無事に高校進学を果たして念願の空手部に入った。
でもやはり1人で入るのは勇気がたりずに、同じ中学から進学した友人を半ば無理矢理一緒に見学に連れていき、そのまま入部という流れになった。今思えば友人にしたらはた迷惑な奴だったに違いない。
最初は道着も注文してからすぐには届かずに道場の隅の方でひたすらなんたら立ちや補強をやり続ける。
同じ1年生は私を含めて5人だけ。私と友人以外は経験者ですでに先輩達と同じメニューで練習を繰り広げていた。それを横目で見ながらひたすら補強を続けていた。腕立てやらは中学生からやっていたおかげでそつなくこなせたが、『マキワラ』という拳を鍛錬するという板にひたすら正拳突きをするのは痛かったのを覚えている。なにぶん拳から血が出てニヤリとしていたレベルの人間だったののが血が出ようがなんだろうが全力で殴らないと先輩の怒号と蹴りが飛んでくる環境に一気にレベルアップである。
でも日々の地味な練習もしんどかったが嫌ではなかった。
ただ先輩達の組手などを見ていて違和感を感じていた。


『…テレビで見ていた空手となんか違う気が…』
そう私が見ていた空手とは違った。大雑把にいうと私が見ていた空手はフルコンタクト空手。おもっくそ殴り蹴りして倒すもの。高校の空手部は伝統空手。突きや蹴りをポイントとして打てば引かなければならない。
でもその事実にちゃんと気づくのはもっと後々のことであった。
テレビで見た空手がかっこよかった。
それだけでやってみようと思った。でもどこに道場があるかもわからず(当時はインターネットなどもないので)、そして1人で行く勇気もあるかと言えばそれほどなく、うちのじいちゃんが昔空手をやってて話を聞きながら1人で真似事的なことやってみたりしてた。壁に正拳突きをして血が出たらニヤリとして喜んでたり。
そんなことをしながら高校進学の季節になってきた。『空手部がある学校に行けば部活で空手ができる!』そんなことを思ってみたりしてた。まぁ勉強もろくにできなかったが担任の先生には気に入って頂けてたのでたまたま空手部のある高校の指定校推薦というやつをもらえた。98%受かると言われ、残りの2%にならないように家庭教師などもやってみた。まぁやってはみたものの解らんもんは解らん。でも解らんもんは解らんなりに受かった。(入学したら周りはもっと解らん人にだらけだった)
そして念願の空手部に入ることとなるが…これが悪夢の始まりであった。
中学生時代はバスケットボール部に入っていた。別段強いチームでもなく今思うとだらだらと練習をしていたんだろう。
でもその時は一生懸命やっていたと勘違いしてた。試合に負けて泣いたりもしてたけど泣くほど努力もしていなかったのだからちゃんちゃらおかしい話だ。
三年生の夏に引退をしてやることがなくなり、とりあえずチームプレイは嫌だと思うようになった。
何か体を動かしておくために腕立てを毎日やることにした。何故体を動かすのに腕立てなのか分からないがなにぶん中学生が思いつくことだ。たぶん適当なやり方だったのに20回くらいしかできなかったように思う。

いつものように腕立てをして風呂に入って上がると母親がテレビを見ていた。訳もわからず見ていると、どうやら極真空手の100人組手というものらしく目が釘付けになった。
当時プロレスとボクシングくらいしか見たことがなかったが、道着を着て殴り合ってる姿をカッコイイと思った。
まさかこれが今後の人生を大きく左右するなんて全く思ってもいなかった。