男のエゴも貫けば | 劇団 貴社の記者は汽車で帰社

脚本・演出の千野です。

今回の公演も多くの皆様のおかげで無事に終えることができました。

心より御礼申しあげます。

 

さて、作演としては、「天女」と欠巻部の処理が好評だったようで、たいへんありがたいなぁと思っております。

天女を語りにするというのは、『夜の寝覚』をやろうと決めてから、わりとすぐに浮かんでいて、

「天女を語り手にしたら、中間欠巻部は解決!!」

ぐらいの気分でいたのですが、さらに、前回公演(『後三年記』)の小屋入りの日に、唐突にラストが浮かんだんですよねぇ。

そのときメモしたのは、こんなでした。

 

この先は、いらないわ。

さようなら。今度は別のあなたを語るから。

 

結果として、今回お目にかけた天女はちょっと違う雰囲気になりましたが、ここを目指して台本を書いてきたのでした。

天女がちょっとした脇役・端役をやるというのも、「便利に使おう!」ぐらいの気分だったのですが、結果的に、偽生霊(筒井の本領は偽生霊に発揮されました/笑)を除くとたぶん全部〈女房〉になりまして。

女房たちのノイズ的なやつが語り手の天女に集約されて、「物語文学の語りとは」みたいな妙に意味ありげなシロモノになってしまいましたねえ(笑)。

まぁ、だから何だって話なんですが、ちょっとお楽しみいただける劇構造にできたかなぁ。どうだろう。

 

……作演が作品について語りすぎるのもどうかと思うのでこれぐらいにして。

役者・千野は、どうでしたでしょうか。

私、出てたんですけど、気づいてます?……っていうぐらい、今回は役者としてより作演としての感想をいただいていまして、ちょっと不安になっています。出てましたよ-。誰か役者の仕事も(お世辞でいいから)ほめてー。

 

どんな役も二度と同じ役はないわけですが、それにしても今回はなかなかやったことのないタイプで、すごく楽しかったです。

いつものような(?)ふわっとチャラっとではなく、強めカタめを心がけてみたんですが。

そもそも私、『夜の寝覚』の内大臣(大納言)、大好きなんですよ。

この人、だいぶヤバい奴ですよね。男の身勝手をどんだけ煮詰めたらそうなるんだ。そもそも王朝物語の男主人公がこんなに真顔でウソつきまくっていいのか。……そこがいいじゃないか!!です。

男のエゴも貫けばカッコいいじゃないですか。あれ、そう思うの私だけ?(笑)

というわけで、今回は「人柄に難アリ」をきっちり見せたうえで「ギリギリ、カッコいい」を狙う予定でした。

でも稽古してるうちに、やっぱり性格のヤバさばかり表出されてきたので、カッコいい狙いは無理かなぁと思ってましたが。

天女役の久実子に、

「せめてカッコよくないと中の君が本当に報われないんで、そこはお願いします」

と言われてたんですが(笑)、どうでしたかねー。

 

それにしても。小百合の初主演を相手役として支えることができて嬉しかったです。

それもよくよく考えてみたら、今回の役、「中の君を愛し続ける」以外のことをしてないんですよね(いや、アレが愛なのか?とか言わないでくださいね。少なくとも彼は愛してるつもりなんですよ笑)。

これが新鮮でした。

だって今まで小百合の相手役だったときって……狩の使のついでについつい、兄に追われて吉野山に放置、やらかして須磨に撤退、皇女降嫁ごめんほんとごめん(皇女降嫁は今回もか笑)、なにはともあれ戦に出なきゃ、本妻に呪われてる……などなど、なんというか、「それどころじゃない」ことばかりだったなぁと(笑)。

たまにはこういう役もいいですね。愛し抜きましたよ。勝手に愛し抜いた気になってます。

……劇団内では、「何度めぐりあっても小百合を幸せにできない」ともっぱらの評判ですが(笑)。

 

だんだん何を言ってるかわけ分かんなくなってきましたので、このへんにしますか。

明日は主演女優・小百合が更新する番ですね。

スケジュールは制作が決めてくれたんですが、明日に小百合をあてるなんて、たまには粋なことをするじゃないか。

彼女が何を書くか、私も楽しみにしています。

 

また次回公演、

『南総里見八犬伝の話が(ちょっとだけ)したい!』

でお会いしましょう。

 

これからも、皆さまにブンガクとの素敵な出会いがありますように。

 

2018.6.12 千野裕子