都心にある洒落た佇まいのそば屋


通りにお品書きが置かれていた


値段が書いていない


千円がポケットにあり


急ぎの打ち合わせの前に軽くすすっていこうと思っていた


値段が書いていないから高いかも知れないと思った


まさか もりそば一枚千円でおさまるだろうな




のれん をくぐり、席に着くと注文聞きが来た


心配だったので



「もりそばはいくらですから」と尋ねた


千円以上だった


てやんでーと踵(きびす)を返した


蕎麦ってのはなー


 高けー金取るもんじゃねー


貧しい食いもんなんだっつーの


最近の蕎麦屋ときたら気取りやがって


なっちゃねー


と下町の頑固じじーの援護射撃を聞いた気がした



 

 

 

お袋はそば打ち名人だった。