犬もヤンキーも男の娘も、スタイリッシュに | 劇団 貴社の記者は汽車で帰社

脚本・演出の千野です。
今回も多くの皆さまのお力添えで無事に幕を閉じることができました。
心より御礼申しあげます。

 

『南総里見八犬伝』はいつかやりたい! と思いつつも、「イケメンを8人集めるなんて無理では??」「そもそも長すぎる」と断念していたのですが、男子メンバーも増えてきたし(イケメンは集まってないけど)、長い長い『源氏物語』だってどうにか舞台化できたしと、だんだんと現実味が出てきたと思ったら戌年になってしまったので、思い切ってやってみました。

 

作演としては、今回はもう自分の手柄など何もありません。
謙遜でも何でもなく、原作の力を信じただけです。
というか、何かとアレンジされてドラマ化やら映画化やらされがちな作品なので、「原作のままで十分面白いのになぁ」という思いを大事にしました。面白かったとしたら、原作とスタッフさんのおかげです。

 

さて、役者としては、ですが。
複数役やって、ほんとに、楽しかった!
以下雑感です。

 

【犬塚信乃戌孝】
まっすぐ+ちょっと抜けてる+女子からの好意に鈍感、という、「ザ・主人公」でした。なんというか、現代的な主人公ですよね。光ったり匂ったりする平安時代の主人公とは全然違う。たぶん人気投票とかしたら4位ぐらいなんだろうな(どうせ1位は現八なんだ)。
とにかくフツーにいい子!を意識して誠実に演じました。いつもいつもクズみたいな男ばっかり演じてますが、こういうキャラだってできるんですからね!笑
(なお、ありとあらゆる意味でいちばん心配だったのは女装なんですが、もう忘れてください笑)

 

【八房】
まさかの犬でした。わん。
といっても、ダサいことはしたくなくて、スタイリッシュに犬に見せる! が目標でした。照明さんがイイ感じのサスをくれたり、写真スタッフさんが「エロさがヤバい」って言ってくれたりしたので、気をよくして本番では色欲増で臨みました笑
間近で見る伏姫様は本当に神々しくて、短剣出されたときは毎度きゅぅぅうんっ恋の矢 ってなってました。

 

【山林房八】
信乃のそっくりさんですが、キャラは真逆のやくざなお兄さん。実際は小文吾のことが大好きすぎる究極のツンデレでした。こういうガラ悪なキャラってあんまりやったことなかったかも……?(そもそもキシャ作品に出てこないか笑)
とにかく演じていて気持ちいい役でした。信乃との切り替えも「ドヤぁ!」って思ってましたし、小文吾とのケンカも吉田くんがカッコいい振りをつけてくれましたし、いやぁ、こんな気持ちいい役ほんとに初めてだよ!!
ちなみに、最後の「沼藺、ごめんな」は「愛してるぜ」のつもりで言ってました。でも沼藺ほんとかわいそうだよね。ごめんな。

 

【山下定包 ※千秋楽のみ】
私の最も得意とするクソヤローでございます(笑)。
回替わりということで、他の3人と違うキャラにしなきゃなぁと考えた末、カブらず個性を出そうと思うなら、あの方向性しかないだろうと突き進みました。だってほかの3人みんな上手いんだもん、得意なキャラでいかないと立ち向かえないよ……!!
玉梓に「誕生日、おめでと」って渡してたプレゼントはガチのサプライズです(玉梓役のれいこさんは前々日が誕生日だったんです)。この悪戯を思いついたとき、正直、私天才かな?って思いあがりました(笑)。
ただ、それにしても1回きりの役だし、1回きりのくせにサプライズ仕込んでるしで、めちゃくちゃ緊張しました。
そのため開場前には何度も何度も立ち位置やらセリフやらを確認してまして……「それであんなに山下のところ確認してたんですね!」(by鶴田さん)とか「山Pのセリフばっか練習してたんで、え、そこ?! って思ってましたよ」(by松原くん)とか、後に言われました笑……カッコ悪っ。
ちなみにキシャはアドリブ禁止です。後でれいこさんからしっかり制裁を受けました。

 

あとは、殺陣も作ってました。荘助vs道節のところはお気に入りです! ふたりともカッコよかったですよね!!
twitterでも書きましたが、今回はいつもと違って無手のところ(信乃vs現八の後半と、小文吾vs房八)があったので、そこを吉田くんにお願いしたんですが、これがもう最高でした。ひとの作った料理はうまい、みたいな感じですよ。ひとに作ってもらう殺陣はイイ!!
ちなみに吉田くん、私に対してはわりと雑で笑、小文吾vs房八のところを初めて教えてもらうとき、「ここで腕をキメて、こう投げます」って、流れでフツーに投げられました笑。千野なら大丈夫だろっていう信頼だと思うことにしておきます。

 

というわけで、私自身もおおいに楽しんだ公演でした。やったらやったで続きがやりたくなったので、そうお待たせせずに実現できたらいいなぁと思っています。
……次があるなら、いよいよ船虫が出てきますね。今回も一応「いつか続きをやるとして」という想定で作っていたので(だから毛野も大角もちょこっと出しました)、船虫を誰が演じるのかも、実は決まっていたりします。
先に進めば進むほど信乃くんの活躍は減っていくのですが笑、ぜひ待っていただければと思います。

 

でもまずは次回公演『保元物語』でお会いしましょう。
これからも、皆さまにブンガクとの素敵な出会いがありますように。

 

2018.12.15 千野裕子