ありのままの君でいい | 劇団 貴社の記者は汽車で帰社

先日は三連休のさなか、「南総里見八犬伝の話が(ちょっとだけ)したい!」にご来場いただき、誠にありがとうございました! 伏姫および語りの一部をやらせていただきました、にったです。

 

前回の「夜の寝覚」に引き続き、子連れで参加させていただきましたが、今回は前回以上にセリフも出番も多く、娘の「お外行きたい!遊びたい!パワー」は上がっていて、正直、根本的な台詞がギリギリまで覚えられないという危機的状況。恐らく演出を冷や冷やさせたこと請け合い!なのですが、とりあえず、ゲネプロ前には覚えました。(その前は…とか、言わない。)

 

役柄としては、伏姫は演出に「お前はそのまま武家の姫っぽくやれば伏姫になるから」と告げられたのですが、「そのまま?とは?」という状態でスタートし、伏姫自身についても、きっかけはともかく1年間なんやかんやと仲良く八房と過ごしてたけど、妊娠したって言われたら「殺しとけば!」となったり、身の潔白を示すために割腹自殺をしたり、「殺すだの、腹切るだのなんて、そんな怖い! 『死にたい、死にそう』とかいいながら、なんやかんやで生きて出産はして、尼になって悠々自適に隠居生活しておけばいいのでは?」という平安貴族マインドに染まった私としましては、江戸産の武家のお姫様は、なかなか精神性がよく理解できないところがあったりしました。

正味な話、終わった今も「そのままとは一体どういうことだったんだろう……」、「伏姫とはどんな子だったんだろう……」とよく分かっていません!

あ、でも、よく分かってはいないのですが、それは役を完成させられなかったとか、演技が納得いかなかったとかではなく(そもそもそうなら演出家に殺されている・笑)、こう、ゲネプロくらいから、演じてる時フッとなって、終わるとフッと消えていく、「あ、いま伏姫だ」という感覚がきちんとありました。娘が爆睡していてくれた合宿の通しの時もそうだったんで、どうしても気になる何か(子)がないというのが大事だったんだと思います。その条件さえ整えれば、稽古で調整していたものが、フッと伏姫にきちんと変化して出力されたという感覚です。

伏姫として父を思いましたし、八房を憎み、いとおしみ、殺意を抱き、慈しみましたし、武家の娘として誇り高く生きて死んでいって満足しました。そして、一方、伏姫の感情を抱きながら、演者として、ここは顔見せとける位置取りにしとかなきゃな、ここはこう動こうかな、みたいな調整もできたかと思いますので、公演でお届けした伏姫は、紛れもなくあの時点の私の最高出力で完成させた伏姫でした。

ただ、終わると、伏姫だったしその感情の動きも覚えてるんですが、スイッチが切れるのか、演じてた時を思い返せば、言語として伏姫の気持ちは理解できるが、まるで実感が伴わない、という感じでして……よくわからないな~となってしまうのですよね。

セリフを覚えたり、感情の起伏の流れを設計したりはしましたが、役作りという視点で見ると、戦う女の子のOPソングを聞いてテンションを上げ、武家の娘っぽさを生成したぐらいなんで、本当にある意味、演出の言う通り「そのまま」やったということでしょう。さすが、両手を超える付き合いなだけあって、性質をよく理解して使ってくれたぜ、って感じです。ええ。

 

 

語りについては、前半はかっこよく、後半、伏姫を挟んでからは伏姫明神っぽく、という指示を受けていたので、声のトーンを大きく変えて挑んでみたのですが、あまり語りを、しかも、かっこいい語りをやることのない私としましては、「なんかいつもと違って楽しい!」という感じでした。イルカみたいな声でしゃべるだけじゃないんだ、私は。その気になれば、きりっと出来るんだぜ、という気持ちで、挑んでみたんですが、どうでしょうか。

 

あと、双方の役で、ある意味一番難関だったのが、「笑ってはいけない八犬伝」部分でしたね。伏姫の時は、丶大も日記で書いていましたが、八房のオーバキルっぷりに肩が揺れ出さないか、毎回心配でした! どう考えても撃ち過ぎ。あと、稽古の時とか丶大が面白いこと言って撃ってたから、思い出し笑いも厳しかった! 本当に笑わなくてよかった!

語りは、どう考えても百姓ですよ。これも菅が書いていましたが、回替わりでM原氏のやった例の百姓がですね、去り際に面白い動きをするから笑わないよう気を付けないとと思い過ぎていたせいで、開口一番の訛りの衝撃をうっかり忘れていて、笑いをこらえて次の自分のセリフの入りが一拍遅れましたからね! やられた!

 

 

そんな思い出たくさん、笑いたっぷりの八犬伝ライフでした。

こうした、最後まで楽しく充実した公演となったのも、日々の稽古場で、娘のハッスルぶりを甘受し、時に遊び相手となってくれた劇団員、客演のみなさまの日々の支え(娘はすっかり味を占め、遊んでもらえる相手と認識しているようで、思い出したように「○○(任意の団員名)さんは?」と聞いてきます。)、そして、素晴らしいお仕事ぶりの数々で公演を完成形に導いてくださった小道具さん、照明さん、音響さん、制作さん、舞台監督さんというスタッフさん方のお力、なにより、当日ご来場いただき、近くで見守って下さったお客様方の存在あってこそだと感じております。

 

本当に、ご来場ありがとうございました! また近い日に、続きを話せる日を願って。

「どうか、待っていて」