【衝動的に決定を下す傾向】

脳は時に冷静さを欠き、衝動を優先させる傾向があります。


**脳科学の視点**では、衝動性はドーパミンやセロトニンといった神経伝達物質の活動によって賦活・抑制されるとされています。

これらの脳内物質は快楽や報酬に関わり、人間の行動に密接に関係しています。脳の中心部分が活動的になると、衝動性が本能に近い形で現れると考えられています。


**行動経済学の視点**では、人間の意思決定が完全に合理的ではないこと、すなわち「限定合理性」を認めています。人々は複雑な判断を簡単なルールに基づいて行う(ヒューリスティック)が、それによって系統的な誤り(バイアス)が生じることがあります。


例えば、「今だけお得!」「見切り品」という言葉に引き寄せられて衝動買いをしてしまったり、有名人になりすまし、安心を誘う詐欺などに踊らされるなど、冷静に考えればおかしいと思うことに引っ掛かってしまう、一見非合理的な行動が多く見られます。


これらの視点から、人が勘違いや衝動によって決定を下すことは、脳の生物学的メカニズムと心理的要因が複雑に絡み合っている結果と言えるでしょう。衝動的な行動を理解し、コントロールするためには、これらの科学的知見を活用することが重要です。


【人間の衝動的行動と祖先の関係】
人間の衝動的行動が祖先のサバンナでの生活から遺伝的に受け継がれているという考え方は、進化心理学の一部で議論されています。


この理論は、私たちの祖先が生き残るために迅速な反応や即座の決断を必要とした環境で進化したため、現代人も同様の衝動的な傾向を持つというものです。


例えば、危険を感じたときに即座に反応する能力は、捕食者から逃れるために重要でした。このような状況での迅速な行動は、生存に直結していたため、遺伝的に有利な特性として受け継がれた可能性があります。


しかし、衝動的行動に関しては、遺伝的要因だけでなく環境的要因も大きく影響していると考えられています。行動遺伝学の研究では、行動に対する遺伝的影響は広範であるものの、環境的影響も強い役割を果たしていることが示されています。


また、衝動性の形成には遺伝要因と環境要因の交互作用、すなわち、遺伝環境交互作用があることが指摘されています。これは、遺伝的傾向と個々の経験が相互に作用して、個人の行動パターンを形成するというものです。


したがって、衝動的行動が遺伝的に受け継がれているという考えは一定の根拠を持っていますが、それは遺伝だけでなく、環境や個々の経験との複雑な相互作用の結果であると言えるでしょう。


現代の生活環境は祖先のサバンナとは大きく異なるため、衝動的行動の表れ方も変化している可能性があります。


とはいえ、人間が原始の衝動を完全に捨てられてはいないのも事実です。

本能的な衝動的な行動が上位に建つこともしばしばあるでしょう。人間は動物でもあり、他の動物と完全に決別できていないからであります。