ランス・アームストロングとは何者か? | 木曽チャリのブログ

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今日の記事は、めんどくさいです。

…と言うか、基本、私と言う人間は、
オタク気質で、理屈っぽい、
めんどくさい人間なので、
著者の性格が、如実に表れた記事とも言えます。

ので、事前に、めんどくさくない部分、
伝えるべきコトだけ、先にお伝えします。

ランス・アームストロングのドーピング・スキャンダルを描いた映画、
9/24~10/7 塩尻 東座で上映されます!
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ロードレースの全米チャンピオンから、
世界王者にまで上り詰めた直後に、
全身癌となり、生存率50%と言う過酷な状況に置かれながらも、
奇跡の復活を遂げ、
その後、前人未踏のツール7連覇を成し遂げた後に引退、
無事、英雄譚を結んだと思いきや、

2009年、驚きの現役復帰と、
その後のドーピング・スキャンダルに揺れ、
ついには、ドーピングを自ら告白。
ロードレース界から永久追放となった人物。

ロードレース史上、最大の“巨人”と言っていい、
アームストロングという人物は、果たして、何者だったのか?
その考察がなされる作品らしいです。
(まだ見てね~から、解らないけど)

…で!、まず、特筆したいのは、
全国的にも上映館数が少なく、
メジャーなシネコンでは、まず、かかるコトがない、
地味ながら見る価値ある作品が、
地元で見られると言うコトの幸運を、
みんな、解ってる?って点です。

私は、アメリカなどで、スゲ~話題になってても、
松本近郊のシネコンでは上映されない映画を、
(交通費を合算すると、映画1本、1万円近くかかる!)
それが、地元で見られるんですよ?
なんて、コンビニエンス!
素晴らしいぢゃありませんか!

と言う、地味ながらも、見る価値のある映画を、
塩尻-東座では、常に上映してるんで、
本当の映画とは、どういうものか?を
体験する意味でも、是非とも脚を運んでみて下さい。

本作の他にも、東座で上映予定の、
『シークレット・アイズ』と、
『ニュースの真相』は、絶対、見に行きます!

(だいだいさ~、こんなメジャーな映画すら、
シネコンでかからないって、おかしいだろ?
しょ~もないアイドル映画ばっか、かけやがって!
…でも、『シン・ゴジラ』は、超面白かったけど。)

はい、以上、“めんどくさくないコーナー” でした。

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さぁ、ここから本領発揮!、
めんどくさいゾーンに突入です!。

すげ~長文ですし、
言ってるコトも、ぐちゃぐちゃしてて、まとまりがないし、
ましてや、エンターテインメント性なんか皆無なので、
お読みになる方は、予め覚悟を決めて下さい。

…理屈っぽいの、お嫌いな方は、ここで止めた方が、
時間の有効活用が可能だと思います。


実は、6月に記事を書いたんですけど、
自分で書いたくせに、「めんどくせぇ話!」と思って、
途中で投げ出して、非公開にしてたんです。

それが、昨日、中畑監督より、
上記の映画のチラシを貰ったので、
「じゃぁ、ウンチク自慢してやろ~」と、
保留未公開記事を、表に引っ張り出した…と言う次第です。

と言うワケで、
本作 『疑惑のチャンピオン』には、
下敷きになってると思われる、ドキュメンタリー作品があります。

『ランス・アームストロング ツール・ド・フランス7冠の真実』
…邦題は、やたら長いんですが、
原題は、至ってシンプル。

“The Armstrong lie” (アームストロングの嘘)

これがですね~、
映画としては、あんまし、面白くないんですけど、
本作から見えて来る“真実”が、
結構な衝撃だったので、
ご紹介してみようと思ったのでした。

本作を、「見てみたい!」と言う方は、
ここから先は、読まずに、
まずは、見た方が良いと思います。

Amazon.のアカウントをお持ちでしたら、
すぐ見られますし、(リンク↓)


英語に堪能な方は、字幕なしの原版を、
YouTubeで、無料で見られるみたいです。


この映画を監督したのは、
アレックス・ギブニーという監督で、
ドキュメンタリー映画の業界では、
その名が轟く名監督で、アカデミー賞の常連です。
(受賞は2回)

この名監督に、ランス側からオファーが行って、
2009年、ランスが、突然の現役復帰を宣言して、
コンタドールをエースにしてた当時のアスタナに、
無理矢理割り込んで、ツールに出ちゃった、
その “復活劇” を撮影してくれと頼んだらしいのです。

しかし、その年、ランスは勝てず、
結果は、3位に終わったのですが、

その2年後、ランスは、
ドーピング疑惑で追い詰められた末に、
なんと、オプラ・ウィンフリー相手に、
「ドーピング、やってましたけど何か?」って、
ぶちまけちゃったんですね。

ギブニー監督は、いい面の皮です。
感動の“英雄の復活”を作るはずの映画が、
主人公は、とんだペテン師だった!と言うオチです。

で、ランスから、「申し訳なかった」と、
お詫びの電話を貰ったギブニー監督は、

「あんたは、私に借りがある。
カメラの前で、インタビューに答えてくれ」と、

ドーピングがバレちゃった後のランスに、
再びインタビューをして、
それを、ツール期間中に撮影した映像と一緒に、
ランスを告発し続けた人々の話も付け加えて、

「ランス・アームストロングとは、どんな人物か?」

と言う、主人公は同じでも、
論旨が真逆の暴露映画として公開したのです。

本作で登場するのは、
ランスのドーピング疑惑を告発してた、
暴露本の作者が2名、
『シークレットレース』の著者も出てます。)

ランスのツール連覇を支えたブリュイネール監督、
“ドーピング仲間”の、
ジョージ・ヒンカピーやフロイド・ランディス、
タイラー・ハミルトンなどの、チームメイトに加え、

ドーピングを指導してた、
悪名高き、フェラーリ医師本人(!)、

果ては、UCI(世界自転車競技連合)の
当時の会長までが、
ドーピングの隠蔽に加わってた証言まで飛び出します。

まぁ、その“闇”の深さたるや、凄まじいものがあって、
ナイーブな正義感をふりかざすなら、
「どこまで、腐ってやがるんだ!」
と、憤りを感じるべきなのでしょうけど、

でも、当のランス・アームストロング本人は、
ドーピングに関しての罪悪感は、
これっぽちも無いんですよね。

ドーピングの事実を語りながら、
「ああ、やってたけど、だから?」みたいな、
実に太々しい態度を崩しません。

それを、傲慢で、身勝手な
クソ野郎だと捉えるコトもできますが、
でも、映画を観てると、
そんな単純な話じゃないコトが見えて来るんです。

まず、ドーピングですが、
コレは、ご承知の通り、ツールが始まった、
100年前から、やってたコトで、

最初は、アルコール、やがて覚醒剤と、
使うクスリの種類が変わっただけで、
ず~っと、やられてたコトなんですね。

で、薬そのものが違法になったり
(コカイン、覚醒剤など)、
薬は合法でも、競技に使うコトが違法になったり…と、
(ドーピング規制)
後からルールが作られたのですけど、

『シークレットレース』の中で、
タイラー・ハミルトンも告白してましたが、
ドーピング無しでは、全然、勝負にならない、
競技が、そう言うレベルになっちゃってたから、
勝利を狙うなら、ドーピングは必須。

しかも、当時の検査技術は精度が低く、
違反薬物を検出しきれない、
曖昧な検査しかできなかったので、

違反薬物の代謝速度を熟知している、
プロの医師の指導があれば、
ドーピング・チェックを誤魔化すコトなんか、
屁でも無かったそうです。

…やらなきゃ、勝てない、
やってても、滅多にバレない…、
ってコトなら、そりゃ、やるわなぁ。

アマチュアのホビーレースじゃないんだもの。
自分たちの生活がかかった、
勝てば天国、負ければ地獄の、
本物の真剣勝負ですからね。

だから、“当時”の優勝候補は、
1人残らず、ドーピングをやっていて、
お互い、それを秘密にする、“沈黙の掟”が、
ロードレース界の、暗黙のルールだったワケで、

ランスに罪悪感が無いのは、根本に、
「だって、みんな、やってたし!」
「俺だけじゃね~し!」
と言う現実を、現場で見てた張本人だからでしょう。

そう言う前提で、
ランス・アームストロングという人を、改めて見ると、
嘘つきで、威圧的で、喧嘩っぱやいクソ野郎だけど、
世間で言うほど、悪党なのか?と疑問がわくのです。

彼を悪し様に罵るコトって、
ロードレースを喜んで見てるファンとして、
凄く偽善的なんじゃないの?と、
そう思えてくるのですよ。

本作の中で、ランスは、そらも~
あっちからも、こっちからも、非難の嵐。

「こんなに、イケしゃ~しゃ~と嘘をついてた!」
「金に物を言わせて、私らを脅迫し続けた!」
「そのくせ、自分だけ美味しい思いをしてた!」
と、罵詈雑言の集中砲火に曝されてましたが、

「とか言いつつ、選手全員、
進んでドーピングしてたやん!」と言うコトが解ると、
同じ穴のムジナが、途中で手のひら返して、敵に回るって、
それはそれで、悪党の仁義に反してるんじゃねぇの?
とも思えて来るのです。

本作で興味深かったのは、
2009年のツール復帰戦で、
本気で総合優勝する気だったランスは、
終盤の山岳ステージで遅れを取り、
勝てないコトが見えて来ると、
早々に敗北宣言をして、
表彰台狙いに切り替えるんですよ。

で、ここから驚異の粘りを見せて、
当時、登りでも強さを見せ始めてた、
ブラッドリー・ウィギンズ(2012年ツール制覇)を、
登りで引きちぎり、総合3位を獲得するのですけど、

アレックス・ギブニー監督が、
「2009年もドーピングしてたの?」と聞くと、
「いや、あの時はシラフだった」と言い切るのです。

…うっそでぇ~?、ホントにぃ~??

現に、難関山岳ステージの直後、
採血された血液サンプルは、
競技後、減るはずの赤血球の量が、
全然、減ってなかった…と言う、
怪しい結果が出てるのですが、 

ランスは、
「脱水症状になってる競技直後に採血して、
マトモな数値が出るわけがない。
医学的に、あんな採血テストは意味が無い」
と一蹴。

これまで、山ほど嘘ついてきた人間が、
今さら、嘘を重ねる意味があるのか?…と
そう考えれば、ランスの言葉は真実かも知れません。

でも、今まで嘘をついて来た奴は、
これからも、きっと嘘をつき続けるだろう…と
そう捉えれば、“嘘つきランス、再び!”ってコトになるのですが、

映画では、そのどちらとも結論づけるコトはなく、
見た観客が、判断をしてください…と、
「でも、タイトルは、“The Armstrong Lie”だけどね…」
って終わり方をするんですよ~。
面白いでしょ?

で、で、この映画、最大の謎は、
「なんで、2009年大会に復帰しようとしたのか?」
なのですよ。

言ってしまえば、ツール7連覇で、
ドーピングもバレずに、上手いこと引退できて、
後は大人しくしてりゃ~、悠々自適、
豪華なセレブ生活を楽しめたでしょうに、
四十路も近い歳になって、
なんで、また、ツールに舞い戻ったのか?

前々から疑いの目で見られれたツールに舞い戻り、
いきなり3位入賞なんて偉業を達成しちゃうから、
アメリカのアンチ・ドーピング組織に眼を付けられて、
結局、全てのキャリアがパ~になっちゃうワケですが、

そんな無用なリスクを冒した理由を、
映画の中で、ランスはひと言、
「勝ちたかったから…」と言ってるんですよ。

このひと言が、この人の、
人物像を的確に物語っていると思いました。

と言うのは、2009年当時、
ツール復帰の理由をメディアに問い詰められて、
ランスは、こんなコトを言って、大炎上させたんですよ。

「サストレが勝てるなら、俺でも勝てる」

…“カルロス・サストレ”とは、
2008年大会の、総合優勝を飾った選手です。

サストレは、
当時、ビャルヌ・リース率いる、チームCSCで
エースとして起用されたベテランですが、
“ディーゼル・エンジン”とあだ名されていて、

突出したスピードは無いけど、
長丁場のレースで、後半になってもヘタレず、
粘り強く一定ペースを保ち続け、
ライバルが疲弊して行く中、1人、生き残る、
と言うタフネスさが強みの選手でした。

で、勝った2008年は、
チームCSCの黄金期と言っていい、
超強力なアシスト陣がそろっていて、
ファビアン・カンチェラーラ、
イエンス・フォイクト、
アンディ&フランク・シュレック兄弟など、
有力選手勢揃いの中、
文字通り、チーム力で、
地味なサストレを優勝に導いたのでした。

その様子を見てたランスは、
「コレなら、俺でも、まだイケんじゃね?」と思ったんですね。

同時に、ランスの引退で、
小児癌基金、Live Strongの活動に陰りが出てて、
資金集めに、もう一花咲かせたい的な、
ソロバン勘定もあったらしいのですが、

…私の個人的な考えですが、
ランスって人は、とにかく、勝てるチャンスには、
尋常成らざる情熱(狂気)で、勝ちを獲りに行く、
そう言う、アスリート魂の塊みたいな人なのだと思うんです。

彼にとっては、2位なんて意味のない、
「最速の負け犬=Fastest loser」なのでしょうね。

だから、どんなレースも、出る以上は勝ちに行く!。
しかも、ドーピングが、
「やって当たり前」だった時代を生きてきた経験から、
おそらく、2009年のツールでも、
その後に出た、トライアスロンでも、
「できるコトは、何でもやる」と言う信念を貫いたのではないか?
と推測するんです。

で、私の結論としては、
ランス・アームストロングって人は、

1、勝利に妄執する、病的な負けず嫌い。

2、勝つ為には手段を選ばない、賢くも狡猾な人物。

3、ツールに、運動生理学など、
科学的なアプローチを取り入れ、
人間くさく、曖昧だった欧州ロードレースを、
システマチックなプロ競技に進化させた人物。

4、同時に、不屈の精神で癌を生き残り、
その経験から、小児癌を無くそうと尽力した善意の人でもある。

ってコトで、清濁併せ持つ、
当たり前の人間だった…と思うのですよ。

ただ、“濁”を利用して得た成功が、
あまりに巨大だったので、
今さら罪を告白したところで、
誰も許してはくれなかった…と言う、

キリスト教文化圏らしからぬ西欧社会の反応を、
まったく予想できてなかったトコロが、
トンチンカンと言うか、世間知らずと言うか、
間抜けと言うか、ちょっと笑える…とも思えるのです。

…数々のスポンサーから、
天文学的な訴訟を起こされてるようですが、
そんなの、告白する前から、予想できたコトでしょうにね?

…まぁ、デビッド・ミラーや、コンタドール、バルベルデなど、
ドーピング違反で謹慎喰らっても、
数年で復帰できた前例が、いっぱいありましたから、
そんな“温情判決”に期待する気持ちも解りますけどね~。

なので、彼がツールを7連覇したと言う実績は、
私の中では、今も活きてます。

だって、おそらくは、当時のライバルのほとんども、
ドーピングには手を出してたと思うし、

(何名かは告白もしてるし、
フランスの英雄、ベルナール・イノーだって、
どうだか解りませんぜ?、正直なトコロ…)

みんながドーピングやってた中で、
勝ったのは、ランスなんだから、
最強だったのは、ランスでしょ?

その事実は、変えようがないですよ。

だから、尊敬はしないけど、
凄い人物だったとは思います。
まさに、生ける超人だったと。

ランスが残したのは、
奇しくも、リカルド・リッコの捨て台詞、
「ドーピング規制なんて、ザルだ!」という事実と、

ランスが現役だった時代、
大会主催者も、UCIも、チームも、選手も、
全部がグルで、ドーピング隠しをしてたのに、

ある時から、突然、“正義に目覚め”て、
その流れに置いてけぼりを喰らった選手たちが、
生け贄にされた…と言う事実だと思います。

…マリファナも自由化される時代なんだから、
そろそろ、生命や身体へのダメージが少ない、
合法的なドーピングは、許可したらどうよ?

ドーピング・コントロールの為に、
風邪薬ひとつ、飲めないなんて、
その方が、よっぽど異常なんじゃないの?

先日の、メイタン・梅肉エキスのドーピング違反事件も、
1人で、何百、何千って言うメイタンを飲まなきゃ、
検出されないという、超微量な話だったんですって。
その為に、何万という製品を回収するハメになった
企業だって大変でしょうに。

何でもカンでも、清廉潔白ばかり求めてたら、
「水清くて不魚住」になっちゃうと思うんですけどね。

と言うワケで、
ランス・アームストロング・スキャンダルは、
図らずも、清廉潔白原理主義者と、
現実主義者とを分ける、
踏み絵になっているな~と思うのでした。

さぁ、あたなの心には、何が残りましたでしょうか?
(懐かしい~)

おしまい。

長々、お付き合い頂き、ありがとうございました。