父と私が交わした約束。私はその約束から絆を学んだ。

 

今から39年前の師走前なのにとても寒い11月17日の

夜10時過ぎ突然電話のベルが鳴る

受話器を取る母、驚いた表情と言葉に成らない声で

父を電話機まで呼ぶ

父が受話器を手にすると、母は瞳に涙を溢れさせながら俺に

「今、伸也君が亡くなった。その連絡」

何を言っているのか理解できず、電話機の前の父に

目をやると、腰から全ての力が抜けたようにドスーンと

受話器を持ったまま床に崩れ落ちる

「エッ!嘘だろ!間違えだろ!嘘だろう!」

警察の留置所で自ら命を絶ってしまった連絡だった。

 

私も弟も幼いころ、父方の祖母の家へ良く遊びに行った。

そんな時も弟の伸也は、何の恥ずかしさもなく、

私の事を親戚に自慢する。

「おばあちゃん!

俺のお兄ちゃんは魚を上手に食べるんだよ!

お母さんが言っていたけど、天皇陛下の前で食べれる位、

上手なんだよ!

おばあちゃん!僕のお兄ちゃん凄いんだ!」

「おにいちゃん!カッコいいー!」

 

現在の母は私が13歳、弟の伸也が9歳の時に

我が家に嫁いできた。

というのも生母は私が12歳弟:伸也が8歳の時、

食道癌でこの世を48歳で去ったからである。

 

生母がなくなる前日、日の暮れるまで弟の伸也と、

生母が入院している病院の近くで遊んでいた帰り道でのこと、

急に涙をボロボロ流しながら弟は

「お兄ちゃん!これからお母さんに会いに行こうよ!

今日会わないとズーっと会えなくなっちゃうよ!

お願いだから、お願いだから会いに行こう」

まさか、入院してすぐにこの世を去るとは

思っていなかった私は、お腹が空いていた事もあり

「お母さんは大丈夫!今日はもう遅いから、

明日でも、お父さんに連れてきてもらおう」

今もその時、弟と生母を逢わせて上げなかったことに

深く後悔している。

その晩、夜中に起こされ病院に連れて行かれ、

病床での意識が遠のく生母に面会したのが

最後の対面となってしまった。

「伸也。ごめんな。本当にごめん!

お母さんに会いたかったよな」

今でも心から後悔している。

 

弟伸也の死を知らされた時、様々な思いが全身を包む!

心が引き裂かれそうだ!

沢山虐めた!数えきれないほど八つ当たりした!

 

私は押入れに頭を突っ込み大泣きした。

弟に薄情だった自分を深く攻めた!

そんな姿を見た父が私の背中を摩りながら

「兄ちゃん!悪かった!俺が至らぬばかりに!

悪かった!許せ!」

「兄ちゃん!お前に約束する!

俺が死ぬ時、必ず伸也は迎えに来てくれる。

伸也が迎えにきてくれたら、俺は昏睡状態であろうと、

ボケて意識がハッキリしていなくても、どんな状態でも、

『ニター』って微笑んでやる!だから泣かないでくれ」

この様な言葉で大泣きする私に父は約束した

 

弟が亡くなって27年の月日が経ち、8月の暑い日、

父は食道癌で余命2ヶ月と診断される。

妻は家に帰りたがる父の願いを叶えるべく、

父を介護する為、仕事を辞め、家で看取る事を選択した。

念願叶い検査入院を終え、家に帰ってきた父は、

毎日、外で元気に遊ぶ子供たち眺めるのが好きだった。

子供たちの笑い声が好きだった。

家族にとって、このまま時間が止まっていてくれればと

願うほど穏やかな時間が刻まれていく。

ゆっくりと静かにゆっくりと

 

余命宣告されていた2ヶ月を1か月も過ぎたある日、

私は新入社員の歓迎会で居酒屋で会社の仲間と

酒を酌み交わしていた。

すると突然、妻からの電話、おおかた予想はつく。

「おじいちゃん、亡くなっちゃった。

隆一が迎えに行くから帰ってきて」

暫くして長男が車で迎えにきてくれて父の最後の様子を

説明してくれる

「俺、今日は不思議と遊びに行く気もせず、

おじいちゃんと反応がなくても

沢山、話がしたかった。兎に角、元気になって貰いたかった。

だから、ベットに跨って、『病気が治ったら温泉に行こうね』とか

朋代の絵を見せながら『おじいちゃん!朋の絵は凄いだろう!

天才だよな!』

なんて、ずっと話していた。表情は変わらなくても、

おじいちゃんには俺の声が絶対、聞こえていると思ったから。

そして俺はおじいちゃんに

『ちょっと晩飯食ってくるからまた話しようね!

ちょっと待っていてね』って、おばあちゃんと少しの間、

交代してもらったんだ」

「隆一!有難うね!」

「そしておばあちゃんが息をしていないおじいちゃんに

気付いたんだ」

「そうか。。。」

「でもね、お父さん良かった~!おじいちゃん、

俺がベットから離れる時、ニッコリと微笑んで

いたんだよ!ニッコリとね!何かを観ているように!

最後の最後に微笑んでいた」

「きっと隆一の話が嬉しかったんだよ!そして、伸也おじさんが、おじいちゃんを迎えに

きてくれたんだね!隆一、有難う」

丁度父が息を引き取ったのは、その日は弟の命日と同じ

11月17日。

 

「兄ちゃん!伸也が迎えにきてくれたら、俺は昏睡状態で

あろうと、ボケていようと、どんな状態でも、

『ニター』って微笑んでやる!約束する」

 

21歳の頃の私と交わした「約束」だった。

 

人は生を受けそしていつかこの世から去る。

命とともに家族の絆を繋いでゆく。

私は今世、この家に生まれ、家族の絆の尊さを

教えて貰っている。

そんな気がする。

 

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