何秒でどのウイルスを不活性化できるのかが大事 | 名駅騎士面アーケード

名駅騎士面アーケード

名古屋駅の駅西銀座通り商店街の非公式ゆるキャラ(ご当地キャラ?)であります。鋼の頭と頑なな意志の「日本一固いゆるキャラ」として、昨今では新型コロナウイルス対策の為に活動中であります。
できるだけ科学を分かりやすく説明しているでありますよ。

これまでも新型コロナウイルス関連で様々な消毒方法やエタノール濃度の説明を行ってきたであります。

日々様々な除菌グッズを発見しては、論文とエビデンスを調べているであります。

そんな中、ウイルスについて不活性化の理屈の落とし穴について触れたいと思うでありますよ。

 

まず、新型コロナウイルスが物質に付着した場合の最大残存期間はプラスチックの72時間であります。

https://news.yahoo.co.jp/byline/ishidamasahiko/20200414-00173146/

米国の国立アレルギー・感染症研究所などの研究グループの研究結果。

これを見ると、銅の表面に付着したコロナウイルスは比較的早く不活性化しているでありますね。

先日の銅イオン水についてのウイルス不活性化の原理の理屈はこれでありました。

 

が、これは逆説的に見るならば

『段ボールは24時間で新型コロナウイルスを不活性化できる』という主張さえできるであります。

ここで思うのが、そもそもの不活性化の理論について。

「除菌」とか「消毒」とか「ウイルス不活性化」とか色々売り文句があるでありますが、きちんとしたエビデンスを探すのはもちろん、『不活性化が証明された!』という文言自体を疑う事が大切なのであります。

なぜなら作用時間を省けば

『段ボールは新型コロナウイルスを不活性化できる』

『米国の国立感染症研究所の研究グループの確かな試験結果』

・・・って書いても嘘ではないという事になるであります。

そもそもウイルスは細菌と違い、宿主細胞に寄生しない限り増殖できないので、放置してればいずれ不活性化するのであります。

論文はもちろんのこと、作用時間の長さや対象がどんな菌やウイルスなのかも重要なのであります。

(※尚、ウイルスの試験結果はあくまでプレート内での作用なので、実際の環境気圧下との作用時間は食い違う)

https://ameblo.jp/layla-0716/entry-12598564076.html

 

衛生用語を知る

まず初歩の初歩として『ウイルス』と『菌』は違うでありますからね?

自分が説明しても恐らく分かりにくいと思うでありますから、比較的分かりやすいサイトを探してみたであります。

まだウイルスとバイ菌の違いも知らないの?

https://note.com/ss_suzukix/n/n488d242c408e

ここで更におさらいしとくでありますが、まず「除菌」、「殺菌」、「滅菌」、「抗菌」、「消毒」の違いはわかるでありますか?

 

まず一番よく目にするであろう「除菌」。これは「細菌を取り除いて減らす」という効果であります。

細菌を減らす・・・殺すではないでありますから、ウェットティッシュで拭い取っても「除菌」でありますよ。

極端に言えば石鹸もつけず流水で手洗いしても「除菌」であります。

なんだったらそれを踏まえれば、水道水だって「除菌」と言って効果を謳って売れるでありますな。

まずもって何の菌をどれだけ減らせたら除菌だとかの定義はないので、「除菌」という言葉はほとんど無意味なのであります。

よく99.9%除菌!とか謳っているでありますが、これについても同様であります。

薬事法に違反してしまう為、業界団体で取り決めた「家庭用合成洗剤・石けんの表示に関する公正競争規約」において、『完全』…すなわち「100%」という表記ができないようにしているからであります。

http://www.jfftc.org/rule_kiyaku/pdf_kiyaku_keihin/K023.pdf

そして同時に『99.9%除菌』に科学的根拠は一切ないであります。

より正確に言うなら、『99.9%除菌されるまでの作用』に定義がないから、そもそも根拠なんて必要ないのでありますよ。

 

ここで面白い実験データを紹介するであります。

除菌ウエットティッシュの効果をテスト

https://www.pref.saitama.lg.jp/b0304/syouhintest/jyokin02.html

これは埼玉県の県民生活部消費生活支援センターが行った除菌ウエットティッシュの商品比較テストであります。

テスト方法はいたってシンプル。細菌をテーブルに付着させ、拭き取った前後の細菌数を検査するもの。

細菌の種類については触れておらんでありますな。

その結果、どうなったか?

ご覧の通りであります。

除菌を謳ったウェットティッシュはもちろん、水道水を含ませたただのティッシュペーパーでも菌は減ったでありますな。

 

・・・という事は、濡らしたティッシュペーパーでも『除菌グッズ』として販売しても効果を謳えるであります。

同時にアルコールでもノンアルコールでも、一回の拭き取りでは細菌がかなり多く残る事が分かるでありましょう。

もちろんウイルスに対する効果はこれとは別でありますが、異物を除去し汚染されたタンパク質を除去する事で除菌ならぬ除ウイルスに繋がるでありますな。

(もっともウイルスは人間の肉眼では見えないので、確認するには電子顕微鏡が必要)

水道水だって99.9%除菌成分

さて、水道水でも除菌できることは実験と「除菌」というワードの意味で言えば明らかなのは分かってもらえたでありましょう。

では99.9%除菌とは何なのか?

上のテストでいえば、水道水でも拭き取り3回目はほとんど菌が除去されたでありますな。

「まだ菌が残っているかもしれない!」…というツッコミはあるでありましょう。結構。では4回目を拭くであります。

まだ?じゃあ5回。何なら100回拭いてみるでありますかね。

除菌に制限された定義がないんだから、どれだけ拭き取ってもOK!

摩擦で物理的に表面を薄く削り取っても99.9%除菌と言えるであります。

感動!カンナは角材の表面を99.9%除菌!

・・・・・・で、『99.9%除菌』がなんだって?

 

除菌スプレーについても同様。流水のように流しまくれば汚れと一緒で菌も流れ落ちるでありますよ。

まあ次亜塩素酸水(微酸性)も実は流水状態で使用しないと不活性化できないでありますけどね・・・。

(最近アルコールが不足で店頭とかに透明のスプレーボトルで次亜塩素酸水が消毒用に置いてある。やめたげて。

 「もうやめて!とっくにその次亜水のpHはゼロよ!もう効果は尽きたのよ!」

 

 

 

「殺菌」についても同様であります。こちらも文字通り「菌を殺す」という効果でありますな。

しかしどんな菌をどの程度殺すかの定義はないであります。

極端に言えば、10%の細菌を殺して90%の菌が生き残っても「殺菌」なのであります。

ところで水道水は実は菌を殺しているのをご存じでありますか?

水道水にはカルキ(次亜塩素酸カルシウム)が含まれているであります。

塩素は強い殺菌作用があり、これで水道水に含まれる病原体となる細菌や微生物を死滅させているのであります。

・・・・・と、いうことは?

人体にも安心な殺菌水!(水道水)

・・・と、書いてもなんの間違いでもないでありますな。(実際殺菌された水だし)

ただしこれを販売するとなると話が違ってくるであります。

なぜなら「殺菌」という言葉は薬事法の対象となる消毒薬などの医薬品と、薬用せっけんなどの医薬部外品のみしか使えないと決まっているからであります。

だから例えば食器用洗剤の界面活性剤に殺菌効果があったとしても、「殺菌」という表現はNGであります。

 

そして「滅菌」とは・・・あまり聞き慣れないのではないでありますか?

これは対象物に存在しているすべての微生物およびウイルスを死滅させるか除去するという意味であります。

ただし対象物に無害か有害かは問わない。どういう意味か分かるでありますか?

実際には残留菌を完全にゼロとすることは現実的に不可能なのであります。

例えば「手の消毒」はできても「手の滅菌」をするとなると、手そのものを構成する細胞ごと全て殺すという事であります。

そもそも滅菌できる方法と言えば『火炎焼却』『放射線法』『水素ガスプラズマ』『高圧蒸気』とかでありますよ。

https://www.med.or.jp/kansen/guide/steri_sum.pdf

↑なのでより正確に言えば汚物は滅菌だ~!!

人体に使う用語ではないし、普通は滅菌器などの衛生器具か医療器具に使う言葉であります。

定義もちゃんとしていて、100万分の1という無菌性保証レベル(sterility assurance level, SAL)を満たすことをもって『滅菌した』とされるでありますよ。

追記:・・・と思ってたらLAYLAさんから「昨今はバイオロジカルインジケーターが陰性だったらおkにされてる」と教えられたであります。

https://www.cosmobio.co.jp/product/detail/00740004.asp?entry_id=2376

専門用語の羅列になって読んでる人がついてこれないと思うので簡単に説明すれば、リトマス試験紙みたいなもんで判定してるであります。

いいのかそれで・・・ま、まあ、滅菌装置なんか医療関係か衛生技術・管理者しか触らんでありますから・・・。

 

 

「抗菌」は雑菌の繁殖を防ぐという意味であります。しかしこれも対象菌や範囲や程度の定義がない概念。

なので経済産業省の定義では抗菌の対象は細菌のみとしているでありますよ。

https://www.meti.go.jp/policy/mono_info_service/mono/human-design/koukin.html

またJIS規格でその試験法を規定しているでありますが、抗菌仕様製品では、カビ、黒ずみ、ヌメリは効果の対象外とされているであります。

そんなこんなであんまり信頼性がない要素でありますな。ウイルスに対しては特に。

自分の知識の中で抗ウイルス性の維持ができそうなものは、せいぜいTiO2やWO3を用いた光触媒コーティングぐらいであります。

※前回紹介した一価銅メッシュ繊維も第三者機関の調査がないけど、自分の見識では有効性がありそうではある。

 

 

「消毒」は今世界中で一番熱いワードでありましょうな。これも薬事法の用語なので、殺菌や滅菌同様使うには条件があるであります。

消毒は対象物に存在している病原性のある微生物やウイルスを、その対象物を使用しても害のない程度まで減らすという意味。

人間の手や口腔内には常在菌がいっぱいいるでありますが、害をなさないでありましょう?(ミュータンス菌とかは別として)

手を消毒するという場合、手に付着した有害な雑菌が病気を引き起こす原因になる為、それをアルコールなどで殺菌・活殺するということでありますよ。

手段として「殺菌」が行われるでありますが、「殺菌」とは無害化できるか否かという明確な違いがあるであります。

また、殺菌せずに病原性のみを消失させることにより消毒が達成されることもあるので、必ずしも殺菌や滅菌とは同じではないでありますな。

 

これらの用語は定義があるものもあれば無いものも多く、対象が菌だったりウイルスだったりどっちもだったりと結構無茶苦茶で素人目では区別が難しい(というか医療関係者でさえ怪しい)であります。

でも「殺菌」「消毒」の商品は薬事法に則ってるから安心!

・・・だと考えるのは落とし穴

過去には消毒などを謳った虚偽商品を違法に販売していた通販サイトが摘発されたケースもあるであります。

また、韓国製の消毒ジェルがエタノール濃度を偽って販売していたのが先日ニュースになったでありますよ。

 

ある意味で今はコロナ不況コロナバブルが勃発している状況であります。

前者は感染拡大を防ぐ為に自粛している善良な人々を襲う現実。

そして後者はその感染拡大を逆手にとって大儲けを企む悪質業者であります。

売っていてもすぐ飛びついてはならんでありますよ。まずは一旦冷静になり、落ち着いて調べてみるであります。

間違ったグッズで対策した気にならないように、こちらも是非読んで欲しいであります。

新型コロナに効果がないデタラメ商品の数々

https://ameblo.jp/kishimen-arcade/entry-12592843715.html

 

▼新型コロナウイルスについては、下記の記事も参考にして下さいであります▼

 

新型コロナに対して除菌シートは有効か?

https://ameblo.jp/kishimen-arcade/entry-12591097817.html

 

新型コロナウイルスに対しての低濃度アルコールの効果について

https://ameblo.jp/kishimen-arcade/entry-12589870686.html

 

貝殻焼成カルシウムのウイルス不活性化効果

https://ameblo.jp/kishimen-arcade/entry-12595446692.html

 

新型コロナに効果のある商品を調べてみた

https://ameblo.jp/kishimen-arcade/entry-12592067016.html

 

銅イオン水の効果”「ただの水」の方がマシ…?【怪しすぎる除菌スプレー】を分析してみた ”

https://ameblo.jp/kishimen-arcade/entry-12597223726.html?frm=theme