フランス領ニューカレドニアで起こった暴動の背景
暴動の発端となったのは、地方選挙権を巡る憲法改正があります。フランス議会は、ニューカレドニアに10年以上暮らすフランス人に地方選挙への参政権を与える憲法改正を進めており、これに対して独立派が強く反発しました。
暴動は、2024年5月13日からヌメアやその周辺で発生し、多くの店舗や車両が放火されるなどの混乱が生じました。
この暴動により、憲兵1人を含む4人が死亡し、フランス政府は非常事態宣言を発令しました。
独立派は、憲法改正によって独立が遠のくと感じ、抗議活動を展開した結果、暴動に至ったとされています。
また、暴動の影響で空港の運用が停止され、一部地域では夜間外出禁止令が出されるなど、治安維持のための措置が取られました。
独立を目指す住民は、選挙制度の変更により、今後の住民投票で不利になると懸念しているようです。
2020年の"独立を問う住民投票"では、独立反対が53.26%、賛成が46.74%という結果でしたが、選挙制度の変更が独立派にとって不利な状況を作り出す可能性があると見られています。
●ニューカレドニアの独立気運の高まり
ニューカレドニアの独立気運が高まり始めたのは、1980年代に入ってからです。
この時期には、メラネシア系住民を中心とした独立派組織「カナク社会主義民族解放戦線」(FLNKS)が結成され、フランスからの独立を求める運動が活発化しました。特に1984年には、FLNKSが一方的に独立を宣言し、緊張が高まりましたが、フランス政府はこれを認めませんでした。
その後、1988年の「マトニョン合意」と1998年の「ヌメア合意」により、独立に向けた段階的なプロセスが設定され、独立に関する住民投票が行われることになりました。
これらの合意は、ニューカレドニアの未来についてカナク人と非カナク人の間で対話を促進し、独立を目指す運動に新たな方向性をもたらしました。
2020年の住民投票では、独立反対が僅差で勝利しましたが、独立を求める声は依然として強く、今後も独立に向けた動きは続くと予想されます。
ニューカレドニアの独立問題は、地域の民族的・文化的アイデンティティ、資源の利用、そしてフランスとの関係など、多くの複雑な要素が絡み合っています。
●フランス政府にとってのニューカレドニアの重要性
フランス政府がニューカレドニアを失いたくない理由はいくつかあります。
まず、ニューカレドニアはレアメタルであるニッケルの重要な産出地であり、世界のニッケル供給量の約25%を占めています。
ニッケルは電子機器の製造に不可欠であり、経済的価値が非常に高いのです。
さらに、フランスはニューカレドニアをインド太平洋地域での戦略的な拠点と見なしており、中国の経済的進出に対する危機感を強めています。
中国は太平洋地域での影響力を拡大しており、フランスはこの地域での自国の存在感を維持したいと考えています。
また、ニューカレドニアは高度な自治を享受しているものの、国防や教育などの分野ではフランスに依存しており、フランスから"多額の補助金を受け取っています"。
フランスは"1853年"にニューカレドニアを領有し、以来、この地域との関係を維持してきました。
これらの理由から、フランス政府はニューカレドニアの独立を望んでおらず、地域の安定と経済的利益を守るために残留を支持しています。
ニューカレドニアの独立問題は、"地政学的な要因と経済的な利益"が複雑に絡み合っているのです。
●資料:フランスの海外領土(植民地?)
フランスは13の地域をフランス領として支配している。
グアドループ /マルティニーク / フランス領ギアナ / レユニオン / マヨット / サン・マルタン / サン・バルテルミー島 /サンピエール島・ミクロン島 / ニューカレドニア / ウォリス・フツナ / フランス領ポリネシア / クリッパートン島 / フランス領南方・南極地域