彼女の家が見えてくるのだ。
そう、朱音はもちろん右に曲がる。

曲がろうとした、が。

白い猫が一匹、茂みから現れた。くりくりと青い目をしていた。

(あっ、かわいい)

猫は人懐っこい様子で、朱音の顔を見てニャアと鳴いた。
それもそのはず。その猫の首には赤い首輪が付いていた。飼い猫なのだろう。
朱音はしゃがみこんで猫に手を伸ばした。その頭を撫でてやろうとしたのだ。

ニャンゴロゴロ……。撫でてやるとすぐさま喉を鳴らしていた。
なるほどこの猫は相当人慣れしているな。と朱音は思った。誰が飼っているのだろう。とも思った。

すると、撫でて一分もしないうちに、猫は朱音から離れていく。
何故だろうか。付いて行くのには十分すぎるぐらいに、猫はゆっくり歩いていく。
その上、猫は時折立ち止まっては、朱音のほうへ振り向くのである。

(何があるんだろう)

何者かに導かれるかのように、朱
音はその白い猫を追った。


ここは、何処かで見た場所だった。夢で見たような気もする。


辺りは薄暗くなっていた。
朱音が猫を追いかけてたどり着いた場所は、さほど彼女の家からは離れていないはずなのに、ずっと遠くの場所に感じられた。空気感が、雰囲気が、いつもの暮らしから離れたものだった。
街灯が、さっぱり無い。
空気が、軽い。
地面が、ふかふかしている。

目の前に広がる景色といえば、赤と緑のトマト畑!
薄暗いのに、つやつやのトマトが見える!
トマト嫌いの朱音も、つい美味しそうに思えてしまうぐらい、きれいなトマトがたくさんなっているのだ。

でもどうしてトマト畑?そういえばあの猫は何処へ行ったのだろう。
そう朱音が思った矢先、突然暗い空に閃光が走った。

「うわッ!」

朱音が驚いて短く声を上げた。思わず閉じたまぶたを、恐る恐る開くと、また驚いて尻もちをついた。

赤い髪の何者
かが、輝かんばかりに色濃く、トマト畑のなか浮かんでいたのだ。
その何者かの回りのトマトは、より赤く、まるで電球のように輝いて見えた。
これは多分、その何者かが実際に輝いているのだ。

「貴女はどちら様でしょうか」

深く憂いを帯びた声だった。具体的に口から声が出ているというより、この空間自体から響いているような聞こえ方がした。

(というかあの人、そもそも口が無いじゃん…!)

その顔には口は無いようだが、切れ長の美しい眼とスッと通った鼻はあった。眉はよくわからない。
赤髪の何者かは、豊かなまつ毛で大きな瞳を覆ったような、眠たそうな眼で、ほろほろと赤い涙を流していた。涙は一粒一粒が真ん丸になって、きらきらと風に漂っている。

「私は…私は朱音!山野朱音ですっ!」

朱音は虚勢を張るように声を張った。
本当はびくびくしているのを紛れさせるために、頑張っているのだった。

「ヤマノ…アカネ…?」

それが私の名前です!それと、ええと…十六歳の女子高生です!」
「嗚呼、迷い込んでしまわれたのですね。それは可哀想に…」
「まよいこん…えぇ?どういうことですか…?」

朱音が特に気になったのは、"可哀想に"のあたりである。何かよくないことが予想される言葉だった。

「あなたがた人間は、本来此処へ来てはいけないのです。なんせ、此処は聖なる地。それと同時に、此処から一歩外に出れば……」

赤髪の者は、その眼をゆっくり開く。潤んだ赤い瞳が見えた。

「たちまち頭から化け物に喰われてしまうのです。よく此処まで無事だったものですね」

(ば、化け物…!?)

朱音は言葉を失った。自分がとんでもない場所に、どうしてか連れてこられてしまったことを知ったのだ。

「嗚呼、アカネ様。恐れないでくださいませ。貴女が恐れては、頭から食べられてしまいますよ」

赤髪の者は、ゆっくりと二回首を横に振る。

「ご紹介遅れま
して、わたくしは此処の地の妖精。此の土地を護り治める者」

赤髪の妖精はまっすぐに朱音の目を見て言った。

「わたくしの力を、貴女に授けましょう」


懐かしい匂いがした。
やっぱり夢で何度か見た景色だった気がした。


「力を…?」

朱音は、先ほど妖精から聞いた言葉が上手く飲み込むことが出来なかった。

「はい、アカネ様。わたくしは決めたのです。貴女が怪物に食べられてしまわないようにするには、わたくしの力を分け与えるしかないと」
「分け与えるって、どうやって…?」
「どうやって…。難しい質問ですね。ええ、こうやって……」

妖精がちらりと顎を上げると、朱音の回りが唐突に明るくなった。

(えっ、何が起こって…)

「そうですね……いわゆる魔法少女、というものでしょうか。これでせめて頭から喰われることは無いでしょう」
「まっ、まほっ」

朱音はわけがわからなかった。そもそも、魔
法少女なんてものは、創作物の中以外ではあり得ないものだ。それに、この瞬間、自分がなるだなんて、もっとあり得ないと思ったのだ。


「さて、ご機嫌いかがでしょう」
「………」
「何をすべきか、わかっていますね」
「……!」
「………」

そこに朱音はもはやいなかった。
正確には、朱音の身体に朱音の記憶は無かった。

魔法少女たるや、戦うこと無しに、役割を果たすことは出来ないのだ。

朱音は、身を守る力を得る代わりに、トマト畑を護る使命を負った。