サンタクロースとナマハゲ
冬至の頃になると 夜と昼のバランス変わり夜の時間が長くなります。

 昼と夜のバランスが崩れるこの時期には生者と死者の力関係のバランスも崩れて、死者たちが 生者の世界に侵入してきます。

そのため、冬至の頃の祭りには死者に扮した仮面の若者が大声を出し生者を威嚇しながら町や村を歩き回るようになります。

そこで人々は死者の例を表した 畏敬の存在たちに様々な贈り物を与えてご機嫌をとり、お引き取り引りいただき、再びこの世のバランスを回復しようとするお祭りを行いました。

あの世から出てきて日の浅い子供や若者が暴れ霊として、この世をかきみだそうと祭りの世に異形の仮面をと衣装をまとって、異界の存在を表した者たちが騒音や大声で村を練り歩くのです。

ハロウィンなどでも同じような意味合いが込められています。こうやって家を訪問する死者の霊を表した異形の者たちに親切にすると福がやってくるがやってくるという信仰で、我が国には「ナグコハイネカー」と鬼の面と藁の衣装をまとった若者が家々を廻るナマハゲや、地を這うようように舞う「えんぶり」などが冬の祭りとして有名です。

こういう の祭りをキリスト教はうまく取り入れ キリスト生誕祭である クリスマスに取り込みました。

キリストがお生まれになる冬至の頃には世界は闇が多いく悪魔や死霊が徘徊すると考えられていた。
そこにイエスが誕生することによってこの世界には光がもたらされたことになった。

こうして、ヨーロッパのキリスト教、世界ではクリスマスを の祭りが行われたのですところが、19世紀の資本主義社会になると、このような暴力的とも言える悪霊に扮した若者の行動は、批判的に見られるようになり、都市部から次第に祭りの構造が変化していきます。

祭りの主役だった子供が家の中にこもっていい子でいると家の外の闇から「むち打ちじいさん」がやってきて 子供を脅しながら、贈り物を届けてくれます。

この「むち打ちじいさん」にはまだ死霊の雰囲気が残されていましたので、次第にそれもまた、白い目が注がれ、後に登場したのが、 キリスト教の伝説の中で、子供たちの守護神と考えられてきた「聖ニコラウス」で、こうして 「むち打ち じいさん」にとって代わり、優しい顔をした白髪の聖人、セントニコラウスのサンタクロースが登場することになったわけです。

 冬は 古代の異教世界では贈与の季節と考えられてきました。

盛大にお祝いの祭りが繰り広げられ、祭りの日には、贈り物を交換し合うのでした。それは「贈与の祭り」の一環でした。

サンタクロースが子供に贈り物を持ってきてくれるのも その前身である祭り 、冬の祭りにおいて子供や若者が扮した死霊に贈り物をするというのも、 共同体同士が盛んに贈り物の贈与合戦もするのも、冬は贈与の季節という未開社会からの「野生の思考的」な感覚が残されているからです。

そこに目をつけたのが、近代の資本主義でした 冬は贈与の季節という感覚に手が加えられ、クリスマスは盛大な贈与合戦が繰り広げられる祭りへと変貌したのです。

 現代の経済システムですら新石器時代 以来の普遍的思考方法を土台にしているわけですから「野生の思考」を遅れた不完全な思考と言って済ますことはできないと、レヴィ=ストロースは記しています。

(レヴィ=ストロース「野生の世界」より多くを引用)